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テオドール VS ボストロール

 馬がいななき馬車が急停止する。


「キャッ────ありがとうテオ」

「どういたしまして。なんだろうね」


 よろめいたアイラを支えた。ちょっと顔が赤い。

 急に馬車が止まるなんて。何かあったのかな?

 馬車の窓から外を覗き込む。


「何があったの?」

「人が・・・、男性が倒れてる。ちょっと確認してくるよ」

「私も行くわ」


 男性の傍によるとぐったりして意識はない。

 『ヒール』で介抱して上げた。


「大丈夫ですか?何があったんですか?」

「ここは・・・、わ、私のことよりもお嬢様を助けてください。お若いのこの腕前。高名な冒険者様とお見受けします。どうかお願いします」


 弱々しく僕の腕を掴んで懇願してくる。藁にもすがる勢いだ。

 事情を詳しく伺うと、この先にトロール(食人鬼)が出現して襲われているらしい。

 男は助けを求めている最中で力尽きていた。


「だっ、旦那。あっしは反対ですぜ。わざわざトロールに食べられにゆくようなもんじゃないですか。襲われる前に逃げましょうよ」

「見殺しにしろと言うの!?」


 アイラが馬車の御者に一喝するが───ここからは僕達(冒険者)の領分だ。

 トロール討伐は小隊を率いてで行うものとされている。トロールはサバンナライオンよりも格上でAランクモンスターに認定されている。先にいる方々と合流出来れば勝機はあるかも知れない。


「僕達が向かいますのでここで待っていてください。行こう、アイラ」

「ええ!」


◇ ◇ ◇ ◇


 「えっ、そんな・・・」


 アイラが掠れた声で呟き、立ちすくむ。

 15人程の兵士がいる───立っているものは誰もいない。

 唯一立っているのは8mサイズのトロールのみ。


「何でこんな所にボストロールがいるのよ・・・」


 トロールは通常6mサイズだ。その変異体であるボストロールはより強靭な肉体を有している。

 あの木樽よりも大きな腕で殴られたらタダでは済まない。

 今まで見てきたどんなモンスターよりも強大で威圧的だ。


「いやぁ!!!!────ウッ!?誰か助けて・・・」


 ボストロールがヘタリこんでいた女の子を屈んで掴む。その大きな口を開けて丸かじりしようとする。


 迷ってる暇はない。

 『ロストテクノロジー!』

 『投石』をありったけ行う。


「ガッ!?」


 ボストロールの頭部に石が命中してよろめきながら女の子を手放す。


「キャッ!? お兄ちゃん誰?」

「早く逃げて!」


 ボストロールを睨みながら女の子に声をかける。女の子は、ぎこちなく下がってゆく。アイラが女の子を保護して後ろに下がる。


「グルル」


 トロールが僕に苛立ちをぶつけるように唸る。

 出し惜しみなんてしてる場合じゃない。立て続けに『ガトリングガン』を使用する。

 キュイーンという甲高い回転音と共にツブテが射出される。


「いけぇ!!!」

「────ガアアアアア!!!」


 これには堪らずボストロールも苦悶の声を上げる。────やったか!?


「そんな!まだ立っているなんて・・・。テオ、もういっかいよ!」

「うん!」


 アイラが僕に期待の声を投げかける。


『ガトリングガン!』


<システムメッセージ ガトリングガンはリロード(再充填)中です。再使用まで10秒お待ちください>


 10秒!?そんなに待てないよ!

 ボストロールが幾分重い足取りでこちらに近づいてくる───途中でしゃがみ込んだ。

 しゃがみ込んだ原因はダメージではなく、兵士をつまむためだった。

 つまんだ兵士を僕の前に掲げる。ミートシールド(肉盾)にする気だ。


<システムメッセージ ガトリングガンのリロードが完了しました。いつでも射撃可能です>

 

「うう・・・」


 肉盾にされた兵士が呻く。

 彼を見殺しにしてガトリングガンを放つのか?───そんなこと出来るわけないだろ。

 活路があるとすれば・・・


『ロストテクノロジー!』


────────────────────

LV3

使用可能テクノロジー

 ▼投石▼

  ガトリングガン


 ▼パワードスーツ▼(NEW)

────────────────────


『パワードスーツ!』


 僕の全身に黒みがかった防具が装備される。

 防具分の重量が加わって重くなっているはずなのに、羽のように体が軽い!


<システムメッセージ パワードスーツの稼働時間は60秒です>


 迷ってる余裕なんてない。

 落ちている剣を拾ってボストロールに突貫する。

 空いている左手で殴りかかってくるがまるで止まっているかのように動作が鈍い────いや、僕が疾いんだ!


「ウォォォォ!!!」


 兵士を掴んでいるボストロールの左手を一刀両断し、兵士をキャッチする。

 ボストロールは何をされたのか分からなかったらしく、時間差で苦しみ悶える。

 兵士を地面に下ろす。


「グルル!!!」


 ボストロールが闘争本能剥き出しで僕に向かって突っ込んでくる。

 剣を構えようとしたがボロボロで使い物にならない。

 ボストロールの猛攻を僕だけなら避けることも容易だろう。しかし、今倒れている兵士が無事で済む保証はない。

 パワードスーツの力を信じてここで迎え撃つことを決断する。


 ドシン、ドシン。

 地響きを立てながらボストロールが迫りくる。

 腰を低く構えて───渾身の力で殴りかかる。


「うおおおおおお!!!」


 拳が交差し、僕の拳がボストロールに直撃する。

 『バンッ!』と物凄い音がと、肉を叩く感触。

 ボストロールが『縦』に回転しながら吹き飛ぶ。周囲の木々をへし折りながら止まる。───ピクリともしない。


「テオ、凄いわ!無事で良かった」


 アイラが溢れんばかりの笑みを浮かべながら抱きついてくる。

 辺りを見渡す。誰もが不承しているが幸いにも死者はいない。

 怪我だったら僕の『ヒール』で治してあげられる。


「うん、無事でよかった」


<システムメッセージ パワードスーツの稼働時間がオーバーしました。強制解除します。再使用まで1時間お待ちください>


 頭の中でシステムメッセージ(女性の声)が聞こえる。

 パワードスーツは極めて強力だけど使用可能時間が極端に短い。使い所が重要なスキルなんだな。


「お兄ちゃん、ありがとうございました!」


 女の子がペコリとお辞儀する。

 6才位の子供だろうか。利発そうな子だ。


「怪我はなかったかい? お兄ちゃんがトロルをやっつけたからもう安心だよ」


 女の子の様子を確認したが、ピンク色のドレスが泥で汚れてるだけで怪我はない。

 身なりから察すると両親は位の高い人なのかも知れない。


「みんな治せますか?」


 目に涙を溜めながら上目遣いで尋ねてくる?


「大丈夫。お兄ちゃんは何でも出来るよ。だから安心して。ね?」 


 倒れている兵士の治療を開始した。

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