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エルダーストリア‐純白彩加の魔勇譚‐  作者: 秋山静夜
第二譚:灼銀無双の魔法譚
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第38話 脱出

 ガチャン


 イリアが泣いてから半刻が過ぎた頃、唐突に牢屋の鍵が開けられた。


「ったく、お前は何度捕まれば気が済むんだか。よお、助けに来てやったぞ」


 声はするものの、人らしい姿は見当たらない。

 イリアが目を凝らしてようやく、逆光気味の黒い妖精姿のアゼルを見つけることができた。


「アゼル。助けに来て、くれたんですね」

 イリアは泣き腫らした目をこすりながら、ようやく救助が来たことを認識した。



「おいおい、そんな泣くほどに怖かったのかよ。一体何されたんだ?」


 アゼルにとってのイリアは何があっても挫けることを知らない不屈の少女である。

 そんな彼女が涙する理由など彼には思いつかなかった。



「アゼルっ。大変なんです。子供が、魔族の子供が、ユリウスとカタリナが今から処刑されてしまうんです。すぐに助けに行かないと。わ、私が、私が殺してしまったから」



「は!? どういうことだよ。少しは落ち着け。何でここに魔族がいるんだ。それに処刑だと!? 場所は分かるのか? すぐに行くぞ」


 イリアの説明ではイマイチ要領を得ず、状況をよく把握できないアゼルではあったが、魔族の子供が殺されるとあっては彼にとっても聞き捨てならない一大事である。



「確か大勢の民の前で処刑すると言っていました。公開処刑をするとなると大広場で行う可能性が高いと思います」


 世の中の悪習ではあるが、魔族に限らず見せしめなどで公開処刑をする場合はその土地で一番広く公共性の高い場所で行うのが通例であった。



「ならひとまずそこに向かうぞ。お前の聖剣は兵士の詰め所にあるからさっさと回収しろ。兵士たちに捕まらずに一気にここを抜け出すぞ」


 そうしてイリアとアゼルは急いで牢の外へと飛び出していった。

 牢を出ると数名の衛兵が倒れ伏している。


「アゼル、これは?」


「鍵を奪う際に少し魔素を吸わせて眠らせた。2、3人程度の無力化なら俺に任せろ。……あと俺は重い扉は開けられないからお前に頼むな」


 なるほど、少量の魔素であれ口元で急に吸い込めば急性の魔素中毒になり気を失う。


 命に別状はないだろうが1時間程度は目を覚ますことはない。

 アゼルの今の体格だと正面からの戦いは厳しいが、背後から奇襲することで兵士たちを無力化していったようだ。


 それにイリアの救出に時間がかかったのも納得がいく。

 アゼルの今の筋力では通常の扉を自分で開けることができないため、衛兵たちが移動する際に紛れて扉を移動していたのだろう。


 それでは複数ある牢屋をいちいち調べ回るのにも時間がかかってしまう。


 アゼルが途中で遭遇する数名の衛兵たちを無力化しながら、イリアたちはアミスアテナの保管されている詰め所までたどり着いた。



「アミスアテナ、無事だった?」



「イリア、あなたこそ無事で良かった。あいつに任せっきりで不安だったけどどうにかなったのね」



「憎まれ口は今はいい。急いで出るぞ」

 アゼルはアミスアテナのいつもの軽口に取り合わず先を促す。



「?? 急ぐのはもちろん賛成だけど、どうしたの? イリアも相当焦ってるみたいだけど」



「子供が、子供が殺されそうなの。魔族だからって大勢の前で見せしめに」



「え? 子供? 魔族? それを助けるの? 私たちが? ん~と、それは本末転倒じゃ」


 アミスアテナからしてみれば、今まで散々魔族たちを屠ってきた自覚がある。

 その彼女とイリアが子供とはいえ魔族を助けることは偽善ではないのか。



「お前にやる気がなくても俺は行くぞ。目の前で民に死なれてたまるかよ」



「お願いアミスアテナ、力を貸して。……私のせいなの。私のせいであの子たちが酷い目に。だから、私が助けないといけないの」

 必死な瞳でイリアは懇願する。



「ん~、私はそういう気持ちで人助けをするのもどうかと思うけど。…………まあ、仕方ないわね。あなたがそう思うのなら私には止められないわ。好きにしなさい」


 さすがに意見が2対1で負けていれば、論破する気力も出ないのか、アミスアテナは意外と素直にイリアに従うことにした。


 

 こうして無事合流を終えたイリアたちは急ぎ詰め所を飛び出して大広場を目指していった。

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