ろく
少女は、おばさんからもらった水まんじゅうを食べながら町を歩いていた。すると。
「こびん…屋…?」
『小瓶屋』と書かれた看板の前で、少女は足を止めた。
「いらっしゃい─って、おやアンタ、この町の子じゃないねぇ。久しぶりに地上の子を見たよ」
と、丸メガネのおばあさんが少女に声をかけてきた。
「ちじょうのこ…?さっき、おまんじゅう屋のおばさんもわたしがここの子じゃないってすぐに分かったけど、何で分かるの?」
「見てれば分かるさ」
「ふーん、そうなんだ。それより、ここはビンしか売ってないの?しかもみんな中身がからっぽ」
「ああ、そうだよ。でもねぇ、これはただのからっぽのビンじゃないよ。『音』の入ったビンなんだよ」
「音?」
「そうだよ、聴いてみるかい?」
そう言っておばあさんは瓶を1個ずつ手にとって、うんうんと唸った。
「何がいいかねぇ~…『猫の声』『カナリアの声』『キリンの声』…『雷の音』『流れ星の音』『虹の架かる音』…う~ん、いろいろあるけど私のおすすめはやっぱりこれだね~」
と、おばあさんはひとつの小瓶を少女に手渡した。
「『あまおと…?』」
「ああ、シンプルだけど私はこの『雨音』のビンが一番気に入ってるんだよ」
開けてごらん。と、おばあさんは言って、にこっと微笑んだ。
少女はちいさな手に力を込め、小瓶のコルクを引っ張った。
ポコンっ!
少女がコルクを開けると。
────ポツ…ポツポツポツポツ…パララララ……
雨が降りだしたような音が、小瓶から聴こえてきた。




