表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エルダーストリア‐純白彩加の魔勇譚‐  作者: 秋山静夜
第三譚:憎悪爆散の魔人譚
58/366

第58話 賢王の気まぐれ、双剣の危機

 

 数日前の大雨が嘘のような目も眩む日差しがハルモニア大陸の東端、ハルジア国を包んでいた。


 その穏やかな空気に反して、ハルジア城の廊下にて激しい足音が鳴り響く。


 できるだけ早く、しかして品位は落とさぬように可能な限りの急ぎ足で白鎧の騎士が歩いている。



 バン!



 王の執務室の扉が勢いよく開けられた。


 執務室ではハルジアの国王、賢王グシャ・グロリアスが政務に当たっているところであった。


「どうした白騎士カイナスよ。お前ほどの男が慌てるとは。それほどの急事か?」


 臣下の礼節を欠いた振る舞いにも、さして動じることはなく賢王グシャは冷静にカイナスへ問いを投げ掛ける。


「礼を欠く振る舞い申し訳ありません! 後で幾重にも罰して下さい。しかし先に申し上げさせていただきます。たった今、早馬からの報告があり、我が国が()()()()()()に秘密裏に建設したホーキンス研究所が、崩壊したとのことです!」



「ほう?」


 白騎士カイナスの報告に、賢王グシャ・グロリアスの片眉がピクリと跳ねる。


「詳細な被害状況は不明、現在確認に向かわせています。ですが……何しろ他国の中ですので表だって多数の人員を動かせず、情報が出揃うまでには10日はかかるかと。それに、このことがアニマカルマに漏れてしまえば外交的に大きな問題となってしまいます」

 カイナスは悔しげに言葉を吐き出す。


 現状、魔族という人間にとって大きな敵がいる以上、簡単に国同士での戦争などにはならないが他国の主権を侵して勝手なことをしていたと知れれば、相手側に外交上の有利なカードを握られてしまうことは間違いないだろう。



「10日か、少しかかるな。アニマカルマは急ぎ往復しても8日はかかる距離であるから仕方あるまいが。あそこには()()()()他国には触れさせたくない機密も多い。────ふむ、私が出るか」


 事の重大さに対して冷静過ぎるほどの態度でグシャは自ら動くことを容易く決意した。



「!? そんな! 王が動かれることは御座いません! この件は我らの手で対処しますのでどうか王は座して待っていていただければ」



「そうも言っていられまいよ。何よりもお前たちに任せるより私が動いたほうが物理的に()()。『門』を使えば、相当な時間の短縮になるからな。代わりに数日の間お前たちに国を任せる。アベリアと二人で私の執務を代行するように」



「は?」


 白騎士カイナスは今のグシャの発言の内容に頭が追いつかなかったのか、思わず間抜けな返事をしてしまう。



「聞こえなかったか? しばらく私は不在となる。……そうだな、表向きは病床に臥せっていることにでもするがいい。その間の私の仕事は貴様たちで処理するのだ。さしあたってはそこの机の上の書類の処理だな」



 そう言って賢王グシャが指差した先には、机から崩れ落ちそうなほどの書類の山が……



「いや、あの、王よ。それならばやはり我々が向かった方が」



「私が帰るまでは騎士としての責務は忘れ王の代行に専念せよ。────その方がお前たちにとっては安全だろう。ではな、任せたぞ」


 賢王グシャはカイナスの言葉を聞き届けることなく颯爽と執務室を後にしていった。


 この時グシャを止められなかったことを、後でカイナスはアベリアに相当(なじ)られた。


 王の身を案じたのはもちろんだが、それ以上に王の業務の代行とはある意味での死刑宣告に等しかったからだ。



 白騎士カイナスと黒騎士アベリア、二人にとって騎士として戦うことよりも遥かに地獄のような日々が始まりを告げた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ