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エルダーストリア‐純白彩加の魔勇譚‐  作者: 秋山静夜
第三譚:憎悪爆散の魔人譚
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第93話 これから

 イリアたちはお互いの身に起こった出来事を報告しあった。


 ……エミルに関しては問題を()()()()と言った方が正しいかもしれないが。


「へ~、魔人なんていたんだー。いいなー、いいなー。戦いたかったなー」

 エミルはイリアたちがホーグロンで経験した話を聞いて、目をこれでもかとキラキラと輝かせている。


「結局は戦うのかよ。さっきのおっさんだって魔人だったっての」


 アゼルはイリアの抱き締めからどうにか逃れ、できるだけ離れた場所に避難している。

 ユリウスやカタリナの手前立場がないと、強く頼み込んだ結果だ。

 イリアは渋々とアゼルの希望を飲んでいた。



「え~、だってあのおじさんは戦える感じじゃなかったしなぁ」



「ハルジアで散々暴れておいてまだ足りないのかしら。どうせ向こうでも手配書が出たでしょうし、これからまたこのお尋ね者と一緒に旅するかと思うと頭が痛いわ」

 やれやれと言った様子でアミスアテナが口を挟む。



「まあまあ、結局その辺はみんな似たようなものだし言い合いっこはなしだよ」

 いつものことながらイリアが仲裁をすると、


「もうイリアったらいい子だなぁ。さすが、魔人に告白される勇者は違うねぇ」

 エミルは二ヒヒっとした笑顔でイリアを小突く。



「ちょっとからかわないで下さいよエミルさん。きっとあれは何かの勘違いですから」



(いやぁ、あれはどストレートな告白だったけどなぁ。でもやぶ蛇っぽいし突っ込まないでおこう)

 心の中で賢明な判断をする名君アゼル。


「それで、これからどうすんの? シロナを探しにいくならおっちゃんの言うとおりに刀神の里とやらを探す?」



「そうですね。今のところ手がかりはないわけですし、シロナを見つけるならそうするしかないですね」



「まあ別にシロナから探すって順番に拘る必要もないけどね。もしかしたら〇〇〇を先に探した方が早いかもしれないし」

 あっけらかんとした様子でエミルは言う。



「え? エミルさん、今なんて言いました?」

 何か大事な単語を聞き逃したのか、珍しくイリアが聞き返した。


「ん? だから先に〇〇〇を探そっかって」


「え? すみませんもう一度、」

 イリアには先ほどからエミルの言葉の一部がノイズにでもかかったかのように聞こえない。



「──────────ふーん、そういうこと。()()()も随分と面倒くさいこと仕込んでるみたいだね」

 エミルは一人、何かを納得したかのように、イリアへの説明を諦めた。



「なあ、さっきからシロナシロナって言ってるけど、その剣士は一体どんなやつなんだ?」

 先ほどからアゼルの知らない名前が飛び交っており、さすがに説明を求めた。


「え、シロナのこと? うーんと説明しづらいなぁ。まあなんていうか真面目なやつだよ。真面目過ぎるくらい。」



「なるほど、お前とは正反対ってことか。」



「その言い方はひどいですよアゼル。私はエミルさんとシロナは似てるところあると思います。そうですね、シロナは触れるモノ全て切り裂く、抜き身の刀のような鋭さを持ってました。ほら、関わったモノ全部壊していくエミルさんとそっくりじゃないですか」

 イリアは一切の悪意のない笑顔で言い放つ。


「イリア、それフォローになってないわよ」

 アミスアテナがすかさず突っ込む。


「アハハハ。まったく、イリアにはそう見えてんだ。なかなかに面白いね。……だけど、アタシは何を壊すかは一応自分で選んでるけど、シロナは斬るモノを選べない危うさがあった」

 エミルは別に気を悪くした様子はなく、しかしそのシロナという剣士を思ってか、少し物憂げな表情をした。


「あら、私はあの子のそんなところが好きだったけどね」



「ふん、珍しいな。お前が分かりやすく好きだなんて言うとは」



「まあ、あの子は少し特別だからね。共感できるものもあるのよ」



「んー、結局お前たちの話からじゃどんなやつなのかは見えて来ないな」

 アゼルは両手を頭の後ろに組んで、どんな人物かイメージするのを諦めた様子である。


「実際に会ってみたら分かりますよ」



「ま、出会って早々シロナに切り捨てられなければいいけどね」

 エミルが意味深な言葉を残す。


「??」


 それにアゼルが問い返す前に、気絶していたユリウスとカタリナがムズムズと動き出した。



「そろそろ二人も起きそうですし。次の街に行く準備をしましょうか」


 イリアは立ち上がり、パーティーのメンバーを見渡す。



 見た目は少女の最強魔法使い。


 幼い少年にランクアップした魔王。


 手を繋いでお互いを支え合う魔族の少年少女。


 そしてほんの少しだけ成長した少女勇者とお喋りな聖剣。



 傍から見たらなんと頼もしくないパーティーだろう。


 おそらくは子供がゴッコ遊びをしているようにしか見えないかもしれない。



 それでも、勇者としてひたすらに敵を殺し続けた日々より、今は清々しい風がイリアの心を吹き抜けていく。



 そんな愛すべき仲間とともに、勇者イリアはまだ見ぬ明日へと一歩足を踏み出した。

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