子猫の3兄妹 小さな悪魔
とら:
悲劇とは突然やってくるもの。それは、ゆっくりとやってきた。
たどたどしい歩みの人間。僕達より、長生きしているらしいけど、あの歩きでは、僕達の歩みにかなうはずはない。僕は警戒心を解き、様子を見ることにした。
ふいに、人間は、右手を伸ばしてきた。甘い。僕からみれば、スローモーション。軽く避けた。人間の手はむなしく空気を掴んだ。僕の俊敏な動きに誘われ、人間は、やる気になったのだろう。今度は、左手を伸ばしてきた。ふん。僕は余裕でかわした。
人間の行動を疎ましく思った僕は、背を向け、ゆっくりと歩き出した。
一瞬のことだった。尻尾を捕まれる感覚、体が浮き上がる感覚が僕を襲う。そして、頭に血が上る感覚を感じた後、僕は空を飛んでいた。僕が口にした言葉は、ひとことのみ。
「ぎゃー」
しろ:
悲劇。それは、天使の衣をかぶった悪魔がもたらすもの。
可愛らしい子供がやってくる。よちよち歩きの小さな天使。
小さな手が兄さんに伸びる。兄さんは避ける。なんで。触らせてあげれば良いのに。わたしは、小さな天使に近づく。
兄さんは、小さな天使と遊ぶことにしたみたい。尻尾を持ってもらって、振り回されている。なんだか楽しそう。あっ、空を飛んでいる。わたしも飛んでみたいな。
わたしは、小さな天使に近づき、前足を出す。だって、尻尾を掴まれるのは嫌だもの。前足を持って、振り回して欲しいな。えっ、ひげは嫌。掴まないで。わたしは必死に逃げ出した。
ミケ:
悲劇。それは、喜劇と紙一重。
小さな子供を連れたお母さんがやってきました。子供が、とらちゃんに近づきます。
おぉ、なかなかの右ストレート。でも、とらちゃんは、余裕を持って避けます。さすが、ミケのお兄ちゃん。まだまだ、余裕です。人間対子猫の異種格闘技戦、ミケは、お母さんの膝の上から実況しています。
あっ、とらちゃんが捕まりました。ピンチです。振り回されています。空を飛びました。
自動的に、しろちゃんに交代です。しろちゃん、正面から襲い掛かります。おっと、リトルデビル、ひげを掴みました。これは反則です。しろちゃん、たまらず逃げ出します。
リトルデビルの興奮は収まりません。これは場外乱闘です。実況のミケに向かってきます。危険です。お母さんのスカートの中に隠れることにします。
お母さんが、言います。
「そんなに乱暴したら、猫ちゃんたち可哀想でしょう。こうやって、撫でてあげると喜ぶから」
ミケののどは、ごろごろ言っています。
母と子が1匹の子猫とたわむれている。その様子を、じっと眺める2匹の子猫の姿があった。