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人攫い

 ロストワールドへ続く街道。

 私、キュリー・サイエンスはテオ兄様を探してロストワールドを目指している。

 聞き込みで、『投石』でやられたという冒険者の話によると、兄様はロストワールドに向かったらしい。『体が壁にめり込んだ』とか、誇張表現も含まれていたが身振り手振りを交えて冒険者は語っていた。───きっと外れスキルを引いて兄様は酷く傷付いているはずだ。兄を慰めることが出来るのは私だけだ。


「お嬢ちゃん、一人でお出かけかい?」

「ヒッ・・・」


 茂みから肌の上に直接毛皮をまとった人達、山賊が10人以上現れた。身長が2m近い、装備も立派な男が話しかけてきた。


「近頃ここら辺は人攫いが出て物騒なんだ。なに、遠慮することはねぇ、俺様がエスコートしてやるぜ?」

「け、結構です!」


 私は顔を引きつらせながらジリジリと後ろにずり下がる。

 男はニヤニヤ笑いながら無造作に近付いてくる。

 ───テオ兄様、助けて!


◇ ◇ ◇ ◇


 インディさんに間借りしている部屋の一室。テオドールとアイラがいる。


「今度潜る遺跡はここなの?」


 前回の遺跡探索から数日が経つ。ヒストリアさんからのアドバイスに従い、暫くは遺跡に潜りながら自己鍛錬とロストテクノロジーを強化に励みたい。そのために『監視衛星』を用いて次探索する遺跡を決めた所だ。

 

「うん。未開拓の場所だからまた何かあるかも知れない。事前準備は怠らずにしよう」

「大賛成だわ」


 方針が決まった所でドアをノックする音がする。返事をするとインディさんが部屋に入って来た。


「おはよう、調子はどうかな?」

「おはようございます。お陰様ですこぶる調子がいいです


 インディさんがニコッと笑う。そして僕達の手元にある地図に目を向ける。


「次潜る遺跡は決まったのかな?」

「はい、今度ここの遺跡に潜ってみようかと思います」


 地図に✕マークを付けた箇所は遺跡の表記はない。───未発見の遺跡だ。


「ほほー、テオドール君はすごいな。また未発見の遺跡を見つけたのか。どうかね?テオドール君、教員教授になってくれんかね。君のような優秀な若者は貴重なんだ」

「僕のような若輩者が客員教授だなんて・・・。とてもありがたい話ですが、人に何か教えられる程の知識はございません。もっと遺跡に対する理解が深まった時にお願い出来ますでしょうか」


 客員教授とは、一定の知識を有した識者を学院、学会の講師として招聘する制度だ。


「うーむ、その謙虚さもまた捨てがたい。普通だったら、なりふり構わず飛びついてくるのだが」


 まだお世話になって数日なのだが、ことあるごとに客員教授にならないか勧めていただいている。ドロシーちゃん(娘さん)を助けたことに対するお礼のつもりなのかも知れない。身に余る話ではあるが。

 感慨に耽っていると真剣な表情でインディさんが別の話題を振ってきた。


「ここ最近、ロストワールドの外で山賊による人攫いが頻発しているから気をつけて欲しい。まぁ、君達なら問題ないと思うがね」

「人攫いですか・・・。衛兵はパトロールはしていないのですか?」


 人攫いは山賊が行う違法行為の一つだ。旅人の金品略奪を行い、旅人本人は奴隷として売り払われる。

 まだロストワールドに来て数日ではあるが、街の治安はすこぶる良い。街を巡回している衛兵はとても多い。

 

「勿論パトロールはしている。しかし、どういうわけか、あと少しの所で山賊共の消息が忽然と消えてしまう。だから捕まえることが出来ずにいるんじゃ」

「奇妙な話ですね・・・」


 何度も取り逃がしているのであれば、何か仕掛けがあるはずだ。何なのか分からないけど。


「だから君達も用心してほしい」

「分かりました。わざわざご忠告ありがとうございます」


◇ ◇ ◇ ◇


 石造りの部屋で上機嫌な山賊共が酒盛りをしている。部屋の隅には貴金属が無造作に積み重なっている。

 部屋には牢屋もあり、キュリー・サイエンスを始め、老若男女が囚われている。


「いやぁ、やっぱ仕事の後の酒はうめぇなぁ」

「他人から奪えば幾らでも手に入るんだ。略奪は最高だぜ」


 山賊たちがビール片手にソーセージを齧る。


「ひっく、おうちかえりたいよ・・・」

「きっと助けは来るわ。だから泣かないで」


 5歳位の女の子を私は抱きしめる。

 牢屋に閉じ込められている人達は全員、山賊共に攫われた人達だ。


「ギャハハ、助けなんてくるわけねえだろ。ここをどこだと思っている。俺達(山賊)のアジトだぜ」

「・・・」


 悔しいけど言い返せない。私達が奴隷商に売られるまでに助けが来る可能性は低い。そもそも私自身が今どこにいるのか分からない。


「大人しくしてるんだな。お前らは無傷の方が商品価値が高いんだ。売られた先でどんな扱いを受けるのかは知らんけどな。クックック」

「ひっぐ、おうち帰りたいよぉ・・・」


 女の子が泣き始める。


「静かに出来ねえのか!痛い目みてえのか!」

「えーん、えーん!!!」


 山賊の怒声に、本格的に女の子が泣く。

 山賊はアルコールが入っているためか自制が効いていない。

 お願い、誰か助けて!

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