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エルダーストリア‐純白彩加の魔勇譚‐  作者: 秋山静夜
第四譚:理念夢想の人形譚
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第119話 絶技・鵠心双閃VSアルス・ノワール

 シロナが目を見開くと、既に目前にアゼルのアルス・ノワールの力の奔流が迫っていた。


 それに、一切動揺することなく、


錬心万虹(れんしんばんこう)

 シロナの絶技が発動する。


 アゼルの放ったアルス・ノワールの黒い極光を虹色に煌めく数多の斬撃が押し返していく。


「何アレ、あの子あんな技を持ってたの? ねえアレ何が起こってるのよ」

 アミスアテナは驚愕している。

 それはそうだろう、アゼルの放った技はイリアとアミスアテナの極技「ヴァイス・ノーヴァ」に拮抗するほどのものだ。

 つまり、アゼルの奥義と競り合うということは、シロナの剣技がイリアたちの領域にたどり付いていることに他ならない。


「ん~、あー、あれはムチャクチャ速く刀を振ってるだけだよ」

 親指と人差し指で作った輪っかごしに目を凝らしてエミルは言う。


「斬撃が飛ぶほどの神速の一刀で大気中のジンが切り裂かれて虹みたいに散ってる。その太刀筋を何千何万って繰り返してる……んじゃないかな。さすがに見えない」

 エミルの眼力をもってしても捉えられない剣速に彼女も困り顔であった。


「なるほどね。根源理由であるジンを悉く切り裂くあの領域はいわば『何の意味もない世界』。嫌な話、聖刀自体の力は聖剣(わたし)に劣ってるのに、そこに人外の速さを足すことで『真』に迫ろうとしているのね」

 アミスアテナは得心がいった様子である。


「でも、そんな無茶な動きを続けたらシロナは──────」


「間違いなく壊れるだろうね。いやまあ普通は壊れる以前の問題だけど、あの速度に耐えられる強度の聖刀とシロナを作ったクロムのおっちゃんはとんでもないよ」


 エミルは関心しながら目の前の力の激突の行方を見守る。


 シロナの数多の斬撃によって生じた剣界はお互いの中央にまでアゼルの極光を押し返していた。


 そして、それと同時に彼の各関節のパーツが軋みを上げる。


「どうした自動人形? お前の程度はこんなものか? この程度のモノの為に、多くの屍を積み上げたのか!?」

 アゼルから怒号が飛ぶ。


 いや、それはむしろ激励のような、


「無為に積み重なる死などないでござる。積み重なった死から目を背けることなどできないでござる。多くの死、数多の亡骸、この一歩がそれらを踏みにじった。この輝閃がそれらの未来を刈り取った。故に、この刀にのしかかるモノの重さで貴殿に負けるわけにはいかない!」

 シロナの一歩の踏み込みとともに、彼の剣界の領域がさらにアゼルに向けて押し広がっていく。


「良く言った、聖刀使い。だが貴様の言う重さは本来俺が背負うべきものだ。たかが人形にはやはりくれてやれん。───────返せ」

 アゼルの最後の一言とともに、莫大に膨れ上がった魔素の暴威がシロナの虹の剣界ごと飲み込んでいく。


 荒れ狂う力の奔流がシロナに向けて集まり、収束していく。


「うわ、結局力任せ。技術も何もない出鱈目な出力任せじゃん」

 エミルの呆れた声。


「でもシロナにはエミルさんの魔法すら無効化した剣技があります」


「いや、アゼルのあの技は魔素の純度100%で一切のジンも混じってないから、さっきのアレはできないよ」


「え、それじゃあの子大丈夫なの? 私たちじゃ直せないでしょ」

 珍しく本気で心配しているアミスアテナ。


「ん~、そうなったらやっぱりクロムのおっちゃんとこに連れてくしかないかな」



「ハァ、ハァ、ハァ─────」

 アゼルはイリアたちの話すら耳に入らないほどに疲労困憊していた。


 当然だろう、4時間以上の集中した戦闘の末に自身の奥義を最大出力で放ったのだ。

 疲れていないわけがない。


 だから、彼の放った次の言葉を責められる者など誰もいない。


「──────────やったか?」



 アゼルのアルス・ノワールの破壊の波がおさまっていく。


 そこから現れたのは、虹の真円だった。


天究絶無(てんきゅうぜつむ)


 真円の向こうからシロナの声が聞こえるのと同時に虹の円が霞となって消えていく。


「何だと?」

 驚愕するアゼル。


「あ、さっきの虹の斬撃を攻撃じゃなくて盾として応用したんだ。あの途方もない斬撃を目の前に『意味のない空間』を展開することだけに費やせばアゼルのアルス・ノワールも耐えきれる」

 今、目の前で起きたことを一瞬で読み取るエミル。

 この思考の俊敏さこそ、一線級の強者の証だろう。


 そしてそれはシロナも同じく、


「最期でござる」

 シロナが二振りの聖刀を納刀すると同時にアゼルに向けて涼やかな風が吹く。


「────!?」

 その風が運ぶ絶望的な死の予感を嗅ぎとるには、アゼルの嗅覚はまだ鈍かった。


鵠心双閃(こくしんそうせん)

 シロナはアゼルへ向けて真っ直ぐに突っ込む。


 それは何の策も、フェイントもない愚直な突進。


 あまりにも無防備なその技は、ただその速さ(早さ)だけが異常だった。


 物質的な速さだけでなく、観念的な早さも備えたその技は、アゼルの意識がそれを認識する間もなく彼の肉体へと到達した。


「────くそったれ、」


 十字の抜刀がアゼルの胴を確実に捉え、彼はこの日2度目となる死の衝撃を甘受した。

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