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音のない歌詞

ねむる

作者: 渋音符


 変な鼻水をすする。寒さに首をさする。

 ごつごつした地面を歩く。足裏が痛む。

 少し短いスキニーが擦れる。ハイカットで足首を痛める。

 夜に風呂に入り、足首を揉みほぐす。


 生きるのが辛いだとかじゃない。

 けれど僕は暗い。根が暗い。

 お洒落が辛い。キャラクターじゃない。

 周りの目線が痛い。

 僕が過敏なだけだ。


 少しちぎれたメモ帳も、芯が引っ込んだシャーペンも。

 それにイライラする僕も、捨てられてしまうシャー芯も。

 ゆっくり眠ればいいのに。静かに眠ればいいのに。

 誰かが眠るのを邪魔する。誰かは分からない。


 仕事での大失敗(おおぽか)。家族からの冷えた言葉。

 頬を伝う涙。目に入る睫毛。

 むしゃくしゃして投げ飛ばしたぬいぐるみの黒い瞳。

 じっとこちらを見据えている雀の群れ。


 くたびれたスーツを着て。早く起きて。

 仕事場に来て、何かを磨り減らして。

 慣れたはずの革靴が擦れる。書類で手首を痛める。

 夜に風呂に入る間もなく、布団で眠ってる。


 死ぬのが怖いだとかじゃない。

 やっぱり僕は暗い。こんな詩を詠むぐらいだ。

 愛想笑いが辛い。本音じゃない。

 周りとの距離が遠い。

 僕が近づかないだけだ。


 ずり落ちていく眼鏡も、少しきつく締めたベルトも。

 それに嫌気が差す僕も、取り繕ってしまう僕も。

 ゆっくり眠ればいいのに。静かに眠ればいいのに。

 すぐに起こされてしまう。夢は覚えていない。


 眠ればいいのに。みんな眠ればいいのに。

 ゆっくり休めばいいのに。静かに休めばいいのに。

 なんで夜は、こんなに明るいの?


 少し大人になった僕も、子供だった頃の僕も。

 人を憎んでいる僕も、人に優しくしている僕も。

 ゆっくり眠ればいいのに。静かに眠ればいいのに。

 起きなきゃいいのに。ずっと起きなきゃいいのに。

 

 朝日が眩しい。布団が恋しい。

 空気が美味しい。僕は生きている。


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