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消化試合と本当の戦い

 キュリーと喜びを分かち合っていると、場外にいるルーズ兄さんが意識を取り戻した。最初は周囲をキョロキョロとしてどうして自分がどこにいるのか分からない様子だった。周囲の歓声、リングの外にいる理由、状況を理解しハッとしたようにリングの上にいる僕とキュリーを見上げた。慌てながらリングに上がってきた。


「審判、やり直しを要求する」

「勝者はテオドールだ。判決は覆らない」


 誰がどう見ても、ルーズ兄さんの負けだ。場外に吹き飛ばされ、10カウント以上のあいだ意識を失っていた。敗北条件を2つも満たしている。

 納得いかないという表情で今度は僕達に抗議を始めた。


「紅蓮の賢者である俺が外れスキル持ちの弟に負けるわけがないんだ。一体どんなズルしたんだ!?」

「兄さんが外れスキルという『ロストテクノロジー』で魔力強化しただけだよ。僕は決闘に勝ったんだ。約束は守ってもらう。キュリーから手を引いてもらうよ」

「うるせえ。俺はお前なんかに負けていない」


 筋の通らない主張をくりかえす。

 僕がズルをしていると言うなら、ルーズ兄さんだって『紅蓮の賢者』という稀有なスキルを使用しているわけだ。それに専用の魔力増幅用の杖だって使用している。やっていることは魔力ブースターとなんら大差ない。

 正当性のない主張に観客席からも不満の声が漏れてくる。


「みっともないね」

「あんな男、玉の輿を狙う価値もないわ」

「弟の方が優れていたね」


 先程まで騒いでいたルーズ兄さんが大人しくなる。───いや、目が据わっている。懐から人差し指ほどの太さのある試験管を取り出して地面に叩きつけた。すると薄紅色の膜が生成される。


「俺を怒らせたお前が悪いんだからな」


そして朗々と詠唱を始める。この詠唱は覚えがある───賢者専用魔法フレアだ。

小規模ながらも太陽と同じ熱量を放出する魔法であり、放ったら最後消し炭すらも残ることはない。放たれたら僕に防ぐすべはないし、観客も巻き込むんじゃ・・・。


「キュリー、席まで戻って」

「・・・うん」


 不安げな表情をしながらキュリーは観客席の方へ向かう。

 ルーズ兄さんはこちらを気にした様子もなく詠唱を続ける。 


「フレアを唱えるのはいいけど、無防備すぎだよ」


 フレアはとても強力な魔法であるが弱点もある。魔力消費が激しく詠唱時間も長すぎる。例えば今みたいに僕(対戦相手)が魔法を唱えるとどうなってしまうのか。

 無防備なルーズ兄さんに攻撃をしかけるのも気が引けるけど、強力すぎる魔法を完成させるわけにいかない。ファイアボール生成する。


「だったらぶつけてみりゃいいさ」


 すると膜越しにニヤリと笑ってきた。よほど自信があるのか堂々として動じていない。

 こちらはフレアをどうにかしないといけないから、遠慮なく攻撃する。


『ファイアボール!』


 生み出した6つの火球は薄紅色の膜にぶつかると、何事もなかったように霧散してしまう。


「どうだ!俺様の研究成果は。あらゆる魔法を無力化し、ある程度の物理攻撃を防御可能だ。今のお前に何が出来るっていうんだ?クックック───フレアが完成するまで念仏でも唱えてろ」


 ん?要するに物理攻撃を仕掛ければ良いわけか。


『ロストテクノロジー!』


────────────────────

LV7

使用可能テクノロジー

 ▼投石(LV6)▼

  ガトリングガン(LV4)

  火炎放射


 ▼パワードスーツ(LV3)▼

  ソーラー式外付け魔力ブースター(LV3)


 ▼衛星監視▼


 ▼光学迷彩▼


 ▼モンスターサーチ▼

────────────────────


 修行の成果で各技能レベルは上がっている。使うスキルは───


『投石!』


 『投石』のレベルが上がって、石から青銅に変化している。結果、その硬度・スピードは今までの比ではない。


「ふん、そんな外れスキルが何になるっていう────ガハッ!」


 『投石』 石を射出すると形成されていた薄紅色の膜をぶち破り、ルーズ兄さんを再び場外へ吹き飛ばした。

 今度こそ完全に意識を失いピクピクしている。勿論フレアの展開術式も消失している。


 どうやら『投石』の威力は『ある程度』の威力ではなかったようだ。

 単発での威力だったら『ガトリングガン』ともひけを取らないからこそ『投石』を選択したわけだが。

 断じて手心を加えて投石をしたわけではない。


 ・・・それにしても何でルーズ兄さんはそんなにベラベラ喋るのかな。黙っていれば勝てたのかも知れないのに。それにしてもルーズさんの研究は凄いと思う───今回は相手が悪かったけど、いつかは評価されるのではないだろうか。


「勝者、テオドール・サイエンス!」


 もう一度、審判が勝利を告げる。

 それと同時に恒例のシステムメッセージが流れる。


『戦闘勝利により、ロストテクノロジーがレベルアップしました。使用可能スキルが追加されました』


────────────────────

LV8

使用可能テクノロジー

 ▼投石(LV6)▼

  ガトリングガン(LV4)

  火炎放射

  リニアレールガン(NEW)


 ▼パワードスーツ(LV3)▼

  ソーラー式外付け魔力ブースター(LV3)


 ▼衛星監視▼


 ▼光学迷彩▼


 ▼モンスターサーチ▼

────────────────────


 見慣れないスキルが追加されている。スキルの並び順から考えると恐らく攻撃スキルなのではないだろうか。

 どういうスキルなのかは検討つかないけど・・・。


 これで戦いが終わった判断して今度こそ大きく息を吐き、緊張をほぐす。

 後ろの特等席へ視線を向けると、今度はアイラがリングに上がってくる。


「テオお疲れ様。やったわね」

「お陰様でなんとか勝てたよ」

「これで悩みは全部なくなったわね。本当におめでとう」

「うん」


 アイラも本当に嬉しそうに、晴れ晴れとした笑顔を向けてくる。そんな笑顔を見てやっと勝った実感や心の荷が降りた気がする。感慨を耽ろうとした所で事態が急変する。

 ふと空を見上げると黒い点のようなものがあった。さらに暫く凝視していると点はどんどん大きくなる。

 僕が空に視線を向けていたためギャラリーも釣られて空を見る。


「おい、あれ何だ・・・?」

「鳥───人か?」


 目を凝らすと人型の背中に翼の生えた飛行生物であることが分かる。向こうから近付いてくるから段々その姿が鮮明になる。

 人間より一回り大きな体格。肌はやや浅黒く胸板は厚い。背中に生えた羽を力強く羽ばたかせている。───魔族だ。

 魔族が闘技場の上空で旋回している。

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