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セルフパロディクライマックス:『命懸けのトルナド・プランチャ~太陽のカンパ~』

こんにちは!セルフパロディエンドです。本編のシリアスな冬山冒険から一転、カンパたちがルチャリブレ風のド派手なバトルに挑みます。笑いと熱さを詰め込んだ短編、気軽に楽しんでください!アミーゴ!

一騎打ちと極限の危機


カンパ達は寮から校舎、体育館へと転戦した。

戦いの余波で体育館は廃墟と化し、埃と木片が舞う中、カンパは巨大猪(35歳)と対峙する。仲間は全員倒れ、マタギは壁に倒れ込み、アキラはゴール下で動かず、邦衛さんは壊れた観覧席の椅子に力なく倒れ込んでいる。


大猪の息は荒く、角には血が滴り赤い目がカンパをロックオン。カンパは肩を押さえ、足を引きずりながら立ち上がるが、大猪の突進が一瞬早く、彼を体育館の壁に叩きつける。壁が崩れ、コンクリートの破片が降り注ぐ。カンパは這って逃げるが、大猪の角が床を抉り、彼の足元数センチを掠める。息が切れ、視界が霞む。


「終わりか…?」声がかすれる。


大猪の咆哮が体育館を震わせ、床が軋む。カンパは跳び箱の残骸にしがみつき、立ち上がろうとするが、大猪の次の突進で跳び箱ごと吹っ飛ばされ、床に転がる。肋骨が軋み、血が口から滴る。大猪が鼻息を鳴らし、ゆっくりとカンパに近づく。



時間がない。体育館の天井から落ちる埃が、彼の終わりを告げるカウントダウンだ。



転機:マタギへの危機と覚悟


大猪が突然向きを変え、倒れたマタギに目を向ける。彼女は壁に凭れ、血を流しながらもナイフを握り、立ち上がろうとするが膝が崩れる。大猪が唾を飛ばし、地を蹴ってマタギへ突進を開始。床板が割れ、距離が一瞬で詰まる。


カンパの耳に、彼女の微かな呻きが届く。



「…生きろ…」。



その声が引き金となり、彼の脳裏に寮での記憶が電撃のように走る――



マタギが火を起こし、無言でカンパに毛布を渡した夜。



「山は裏切らない」と言いながら大猪の足跡を教えた昼。



「お前なら生きられる」と呟いた一瞬の眼差し。



「彼女が死ぬ…いや、死なせない!」カンパは血まみれの手で床を叩き、歯を食いしばって立ち上がる。肋骨の痛みが全身を貫くが、無視する。彼はスペイン語で叫ぶ。


「¡Oye, cerdo maldito! ¡Aquí estoy yo, enfréntame!(おい、呪われた豚!俺がここにいる、かかってこい!)」


声が割れ、大猪が振り返る。マタギへの突進が止まり、赤い目が再びカンパを捉える。


カンパはいつも手離さず身に付けて持っていた祖父の形見のルチャドーラマスクを取り出し…そして被った。


目を閉じている彼の眼に幼き日…祖父と別れたメキシコの寒村の景色が映し出される…。




太陽の友達


貧しいながらも祖父の故郷で幸せに暮らしていた幼いカンパ。ある日学校の授業中校長先生が慌ててカンパのいる教室に駆け込み、


「¡Kampa! Amigo del Sol… ¡tu abuelito…!(カンパくん!アミーゴ・デル・ソルが…君のお祖父ちゃんが…!!)」


校長先生が言った言葉にカンパは青ざめた、祖父とは今朝まで穏やかに挨拶をし夕飯の献立を楽しく話し合ってから学校に来た、日常だったはずなのだ。


病院に着いたカンパを医者が慌てて抱え、祖父のいる病室へ駆ける。そこには命の灯火が消えかけている衰弱した祖父がいた。今思えば時間がなかったのだろう、祖父は医者の制止を振り切り慌てた様子でカンパにルチャドーラマスクを差し出す。


「¡Kampa… quería estar más tiempo contigo, pero… parece que ya tengo que irme, si me pongo esta máscara podré ser fuerte…!(カンパ…もっと一緒に居たかったが…私はもう行かなければならないようだ、このマスクを被れば強くなれる…!)


¡Kampa… mi alma estará con esta máscara…!(カンパ…私の魂はこのマスクと共にあるからな…!)


Oh, Dios, a mi dulce ángel… por favor… por favor…(ああ神よ、私のかわいい天使を…どうか…どうか…)」


カンパにマスクを渡し、目を見開き空を仰ぎ見る祖父、幼いながらも祖父の最期を感じ取ったカンパは涙を流し祖父にしがみつく。


「¡Abuelito…!? ¡¡Abuelitooo!!(おじいちゃん…!?おじいちゃーーん!)」


叫び続けるカンパ。

そして祖父は穏やかに目を閉じながら



「Adiós,… amigo…(さようなら…友達。)」


そう呟き旅立って行った。




そして今、カンパは眼を開く。


あの穏やかな日々はもうない、優しかった祖父も、もう居ない。



そこに立っているのはただ一人のマスクド・ルチャドーラ「アミーゴ・デル・ソル」だ。




ルチャドーラの死闘:緊迫の攻防


大猪が咆哮し、全速力でアミーゴ・デル・ソルに突進。床が爆ぜ、衝撃波でガラス片が飛び散る。アミーゴ・デル・ソルは残ったマットを掴み、闘牛士のように振るが、大猪の角がマットを貫き、布が裂ける。


彼は間一髪で横に飛び、バスケットゴールのリングに指をかけるが、リングが大猪の突進で歪み、彼は床に叩き落とされる。起き上がる暇もなく、大猪の頭突きが再び迫る。


再び始まった大猪の攻撃に反撃の隙がないアミーゴ・デル・ソル、マタギは焦りを滲ませ一歩踏み出す。


「ダメだマタギちゃん、ここはアミーゴに任せるんだ。」


いつの間にか観覧席から降りてきていた邦衛さんに止められる、彼は気絶しているアキラを背負いながらマタギに避難を促す。

後ろ髪を引かれる想いで不安げに友達を見つめるマタギ。


「頑張れ…!アミーゴ…!」



大猪の猛攻の中アミーゴ・デル・ソルは転がりながら跳び箱の破片を手にし、大猪の顔に投げつける。破片が猪の目に当たり、一瞬怯むが、すぐに怒り狂って再突進。


アミーゴ・デル・ソルは壁に追い詰められ、逃げ場がない。


―ドォーンッ!!


凄まじい轟音に気絶していたアキラが目を覚まし、邦衛さんの背中越しに一人のルチャドーラが崩落に巻かれる姿を捉える。


「あ…アミーゴ…!?」


「おお…!起きたか、アキラちゃん!」


余程心配だったのだろう、邦衛さんは心底安心した顔だ。


マタギも安心しつつ、アミーゴ・デル・ソルの戦いから目を離さずにいる。



砂煙が晴れアミーゴ・デル・ソルと大猪の姿が見えた。


大猪の角が壁を抉り、彼の肩をかすめている。

血が飛び散り、痛みで意識が飛びそうになっているが、アミーゴ・デル・ソルは「まだだ!」と叫び、壁を蹴って大猪の背に跳び乗る。


両腕で首を締め上げるが、大猪が暴れ、体育館の柱に激突。


柱が折れ、天井の一部が崩落し、アミーゴ・デル・ソル…いや、マスクが半分破れ、正体が露出したカンパは床に叩きつけられる。大猪が吼え、足を振り上げる――


その瞬間が永遠に感じられる。



「「「アミーゴォーーッ!!!」」」



太陽の友達の絶体絶命の危機に、仲間達の叫びが響く。




フィナーレ:トルナド・プランチャと勝利の叫び~太陽のカンパ~


大猪に踏みつけられそうになるカンパ、だが彼の眼の闘志は消えない。両の掌で大猪の蹄を受け止める。


一瞬の膠着、目方1tの大猪の重さにカンパの身体が床を割りながら沈んでいく。


「カンパァー!」

「ダメだ!マタギちゃん!」


助けに入ろうとするマタギを邦衛さんが制止する、次の瞬間。


――バキィッ!



次の瞬間大猪の蹄が音を立てて割れる。


自重に耐えていたはずの蹄をカンパの握力が握り潰したのだ。



慌ててカンパから距離を取る大猪、ゆらりと立ち上がるカンパ、その姿は不屈そのものだ。

仲間達はあのルチャドーラの底力を確信する!


「「「カンパ!!…」」」


「いや!もうアイツは…!」


ハッとしながら邦衛さんが叫んだ。

マタギとアキラもそれに気付く


そう、言うなれば彼は



「「「カンパ・デル・ソル…!!!」」」(太陽のカンパ…!)


三人が新たなマスクド・ルチャドーラの名を叫んだ。



割れた蹄を鳴らし大猪が最後の突進を仕掛ける。

床が陥没し埃が視界を覆う中、カンパ・デル・ソルは確信する。


『お互い、次が最後だ…!』


『トルナド・プランチャで決める!!』



カンパ・デル・ソルは全てを賭け、祖父の秘技を繰り出す決意をする。


跳躍。

崩れた跳び箱の残骸を蹴り、限界を超えた跳躍。空中で血を滴らせながら大猪の首にしがみつく。


回転。

大猪の勢いを逆手に取り、体を二回転。肋骨が砕ける音が聞こえるが、彼は歯を食いしばり続ける。


投げ。

全身の力を振り絞って大猪の巨体を宙に浮かせる。

その時世界が止まり、カンパは大好きな祖父に会えた気がした。


『¡Abuelito...! ¡Mírame!!(お祖父ちゃん…!見ててくれ!!)』



戦いを見上げるマタギの瞳にカンパ・デル・ソルの姿が映る。



「Adióooooos…!!(さようならだ…!)


そして、大猪を渾身の一撃で床に叩きつける。


¡A!migo!!!(強敵よ!!)」


ドドォーンッ!!!




衝撃で体育館の床が陥没し、大猪の体が半分埋まる。天井が崩れ落ち、ガラスが粉々に砕ける。大猪は動かなくなる。


静寂が訪れ、カンパ・デル・ソルは倒れたまま息を荒げる。血と汗にまみれ、意識が薄れかけるが、確固足る意思で立ち上がる。


そして、大きな瓦礫に足をのせ、拳を突き上げ、祖父と同じように叫ぶ。



「¡Vamooooos!!(行こうぜ!)」



声はかすれ、体育館に虚しく響くが、マタギが「…カンパ・デル・ソル…!」と眼を輝かせ呟き、アキラがカンパ・デル・ソルと共に約束の言葉を叫び笑う。


邦衛が微笑み、「観ているか?アミーゴ」と呟いた。勿論、彼のアミーゴは天国にいる友の事だ。



命の重み


大猪は目を覚ますが、力なく立ち上がり、割れた蹄を引きずりながら山へ逃げる。


マスクを外したカンパは仲間を見回し、「生きてて…良かった」と呟く。


「勝ったんだな…。」マタギがカンパに歩み寄り声をかける。



「ああ…!」


「…カンパっち!!」


ボロボロのカンパに飛び付くアキラ、カンパはややよろけるもしっかりアキラを受け止め、空を仰ぎ見る。


そして、燦然と耀く体育館の照明に拳を向けた。



――いつの間にか観覧席に座っていた邦衛さんは、新たなアミーゴの勇姿を見届ける。


「…お前の技、しっかり受け継がれてるよ…。」


そう言って、満足した顔で崩れた体育館を後にしていった。



ここに、新たな山の主が誕生した。




太陽の友達、その名は…。

読んでくれてありがとう!

『命懸けのトルナド・プランチャ』は、本編キャラたちの絆を荒唐無稽に盛り上げてみました。カンパの覚醒や仲間との掛け合いは楽しかったですか?本編と一緒に楽しんでいただければ幸いです。またお会いしましょう!


バモーース!

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