アトピーとお箸の持ち方
皆さん、お箸は正しく持てていますか?
お箸の持ち方は幼い頃より教育、矯正されて覚えていくものです。
よっぽどの理由がない限り、どんな持ち方だろうと日本人はお箸を使って食事をします。
さて、お箸は正しく持てているでしょうか?
私は持てています。食事マナーは厳しく躾けられたので、正しい持ち方をしています。
……というのは、ウソです。
正しく持てているのは本当、厳しく躾けられたのも本当なんですが、実は私、お箸を正しく持てるようになったのは十八の頃なんです。
あー、直したんだね。と思うでしょう。
偉いねー、と思うでしょう。
そう、直したんですよ。頑張りました。
すっかり癖づいて正しい持ち方では掴むことも大変、外でそんな姿を晒すわけにはいかず、家でひたすら練習しました。
もうね、褒めてほしい。
十八歳の子が自分の意思で直そうと頑張ったの、褒めてほしい。
当たり前だから誰にも褒められないのわかってるけど、私にはそれなりの理由があったんだ! と叫びたい。(だからエッセイにしてる)
そうです、私には、お箸を正しく持てない理由がありました。
それがアトピーでした。
幼い頃の私は手足の関節はもちろん、指のいたるところにじゅくじゅくとした傷がいくつもありました。
今ではあかぎれのみになりましたが(アトピーは年齢で症状が変わる)、本当に常にじゅくじゅくとしてました。
乾くことなんてないです。つゆが出続け、ゴミはつきまくり、痒いし痛いしな日々でした。
絆創膏を貼ればテープの部分がかぶれるし、そもそも絆創膏じゃ追いつかない数の傷。
指にすっぽり被せるタイプの包帯をしてましたが、それもじゅくじゅくが酷い時は全部くっついてしまう。
子供ながらによく付き合ってたなーと思いました、今。
そんなわけですので、お箸が当たる部分に傷があると痛くて辛かったんです。
楽しい食事が苦痛に変わるんです。食べ物を掴むたびに痛い。むしろ、痛くて掴めない。
だから私は、傷の場所が変わるたびにコロコロと持ち方を変えていました。
決まった持ち方なんてありませんでした。
握り箸やクロス箸をしなかっただけ頑張ったと思います。
そして小学生時代を過ごし、中学生時代はまぶたの湿疹に悩まされ(薬を塗ると火照りが酷かった)、アトピーが落ち着いてきた高校生時代(でも耳の縁は唐突に切れる)には当たり前に正しくない持ち方が定着していました。
正しくないと言っても、私にはあかぎれを避けた最高の持ち方だったわけですが。
傍から見れば箸の持ち方がおかしい人だったんですね。
けれどわざわざそれを指摘する友人はいないですし、私は理由があるので直す気になることなく、そのまま地元を出て進学しました。
で、言われた。専門学校の先生に。
教師と生徒の距離が近く、仲のいい学科メンバーではありましたが、みんなの前で「こいつは箸の持ち方が変だぞー」と笑われたのは恥ずかしかった。
当時純粋そのものの私は「やっぱり直さなきゃダメだよね……」と矯正したわけですが、それでも悔しかった。
トリマーの授業でまた増えたあかぎれまみれの手で、血の滲む(言葉通り)矯正を意地で行いました。
結果としては、良いきっかけだったと思います。
今では正しい持ち方のままあかぎれを器用に避けてお箸を使えるようになりました。
でも、子供ながらに積み重ねてきたものを否定されたことには悔しさが残りますね。
何も知らないのに、と大人気なく思ってしまいます。
そんな感じの、アトピーとお箸の持ち方のお話でした。
子供のお箸の持ち方を直さなきゃなーと見ていて、ふと思い出しました。
アトピー持ちのお子さんをお持ちの方、指に傷があるようなら、あまり厳しくしないであげてくださいね。