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次の目的地

「ドロップ品回収OKだ」


 サバンナライオンの爪と魔石を回収する。

 どちらもそれなりの値段で売れるし何か役に立つかもしれない。路銀はあるに越したことはないからね。


「うん。・・・それでさっきのどうやったの?」


 アイラの視線は回収した爪と魔石をしまった鞄に向けられる。


「・・・」


 逡巡してみるが良い答えが見つからない。


「僕も分からないんだ」

「え?」

「強く念じたら出来ちゃったんだ」

「出来ちゃったって・・・。いや、まぁ、それで私達助かったんだから文句はないわよ。でもサバンナライオンって『Bランク相当』のモンスターでしょ。私達で倒せるはずないのだけど・・・」


 アイラが困惑の表情を浮かべる。


「・・・だよね。本当に何なんだろ、これ(ロストテクノロジー)」

「本当に外れスキルなのかな。<賢者>よりも強力なんじゃ。────そうだ。そうよ!」

「えっ、何?」

「ロストワールド(遺跡都市)に行こうよ!」

「ロストワールド・・・」


 ロストワールドは隣国だ。数多くの遺跡が眠っており、遺跡を発掘する冒険者や考古学者によって賑い、発掘された技術は人類の生活水準向上に貢献している。───例えば魔石を燃料とするマジックライト(照明)などだ。普及はまだまだ限定されているが夜の街の治安向上に貢献した。ある者は富と名声のため。またある者は知識欲を満たすために。様々な思惑がひしめき合う活気のある国だ。


「あそこだったらテオの『ロストテクノロジー』について何か分かるかも知れないでしょ」

「・・・うん、行こう。行こっかロストワールドに」


◇ ◇ ◇ ◇ 


「なぁ、あの人・・・」

「うん、すっごい美人さんだよね」 


 ロストワールドに向かうためにの乗合馬車に並んでいるとヒソヒソと囁き声が聞こえてくる。皆アイラの容姿を褒め称えている。並ぶ前にせめて街を離れるまでとマントやフード(頭巾)を購入してなるべく目立たないようにしているのだがその美しさを隠しきれていない。

 本人はそれを気にした様子もなく平然と僕に話しかけてくる。


「やっと私達の番ね」

「うん、そうだね。・・・本当にいいの?この馬車に乗ったら暫くこっちには戻ってこれなくなるよ?」

「テオもくどいわね。私があなたと一緒に行きたいといったのよ。父様達が頭を冷やすまでは向こうで冒険を楽しもうよ」

「頭を冷やすって・・・」

「テオとの縁談を解消するって言い出して頭にきて家を飛び出してきちゃった」

「それはしょうがないだろうね・・・」


 内心でアイラの父であるレオンさんに同意する。

 『ロストテクノロジー』がただの外れスキルではなさそうだが、僕は<賢者>を授かることの出来なかった落伍者だ。

 そんな僕に、娘さん(アイラ)を任せることは出来ないということだろう。

 おじさんの快活な笑顔を目に浮かぶ。あのゴツゴツした大きな手で分け隔てなく頭を撫でてくれるのが好きだった。実の父親以上に慕っていた。そんなおじさんも僕のことを嫌いになってしまったのかな・・・。

 感慨に浸っていた所でアイラが意識を現実に引き戻してきた。


「縁談が解消されたら私は誰と婚姻を結ぶことになると思う?」

「え?・・・もしかして」


 ブレイブハートは王国のためにサイエンス家と王族を守護する家柄だ。

 僕以外にアイラと婚姻するとしたら───。


「そう、ルーズさんよ。・・・私はあの人のこと好きになれないわ。嫌らしい目つきで見てくるし。テ、テオ以外にこ、婚姻するなんて嫌よ!」

「ははは・・・」


 アイラが顔を真っ赤にして抗議している。僕も気恥ずかしくなって鼻をポリポリする。僕たちは黙り込んでしまう。


「お次の方どうぞー!」

「───あっ、順番回ってきたね。行こっか」

「う、うん」


 いざ乗り込もうとしてきた所で、柄の悪い年上の男───冒険者3人組が割り込んでくる。

 冒険者達は粗末な革鎧に小剣を装備している。


「ちょっと、ちゃんと順番を守りなさい!」


 冒険者達はニヤニヤしながら小馬鹿にするように返事をしてきた。


「いやぁ、すまないな。至急の依頼が入ってな譲ってくれないか。姉ちゃん。───それに連れは外れスキルのテオドール君じゃないか。約立たずのお前が冒険者である俺様に順番を譲ってやるのが世のためじゃねえか?ほれっ、皆様のために最後尾に並んだらどうだ?」


 勝手に割り込んできて最後尾に並び直せって。そんな理屈がまかり通るなら僕は一生馬車に乗れないじゃないか!

 ───それにこの人達はちっとも急いでいる雰囲気がない。これは僕達をからかいたいだけだ。そんな粗末な装備でどこに行く気なんだ?

 言い返そうとした所で、アイラが割って入ってきた。


「そんなみすぼらしい装備でどこに行くのですか。その程度の風格で至急の仕事を割り振る間抜けな冒険者ギルドなんておりませんよ」

「あ?」


 自分が何を言われているのか分からず、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしている。

 そんな間抜けな冒険者はお構いなしでアイラの毒舌は続く。


「そもそも体を鍛えたらどうですか?そんなにはみ出たお腹でどこに行こうと言うのですか? あなた達こそ薬草摘みから出直しなさい!」

「ふ、ふざけんじゃねえぞ・・・!」

「だ、誰がブサイクなオークなんて言った!」

「このメスガキが!覚悟しろ!!」


 3人共、顔を真っ赤にしてたどたどしく小剣を抜く。

 アイラはスラリと長剣を抜く。表情は氷のように冷たい。

 マズイ、このままじゃアイラが冴えない冒険者を血祭りにしちゃうよ。

 僕が介入する。───ガトリングガン使うの?いやいや、あれは人に向けて使っていいスキルじゃないでしょ。

 ・・・石投げ。石投げだったら安全だよね。それで駄目なら電撃系の魔法を使えばいいでしょ。


「待て、3人がかりで女の子に剣を向けるなんて卑怯な奴らだ。僕が相手だ!」

「え、ちょっと!?」


 ロッドを構えながらアイラの前に立つ。冒険者と相対する。


「へっ、外れスキル持ちの後衛職が前衛職が勝てると思っているのか?先に約立たずから懲らしめてやるよ」


『ロストテクノロジー』


 ボソリと呟くと、後ろのアイラが慌て出す。


「ガ、ガトリングガンは駄目だからね!」


────────────────────

LV2

使用可能テクノロジー

 ▼投石▼

  ガトリングガン

────────────────────


「投石!」

「ぷぎゃっ!!!!!!」


 ヒュンっという乾いた音が響き渡る。

 音が聞こえてきた頃には冒険者に着弾し冒険者ごと壁にめり込んでピクピクしている。


「え・・・」

「うそっ・・・」


 僕とアイラは二人で顔を見合わせた。

 『投石』って外れスキルじゃなかったのか・・・?

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