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テオドール VS 魔族

「あれ、魔族だよな」

「何してるのかしら」


 観客は不安げに上空を見つめる。闘技場にいる衛兵も油断なく上空を注視する。

 魔族は旋回をやめてリングの真上でとどまっている。そして手を掲げると光の網が形成され地表に向かって投げつけると、光の網は『キン』と金属のような音を立てて、光の檻に形状を変えた。


「わぁーっ!!!!!」


 ギャラリーが事態を認識しパニックになる。

 光の網は10m四方の檻となってギャラリーを分断し、閉じ込められた人々は檻をバンバン叩くが出られない。


 そんな情景を見た他の観客は出口に殺到するが、そのせいで詰まり出ることが出来ない。そこに魔族が光の檻を投げ込まれ人々は閉じ込められ退路を塞がれた。観客がより深刻にパニックになっている。


「ガハハハ、大漁大漁」


 そんな光景を満足げに魔族が眺めている。


 対応が遅れていた衛兵や冒険者が弓や魔法で応戦する。


「斉射、ッテェェェ!」

「ライトニングボルト」

「フリーズアロー」


 弓と魔法による集中砲火が魔族に向けられる。しかし魔族は慌てた様子もない。先程から展開していた光の網を自身の正面に向けて展開する。弓と魔法が光の網に着弾すると『キン!』と高音の金属音を立てて弾き返されてしまった。


「そんな、攻撃が効かないなんて」

「私の必中の弓が」


 弓や魔法を放った冒険者達が悲鳴を上げる。

 魔族は漁業でもするかの如く光の網を投擲し、マンハンティング(人間狩り)を再開する。


「何なのよあいつ・・・」


 アイラが困惑しながらつぶやく。

 魔族に敵意があるのは間違い。しかし殺意があるようには見えない。殺意があるなら殺せばいいだけだ。観客を閉じ込めるなんて回りくどいことをする必要はない。

 魔族の思惑は分からない。しかしこの状況を見過ごすことは出来ない。


「アイラ、あいつを倒すよ」

「分かったわ」


 生半可な攻撃はヤツには通じない。叩き込むなら最大火力だ。


『ガトリングガン!』


 今やってるのは決闘ではなく戦闘だ。例のキュイーンという甲高い回転音と共に音速のツブテが射出される。

 着弾すると鐘を叩くような甲高い音が闘技場全体に鳴り響き、光の膜をツブテが貫通する。


「ウオッ!?」


 あと少しの所で魔族が左側に移動し避けられてしまった。ガトリングガンの射角をずらすがそのまま急降下してくる。射角が下がったせいでガトリングガンを放てなくなった。このまま放つとギャラリーに誤射する。魔族が僕がガトリングガンを放ってこないことを怪訝そうな顔した後にニヤリとする。バレた。


「ニンゲンはお優しいねぇ!」


 魔族が何かを詠唱すると爪が1m程のびる。腕を振りかぶり突っ込んできた。ショートソード抜刀して受け流そうとするが、ハンマーで叩かれたような衝撃が腕から全身に伝わる。一撃で手が痺れ、先にショートソードが根本から折れてしまった。

 急反転してもう一度、魔族が突っ込んでくる。凌ぐ方法がない。ヤバイ!


「テオは私が守る!」


 アイラが割って入り、斬撃を受け止める。


「ほう、ニンゲンにしてはやるじゃねえか」


 面白がる魔族。アイラも爪の衝撃を受けたためか手が震えている。アイラのお陰で少しだけ考える猶予が生まれた。


 何が出来る?何が有効なのか?まずギャラリーを巻き込むのは論外だ。だから誤射の恐れがある『ガトリングガン』や『火炎放射』のように飛び散る攻撃はダメ。となると近接攻撃を仕掛ける必要がある───だとしたら!


『パワードスーツ!』


 全身にプロテクターを纏う。総重量は増したはずなのに劇的に身体が軽くなる。

 魔族が宙を旋回し三度目の斬撃を仕掛けてくる。先程と異なりスローモーションで時間が流れる。

 アイラが斬撃を受け止めほんの少し魔族の動きが鈍る。その隙を見逃さず魔族のボディに渾身の右ストレートを叩き込む。


「グハァッ!?」


 魔族は錐揉み状態になりがら壁に叩きつけられめり込む。流石にこの一撃は堪えたらしくフラつきながら立ち上がる。致命傷に至らなかったが確実にダメージを与えた。


「くそっ、計画が丸つぶれだ。人間なんぞに本気を出さねばならぬとは。後悔しながら死ね!」


 魔族が懐から人差し指ほどのガラスを取り出す。ガラスの中には紫色の液体が入っている。ガラスを首筋に押し当てると『プシュッ』と空気が抜けるような音がすると、紫色の液体は体内に注入された。すると魔族の体は筋肉隆々になり、2倍程に膨れ上がれ、穿いていたズボンが短パンみたい見える。全身から魔力が放出されて見るからに強そう。


「嘘、まだ強くなるの・・・」


 想定外の事態にアイラが呻く。気圧されている。

 魔族が僕達に向かって手をかざし、魔力弾を放ってきた。

 アイラが反応しきれずに躱すことが出来ない。僕がアイラの前に立ち、両手をクロスして正面から受け止めた。全身に襲いかかる衝撃。仰け反りそうになるのを必死に堪えながら魔力弾を弾き飛ばした。


『パワードスーツが過負荷状態になり強制解除します』


 プロテクターが解除され身体は鉛をつけたように重くなる。次同じ攻撃をされたら全滅必須だ。

 しかし次の攻撃がやってこない。優勢なはずの魔族の顔色もあまり良くない。何でだ?

 活路を求めて『モンスターサーチ』を使う。


──────────────

名称:マッスル(変身後)


HP:20000/20000


MP:10000/20000


属性:闇属性


  :特徴→素早さを除き身体能力が劇的に向上する。


  :弱点→変身状態ではMPを急激に消費し続ける。

      MPが切れると変身が解ける。


▲基本情報▼

古代技術を用いた肉体改造が施されている。

魔族が苦手とする太陽光に耐性を持っている。

――――――――――


 今求めていた情報をピンポイントでゲットして、アイラに向かって僕は叫ぶ。


「アイラ! あいつの変身は膨大な魔力を消費し続ける。ここを堪えれば僕達の勝ちだ!」

「なっ、何故そのことを!?」


 魔族がギョッとしたような顔で僕を凝視する。


「それは嬉しい話ね。・・・でも私たち耐えきれるかしら」


 アイラが弱気になってる。僕は勇気づけるように、フィジカルエンチャント(身体強化)の魔法をアイラにかける。

 

「身体が軽い・・・これならいけるかも!」


 アイラが魔族に向かって切り込みかかる。

 『パワードスーツ』ほどではないが、アイラの動きが格段に良くなっている。


「くっ、調子に乗りやがって。この!」


 羽虫を払うがごとく闇雲に魔族は手を振り回す。紙一重でアイラは躱し続ける。魔族の筋力は増強しているが、素早さが低下している。そのためフィジカルエンチャントがかかったアイラが躱し続けている。


『ガトリングガンのリロードが完了しました。再使用可能です』


 脳内に流れるシステムメッセージ。

 魔族の意識から僕は外れ、アイラを追っている。

 素早さが低下し、的が大きくなっている今なら誤射を恐れず『ガトリングガン』を使える。


「アイラ避けて!」


 アイラが右にずれる。僕は魔族と正面から相対し、射角が開いた。


『ガトリングガン!』


 不意をつく形をガトリングガンを全弾叩き込む。ツブテのケースが小気味よくカラカラと音を立てながら落ち続ける。


「クッ、グゥゥゥ」


 ガトリングガンの直撃で魔族が2m後ろに追い出され、仰け反りそうになっている。全身から出血している。そこで弾切れ。


「小僧、俺様をここまで追い詰めたことを後悔するんだな」


 魔族が飛翔し上空に留まる。両手を掲げると今まで見たことないような火球を生成し始める。魔法を何とかキャンセルさせたいが攻撃手段がない。・・・さすがに投石で魔族を倒せるとも思えない。何かないか!?


『ロストテクノロジー!』


────────────────────

LV8

使用可能テクノロジー

 ▼投石(LV6)▼

  ガトリングガン(LV4)

  火炎放射

  リニアレールガン(NEW)


 ▼パワードスーツ(LV3)▼

  ソーラー式外付け魔力ブースター(LV3)


 ▼衛星監視▼


 ▼光学迷彩▼


 ▼モンスターサーチ▼

────────────────────


 ぶっつけ本番だけど、使うなら新技しかない。


『リニアレールガン!』


 リニアレールガンを行使すると、僕の全身からバチバチと不規則に紫電が放出される。


「キャッ」


 紫電の余波を避けるために近くにいたアイラが慌てて距離をとる。

 紫電が右手の掌から放出され始める。力に指向性、輪郭のようなものを感じられる。

 右手を魔族に突き出し、左手で右の上腕部を支える。すると、右手の先から球体の紫電が回転しながら生成され、どんどん大きくなり2mサイズまで膨れ上がる。余波の関係でアイラはリングの外へ避難した。


「すごいわ。これならいけるかも」


 アイラが期待の眼差しを僕に向ける。

 時同じく魔族が形成した火球は20mサイズになり、その表面がマグマのように煮えたぎっている。

 魔族は僕が形成しているリニアレールガンを見て、慌てたように火球を射出する。


「人間よ、いい加減くたばれやれ!」

『リニアレールガン!』


 上空で真っ赤な火球と紫電の球がぶつかる。紫電が火球をぶち抜き魔族に命中する。


「くっそぉぉぉ、覚えてろよ!!!」


 魔族は捨て台詞を吐きながら紫電によって吹き飛ばされ───見えなくなった。

 そして沈黙が訪れ、魔族が形成していた光の檻も消失する。


「テオ兄さん!」


 キュリーが抱きついてくる。


「キュリー、無事かい?」

「テオ兄様は怪我ありはありませんか?」

「うん、まぁ平気だよ」


 体の節々が痛いが、あれだけの戦闘を行って五体満足でいられたことに感謝するしかない。

 アイラがペタリと座り込んでいる。脱力したように笑う彼女に僕も笑いかける。

 静かだった観客席が徐々にざわめきたつ。


「助かったのか・・・?」

「あの少年が助けてくれたのか・・・」

「お兄ちゃんありがとう!」


 観客席から感謝や囃したてる声、拍手で溢れかえった。

 みんな無事でよかった。

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