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第57話 夜闇に叫ぶ
そこは、誰も立ち入ることのないであろう真夜中の森。
今宵は激しい雨が降り続けている。
強い雨音があらゆる音を掻き消し、かえってそこに静寂を生み出していた。
その深く暗い森の奥のぽっかりと拓いた空間に、隠れるようにひっそりと巨大な建物がある。
いや、あった。
おそらくは堅牢であったはずのその構造物は、今では無惨にもボロボロに崩れ落ちている。
そこに、生きた命の気配はどこにもない。
いや、違う。
大量の瓦礫の中からただ一人、黒衣の人影が立ち上がった。
静寂の中に鳴り響く雨音。
しかし、瞳の中に狂気を宿したその男は全身を雨に打ち付けられてもまったく気に留めない。
男は周囲を見渡し、もう殺すべき命がないことに対し、苛立ちでギチリと歯を鳴らす。
彼の瞳は誰もいない虚空を睨み続ける。
その形相は人というよりは獣のそれに近いだろう。
「オオオオオオオオオオオオォォォ!!!!」
仮初めの静寂を打ち消し、憎悪の込められた一匹の獣の咆哮が、広く夜天へと響き渡った。




