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エルダーストリア‐純白彩加の魔勇譚‐  作者: 秋山静夜
第三譚:憎悪爆散の魔人譚
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第71話 報告

 鍛治士クロムの店にて。


「おい、おっさん。例の魔人の小僧は取り逃がしてしまった。何だったんだアイツは? 強く……はなかったが、妙な武器を持ってて随分とやりづらかったぞ」

 開口一番、アゼルは依頼の失敗をクロムに報告する。



「ん? 誰だお前は」


「俺だよ俺」


「俺で分かるか馬鹿者が、ってその気配はあの妖精か。それにその魔素の質は、……はは、こりゃ参った。まさかあの妖精の中に入ってたのが魔王だったとな。だったらあのガキはかなり騒いでたんじゃないのか? 初めてこの街に出没した時から『魔王はどこだ。魔王を出せ。』と騒いでたからな」

 


「クロムさん、どうしてあの魔人はアゼルを探してたんですか?」


「ん? さて、(おれ)もそこまでは知らんな。まあ魔王ともなりゃ、どこかで怨みでも買ってたんじゃないのか?」



「あんな小僧に恨まれる覚えはねえよ。……それでどうすればいい? 依頼は失敗したし、これじゃ聖剣(ソイツ)は返して貰えないよな。まあ、俺はその方がセイセイするし、とくに困らないんだが」



「ちょっとー! ふざけないでよ魔王。あんたわざと失敗したんじゃないでしょうね。私はあんたたちがいない間あちこち弄くられて大変だったんだから。イリアー、もう置いてかないでよ」


 よっぽどのことがあったのだろうか、アミスアテナは涙ぐんだ声で抗議の声をあげていた。



「おいおい人聞きが悪いな。色々と違いを確認してただけだろうに」



「アミスアテナごめんね一人にしちゃって。……だけど私たちクロムさんの依頼を結局達成できてないから、だからもうしばらく……」



「──────────」

 アミスアテナは絶句している。



「いやいや、もういいさ。聖剣は十分見せてもらったし、とりあえずあのガキは死なずに追い返せたんだろ。まあそれで文句はねえさ。それにあいつは目的の魔王を見つけたわけだ。これからは街で無差別に暴れまわることはもうないだろうさ」



「ん、おいそれって。今後はあいつが俺を狙ってくるってことだろ? まさかその時も殺すなっていうのか?」



「いや、依頼はどんな形にせよもう終わったんだ。自分を殺しにくる奴を殺すな、なんてことは言えねえさ。ただ、できるのなら殺さずに追い返してやって欲しい。それくらいの実力差はあるだろ?」



「実力差があろうと何度も追い払うのは面倒過ぎるだろ。……だがまあさっきは依頼を完遂できなかったしな。もし覚えてたら殺さないでおくさ。だが何でお前がそこまで気にかける? 赤の他人だろ?」



「間違いなく他人だよ。……だがああいう馬鹿には昔覚えがあってな。どうしてか見捨てておけんのだ。──まあしかし、狙った相手に正しく返り討ちに合うのなら、それはそれでマシな最期だろう」

 そう言って、クロムはやや諦観も混ざった表情をした。



「そんなこと言わないで下さい。大丈夫です、アゼルはこう見えて優しいんですから。私も協力しますし、今度こそ大人しくさせてみせますよ」

 薄い胸を張ってイリアは宣言する。



「おいこら勝手な約束をするな。鬱陶しくない限りで追い払うってだけだぞ」



「ふ、まあいいさ。それでこれからどうするんだ? 金もないなら宿にも泊まれんだろうし、何より何処に泊まったところであの小僧が襲ってくるかもしれんが」



「ああー、結局そうなるのか。こうなると夜営するのが無難か?」



「まあお金もないですし、周りへの迷惑を考えるとそうするしかないですね」



「それなら、店の裏手の森に入ってみな。危険な獣はいねえし、キャンプしやすい拓けた場所もいくつかある。一晩くらいなら問題ないだろ」



「本当ですか、ありがとうございます。ではクロムさん、アミスアテナは持っていきますね」



「おう、持っていきな。貴重なモノだ、大事にしな」

 クロムはアミスアテナをイリアに渡す。



「イリア~、もう置いていかないでー。寂しかったんだから~」

 イリアに渡されたアミスアテナはよほどのことがあったのか号泣している。



「なんだ、随分と可愛いげがあるじゃねえか。イリア、ずっと預けてたらどうだ?」



「うっさいわね冷血魔王! 馬鹿なこと言ってると三枚におろすわよ」



「はいはい喧嘩しないの。それではクロムさん、ご迷惑をおかけしました。いずれ改めてお詫びに来ますので」



「別に構わんさ。ま、ウチの品を何か買ってくんなら歓迎するが。こちらとしても、余計なトラブルを押し付けちまったからな。何か困ったのなら顔を出すといい」



「ありがとうございます。それではこれで」

 イリアは深々と頭を下げてから店を出ていこうとする。


 しかしアゼルはそれについては行かなかった。


「アゼル?」



「……………先に出てろ。すぐ済むから」



「???」

 疑問符を浮かべながらイリアは店を出た。



「ん? 俺になんか用でもあったか?」

 クロムは腕を組んでアゼルと向かい合う。



「ああ、ちょっとな」

 瞬間、アゼルから魔素が吹き出し、同時に複数の魔石が生成される。



「!?」


 驚いたクロムが反応する間もなく、それらの魔石は激しく叩きつけられたのだった。

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