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よん
「おぼれる─…あれ?」
少女は水たまりに落ちると、溺れると思い、咄嗟に息を止めて両手足をジタバタとさせた。が。
「…おぼれない。息できる」
水中にいる感覚はあるが、息ができるししゃべれる。それに、洋服が濡れない。
「ふぁ~なにこれ!すごーい!」
少女は嬉しそうな声を上げ、水たまりの中をスイスイと泳いだ。広くて深いその不思議な水たまり。エメラルドグリーンとアクアブルーのグラデーションがまるで海中のようだった。
「ふふふ、なんだかこのあいだ読んだ『人魚姫』になったみたい♪」
少女は絵本で見た人魚姫になりきるように、水たまりの中をひらひらと泳いだ。すると。
「ほあ~!下の方にお家がいっぱいあるっ!」
少女がひらひらと泳いでいると、水たまりの底に町のようなものが見えてきた。
少女はくるくると泳ぎながら、その町へと向かった。




