第7章:再び訪れる脅威
こんにちは、7話目です! いつも読んでくれてありがとうございます。今回は大晦日の夜、猪が再び襲ってきて…もうハラハラが止まりません! 4人で迎え撃つけど、予想外の展開にちょっと心臓バクバクしてます。マタギの冷静さやアキラの頑張り、そして邦衛さんの覚悟…みんなの絆が試される回です。少し重い場面もあるけど、最後まで読んでもらえたら嬉しいな。感想や応援、ぜひ待ってます!
12月31日 夜8時:大猪の再襲来
寮の食堂は夜の静寂に包まれていた。暖炉の火が弱々しく揺れ、ブルーシートと板で簡単に補修された窓の外では雪が降り積もる。
昼間の穏やかな時間が嘘のような緊張感が漂っていた。
カンパはテーブルに座り、マタギが昼間に仕掛けた罠のロープを手に持って確認していた。
「今夜は長い夜になりそうだな」
キッチンで鍋を磨きながら邦衛さんが呟く。
柄本アキラはソファに寝転がり、のんびりした声で「ねぇ~、もう猪来ないよねぇ?」と言いながら邦衛さんが出してくれた防寒着を着込んでいく。
「来るよ。また来るって言っただろ」
マタギが暖炉の前でナイフを研ぎながら淡々と返す。彼女の目は鋭く、昼間の足跡追跡で見えた巨大な猪の影が脳裏に焼き付いている。アキラは「えー、マジでぇ?」とだらっとした口調で反応し、ソファから身を起こした。
「なぁ、アキラ。お前、少しは緊張しろよ…」
カンパが呆れ顔でボヤくと、アキラが笑いながら言う。
「だってさぁ、マタギちゃんいるし平気じゃん?」
マタギは一瞬手を止め、アキラをチラッと見てから小さく呟いた。
「…山で人に頼るな。まぁ…守ってやる。」
その言葉にアキラが目を丸くし、「マジ!?マタギちゃん優しい!」と嬉しそうにソファから飛び起きる。
「ああ。」
マタギは返すが、口元が笑っていない。彼女なりにアキラを励ましたんだろう。
その時、ドスン!という重い音が寮を震わせ、全員が一斉に動きを止めた。暖炉の火が揺れ、窓の外から低いうなり声が響いてくる。カンパが立ち上がり、「本当に来たのか!?」と叫ぶと、マタギがナイフを握り直して窓際に走った。
「来たな。でかいやつだ」
窓の外には、朝よりもさらに威圧感を増した巨大な猪が立っていた。軽トラックほどの巨体が雪を踏み潰し、牙が月光に光る。猪は目を血走らせ、朝の即席猪よけの屈辱を晴らすかのように寮の壁に体当たりを仕掛けた。ドン!と衝撃が響き、壁にヒビが入る。
「やばい!崩れるぞ!」カンパが叫び、アキラが「うそ、マジでぇ!?」と慌ててソファから転がり落ちる。邦衛さんがキッチンから飛び出し、「マタギちゃん、どうする!?」と声を張った。
「食堂に籠もる。罠で足止めして、追い払う」
マタギが冷静に指示を出し、暖炉のそばに置いたロープと赤い液体の入ったビニール袋を手に取った。
マタギが手に持つのは、ビニール袋に詰めたサラダ油と唐辛子パウダーの混合物だ。油は粘つくほど濃く、唐辛子の刺激臭が鼻を刺す。
前回の装備は酢と腐った魚の缶詰、それに唐辛子パウダーを水に溶かしたものだった。
水溶液だから飛び散りやすく、風向き次第で効果を発揮したが、すぐに乾いてしまう欠点があった。今回は違う。油ベースなら、奴の毛皮に絡みつき、鼻や目に染み込んで長く焼き続けるだろう。
「アキラ、立て。お前も手伝え」
「えー、アタシ!?」アキラが目を丸くするが、マタギが近づいて彼女の頭を軽く叩き、「お前ならできる。やるぞ」と優しくも力強い声で言う。アキラは「う、うん…マタギちゃんが言うなら!」と立ち上がった。
猪が再び突進し、窓枠が完全に吹き飛び、冷たい風と雪が食堂に流れ込む。マタギはロープを猪の足元に投げ、絡ませるように仕掛けた罠を作動させた。猪の前足が引っかかり、一瞬動きが止まる。
「今だ!唐辛子油当てろ!」
カンパとアキラがペッパーオイルの袋を手に猪に突進し、顔めがけてぶち当てる。赤い油が舞い、猪が鼻をブルブル震わせて咆哮を上げる。アキラが「っ、目が痛いー!」と叫びながらも頑張って撒く。
だが、猪は怒りに我を忘れ、ロープを振りほどいて食堂に突入してきた。テーブルが吹き飛び、カンパが「うわっ!」と床に倒れる。大猪がキャビネットに突っ込んだ隙にマタギはナイフを構え、猪の横に飛び込んで足を狙った。
だが大猪は牙に引っ掛かったキャビネットごと頭を振り回しマタギは弾かれ壁に叩きつけられてしまう。
「マタギ!」カンパが叫び、邦衛さんが「俺が気を引く!」と叫んで鍋を手に猪に突進、意外にも軽やかな動きで猪の鼻先に鍋を叩きつけ、一瞬の隙を作った。
「マタギちゃん、大丈夫!?」アキラが駆け寄り、マタギを支える。マタギは息を整え、「…平気だ。離れてろ。」と言うが、アキラが「やだよぉ、マタギちゃん置いてけない!」と目を潤ませる。マタギは一瞬驚き、「…大袈裟だな、お前。」とアキラの手を握り返す。
猪が再び突進し食堂は混乱に包まれた。マタギが立ち上がり「…賢い。予想よりずっと手強い」焦りを浮かばせていた。
12月31日 夜8時27分:大猪の再襲来(続き)
大猪の牙を照らしていた月はいつの間にか隠れ、外は吹雪になっていた。
寮の食堂は、暖炉の火が揺れる中、大猪の再襲来によって一瞬にして戦場と化した。マタギの仕掛けたロープの罠が大猪の足を絡め、カンパとアキラがペッパーオイルを当てて応戦するも、巨大な猪は怒りに我を忘れたように暴れ続ける。壁にヒビが入り、窓枠が吹き飛び、食堂全体が軋む音が響き渡る。
「やばい、崩れる!」
カンパが叫び、床に倒れたままペッパーオイルの袋を落とす。アキラは「マジでぇ!?」とソファの陰に隠れながらも、震える手で唐辛子を投げ続ける。邦衛さんが鍋を手に猪の鼻先に叩きつけた隙に、マタギが冷静に状況を見極める。
「このままじゃ持たない。外に出て、校舎に避難する!」
マタギが鋭く言い放ち、ロープを手に持って立ち上がる。彼女の目は猟師の冷静さと決意に満ちている。
「外!?吹雪いてるのに!?」外を見たカンパが驚くが、マタギは「寮が崩れたら終わりだ。校舎なら頑丈」と即答。彼女はキッチンから残りの酢と塩を掴み、「時間を稼げ」とカンパと邦衛に指示を出す。
カンパが「やってみる…!」と叫び、ロープを手に猪の足元に飛び込む。絡まったロープをさらに引っ張り、大猪の動きを一時的に封じた。
邦衛さんは。「暴れん坊だなあ…!」と息を切らす。キッチンからゴミ袋を引っ張り出し、残飯を床に撒き散らして猪の気を引く。
マタギはその隙に玄関へ向かい、ドアを開けて外の吹雪を確認する。
「道は見える。急げ!」
アキラがソファから這い出そうとして足をもたつかせる。「待って~、私、腰が…!」と慌てる彼女に、マタギが一瞬焦りを見せるが、すぐに邦衛が駆け寄る。
「アキラちゃん、オレが抱える!」邦衛さんが力強くアキラを腕に抱え、彼女の「え、おじいちゃん!?」という声を無視してマタギに目配せ。「先行ってマタギちゃん!オレがアキラちゃん連れてくから!」
マタギが頷き吹雪の中へ一歩踏み出す。カンパは最後のペッパーオイルを猪の顔に叩きつけ、「もういいか…?」と邦衛とアキラを追う。
大猪が咆哮を上げ、ロープを振りほどいて突進するが、唐辛子の油を撒かれた食堂の床でうまく立ち上がれずにいる。
カンパが食堂のドアを閉め、近くの椅子を引っかけマタギに教わったロープの結び方でガチガチに固め即席のバリケードを作る。
「おお…!出来た!」
練習が実を結んで小さく喜び3人の後を追った。
吹雪の中、マタギが先行し、カンパが遅れて外やってきた。邦衛さんはアキラを抱えたまま、重い足取りで雪をかき分ける。
冷たい風が頬を切り、視界は雪で白く染まるが、マタギが「こっちだ!」と声を張り上げ、4人はなんとか寮の外で合流する。
「カンパ、無事か?」マタギが振り返り、カンパが「なんとか…!」と頷く。
「猪を閉じ込めたのか。お前、やるな。」と珍しく褒める。カンパは照れ隠しに「まぁな…!」と笑い、息が白く凍る中で安堵が広がる。
アキラは邦衛さんの腕の中で「マジで怖かったよぉ…おじいちゃんありがと~!」と震えながらも笑う。邦衛さんが「おお、落ち着けよ」と優しく返すが、その目には緊迫感が宿る。
「校舎まで急がないと。まだ終わってないからな」
4人は吹雪の中、はぐれないよう互いの手を掴みながら校舎を目指す。アキラは邦衛さんに抱えられたまま、「寒い~、でもみんな一緒なら…!」気丈に振る舞おうとする。
マタギが先頭で道を確認し、「校舎が見えた。あと少しだ」と呟く。
だが、カンパがふと後ろを振り返る。
「流石にもう猪が追いかけてこないのって…おかしくないか?」
「確かに…。」
マタギが立ち止まり眉を寄せる。その瞬間、校舎の影から巨大なシルエットが現れる。大猪だ。寮を抜け出し、知能の高さを発揮して待ち伏せていたのだ。
「待ち伏せ!?」カンパが叫び、マタギが「くそっ、賢い…!」とナイフを構える。大猪が雪を蹴り上げ、低い唸り声を上げて突進してくる。
「マタギちゃん、カンパ!校舎に先に入って!」
邦衛さんが叫び、アキラを抱えたままの邦衛さんの進路に大猪が立ちはだかる。分断されてしまった邦衛さんにマタギが叫ぶ。
「邦衛さん!!」
「大丈夫だから!早く校舎開けて!」
一喝。それでも戸惑うマタギの手を引き、カンパが校舎の入り口へ走る。
邦衛さんはアキラを腕に抱え、猪の突進を巧みに避ける。「おじいちゃん!」とアキラが叫ぶが、彼は「大丈夫だ、アキラちゃん!」と笑う。
邦衛さんは着実に校舎に近づいていたが、もうすぐという距離で大猪が猛烈な勢いで突っ込んでくる。
邦衛さんは最後の瞬間、アキラをカンパに向かって投げ叫んだ。
「頼むぞ!!」
「キャア!」
「うわっ!!」
宙を舞ったアキラをカンパが受け止める。
同時に、邦衛さんは大猪の突撃をかわしきれず、親指を立てて笑った瞬間、巨体に弾かれ吹雪の中へ飛ばされていく。「邦衛さん!」とカンパが叫ぶが、彼の姿は白い闇に消えた。
カンパがアキラを抱え、マタギがドアを開けて校舎に飛び込む。3人は息を切らし、吹雪の音が遠く響く中で立ち尽くす。マタギがドアを閉め、目を見開いている。
「…そんな…」
「おじいちゃん…」
アキラがカンパの腕の中で震え、涙をこぼす。そんな彼女を見てカンパが言葉を詰まらせる。
「アキラ、無事だろ…邦衛さんは。」
「まだ終わってない。移動するぞ。」
マタギが冷静に指示を出す。3人は理科室を目指し、校舎の階段を上り始めた。
7話まで読んでくれてありがとう! 大猪の再襲来、どうでしたか? 書いててマタギの指示やカンパのロープさばきにドキドキしてたけど…
基本的には猪に襲われたら高いところへ逃げましょう。1.5mより上、2mだとより安全だそうです。…劇中は猪が大きすぎて寮が崩れそうだったんだ…。
邦衛さんのシーンは正直、泣きそうになりました。みんなで校舎に逃げ込むまで、本当に手に汗握る展開でしたね。アキラの涙とか、マタギの冷静さとか、4人の絆が深まった瞬間でもあって…。次はもっと過酷になるかもだけど、初日の出まで頑張ってほしいよね。感想や「邦衛さん…!」みたいな叫び、ぜひコメントください。次も頑張ります!
8章は4/5夜8時公開です!
エイプリルフールって元々は嘘つかない日だったらしいです…よろしくお願いいたします!