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エルダーストリア‐純白彩加の魔勇譚‐  作者: 秋山静夜
第一譚:無垢純白の勇者譚
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第18話 王の双剣

「ん? ……ここは?」

 ドタバタとした喧しい音で目を覚ます。

 どうやら馬の足音のようだけど、


「ようやく目を覚ましましたか。随分と派手にやられたようですね、アベリア」

 よく知った声が頭上から聞こえてくる。

 どうやら自分は意識を失ったまま、こいつに運ばれていたらしい。

 白騎士カイナスは左手で手綱を握り、右腕で自分の胴体を抱えて馬を走らせている。


「──────────そうか、僕は負けた、のか。……というかカイナスもあの場に来ていたんだね。今回の命令は自分だけに下ったものだと思っていたよ」


 カイナスに運ばれている現状から判断すると僕は派手に負けてしまったみたいだ。

 魔王と戦っていたのは確かなはずだけど、どうしても最後の瞬間が思い出せない。

 身体中に走る痛みから察すると、どうやら相当な一撃をもらったらしい。


「アベリア、素が出てますよ。一応、他の者たちもいるのですから言葉遣いには気をつけてください。 …………王からは、あなたに知られることなく後を追うようにと命が出ていました。目標対象が打倒可能であればアベリアの支援を、敵の力がこちらの想定を上回るようであれば戦力分析後に撤退を行なえ、と」


 なるほど、勇者に対して二重尾行を行なっていたわけだ。おかげで僕は予備戦力の存在を匂わすことなく彼らと相対し、結果としてカイナスの完全な不意打ちで窮地を脱することができたわけなんだろうけど、カイナスが応援に入らなかったってことは……


「カイナスには僕がアレを倒せるとは思わなかったんだね」

 思わず、拗ねるような言葉を口にしてしまう。


「ですから口調が、…………ええ、そうですね。私にはあの魔王が私たちに打倒しうる存在だとは到底思えませんでした。アベリアの力も確かに瞬間的には魔王に迫っていたように思いますが、それでも一度凌がれてしまえば、もうこちらに勝機はありません。それに、200年に渡って人間の敵として君臨してきた魔王の力があの程度であるはずがない。その魔王に対して私たちくらいの力では届かないことはアベリアも分かっていたはずです。あの時、どうして勇者ではなく魔王の方に挑んでいったのですか?」



「─────────一度くらいは、挑戦してみたかったんだよ。世界の敵を討ち倒す英雄って奴に。まあ、僕程度の力では魔王に及ばないのは確かだったね。……いけそうな気がしたんだけどなぁ。だけど、あの魔王を放置してこのままハルジアに帰っていいのかな?」

 自身の敗北は甘んじて受け入れるが、それはそれとして魔王の存在は無視していいものではない。


「そうですね、……おそらくは大丈夫でしょう。何といっても、あの場には人類を救った『勇者様』がいらっしゃるのですから」

 冗談と嗜虐を混ぜ合わせたような笑顔でカイナスは語る。


 そう、確かに魔王を無視することはできないが、それ以上に絶対的な信頼があの勇者にはある。数多の絶望、降り注ぐ苦難。誰もが諦観に満ちた日々。人類をそれら全てから守り抜いたのは間違いなくあの眩しいほどの…………


「まぁ、言われてみればそれも、そうだ、ね……」

 うん、納得したら眠くなってきてしまった。


「あ、え、ちょっと、いい加減私も重いんですから、抱えられたまま眠りなおさないで下さい!」

 カイナスが何かごちゃごちゃ言っている気もするけど、今日は自分も疲れた。

 王へ任務失敗の報告をするという憂鬱な仕事も残っているし、しばらくは全てを忘れて眠ります。


「ちょ、こいつ本当に寝やがった。起きろアベリア! 重い! 俺の腕が! 死ぬ~」




 こうして、勇者暗殺に失敗した「王の双剣」は色んな後始末を全て勇者に丸投げして、悠々と王都への帰路についたのだった。

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