表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/24

追放

スキル。

15才になると誰もが神から授かる特殊能力。

戦士のスキルを授かれば<戦士>になれる。

僧侶のスキルを授かれば<僧侶>になれる。


取得したスキルが人生を決めるといっても過言ではない。スキルによって就ける職業が決まるからだ。

そのため、誰にとっても15才は特別な年となる。───そう、15才を迎えた僕、テオドール・サイエンスにとってもだ。


「テオドール、お前には期待しているぞ」

「き、期待に添えるように善処します。父上」


 顔が強張るのを意識しながら返事をする。


「そう緊張するな。お前は自慢の息子なんだから自信を持て。レアスキルは約束されている」

「ええ・・・僕だってサイエンス家の一員です」


 父上───バニティー・サイエンスは僕がレアスキルを授かることを疑っていない。

 なにしろサイエンス家は、<賢者>の家系として名を馳せてきた家系だ。その血脈の一員である父上も兄上も〈賢者〉を授かっている。

 王族の信頼も篤く、王国設立以来サイエンス家は脈々と宮廷魔術師として重用され続けている。


 だからこそ僕は厳しい修行に明け暮れてきた。その名に恥じぬ人物でいなければならない。

 僕に授けられるスキルもまた〈賢者〉に違いない。

 ───もしも外れスキルを授かった日には信用問題に発展するだろう。


「あの御方、賢者バニティー様じゃない・・・?」

「渋みがあってかっこいいよね!」

「その隣におわすはテオドール様だな。聡明そうな御方だ」


 ここは王都の神託の祭殿。神よりスキルを授かる場所だ。

 誕生する英雄を一目見ようと周囲に人だかりが形成されている。

 目の前で悲喜こもごもの声が響き渡る。

 トリである僕の番が回ってきたとき人だかりの声援がピークを迎える。


「キャー!」

「テオドール様ー!」

「賢者が、賢者が誕生しますぞ!」


 周囲の声援に肩を竦める。修行に明け暮れてきたせいで人が多い場所は正直苦手だ。

 様々な思惑で〈賢者〉の誕生に立ち合おうとしているのだろう。


「ゴホンっ!・・・では神託を始めます。よろしいですかな?テオドール殿」


 コクリと頷く。

 それを合図に場が静まり返る。


「はい、・・・お願いします」


 周囲が固唾を呑んで見守る。父上だけが悠々と見守っている。

 自分の心臓の音がうるさくて仕方ない。今、この時ばかりは他の子同様に精神統一が出来ない。


「こっ、これはっ───!」


 机の水晶が今までにない色で───虹色に明滅しだす。

 前例のない事象に周囲がどよめき父上は確信するように笑みを深める。


「───神託が下りましたぞ。テオドール殿。・・・心して聞いてください」


 信託者の真顔を見て瞬時に血の気が引く。


「す、スキルは、スキルはなんですか!?」


 縋るように尋ねる。


「〈ロストテクノロジー〉です」

「え・・・?」

「〈賢者〉じゃない・・・?」


 にわかに周囲がざわめきたつ。


「『ろすとてくのろじー』って何だよ。聞いたことあるか?」

「・・・聞いたことないな。意味分からん」

「もしかして『外れスキル』・・・?」 


 情報が錯綜する。

 僕も思考が追いつかない。

 <ロストテクノロジー>

 一度も聞いたことはない。チラリと父上の顔を見ると───不機嫌そうに腕を組んでいる。


「信託者殿!<ロストテクノロジー>とは何なのだ!」

「わ、分かりません。私も初めて、前例の無いスキルでございます。使って確かめる他はございませぬ」

「テオドール!<ロストテクノロジー>を使え!」

「は、はい! 『ロストテクノロジー』」


 スキルを宣言すると、スキル詳細が分かる。


────────────────────

LV1

使用可能テクノロジー

 ▼投石▼

────────────────────


「・・・投石」


 覚えたスキルに唖然とする。魔法と全然関係ない・・・。


「投石が出来るそうです・・・父上・・・」

「それだけなのか!?」


 父上が鬼の形相になる。

 ────僕の授かったスキルは誰がどう見ても外れスキルだ。


「え・・・嘘でしょ・・・?」

「宮廷魔術師の息子が外れスキル・・・?」


 周囲の声が戸惑いから落胆───嘲笑へと移り変わる。


「幾ら宮廷魔術師の息子だからって───将来性ゼロね」

「あーあ、つまんないな。適当におだてりゃ甘い蜜を吸えると思ったのに」

「ふむ、ただの親の七光りであったか・・・」


 誰も彼もが僕に辛辣な言葉をぶつけてくる。

 そりゃ僕だって周囲の賛辞にリップサービスが含まれていたこと位は分かっていたさ。だからってこれはないんじゃないのか?

 今朝まで立派な<賢者>になるために修行を欠かしてこなかったのに・・・。

 やりたいことも我慢してきた。

 家の名に恥じぬよう、親の七光りだと言われぬように頑張ってきたのに!

 全部無駄だったのか・・・?皆に嗤われるためにずっと頑張ってきたのか???


「父上・・・、期待には添えませんでし────」

「黙れ!」


 父上の怒声に僕の言葉はかき消される。そして聞き慣れた別の声が割って入る。


「ヒャッハッハッハ。傑作だなテオドールゥ」

「あ、兄上───!」


 悠然と兄上が登場する。


「あの御方は・・・<紅蓮の賢者>ルーズ様だ!!」

「キャー、素敵!」

「ワイルド、抱かれたいわぁ」


 嘲笑から打って変わって、兄上ビッグネームの登場に周囲が再度沸きかえる。


「親父、だから言ったでしょ『兄より優れた弟はいない』って。<紅蓮の賢者>たる俺様に全て任せな」

「・・・次期宮廷魔道士の自覚を持て。その粗野な言動を改めればいつでも位を譲ってやろう」

「親父任せなぁ────おっとっと。お任せください。父上」


 兄上が慇懃無礼に挨拶する。ニヤニヤと僕を見る。


「で、この約立たずはどのように?」

「・・・我が家は<賢者>の家系だ。外れスキル持ちを席はない。即刻立ち去るがいい。出ていけ!」


 こうして僕は、サイエンス家を追放させられた。

 ・・・後に発行される家録サイエンス・ヒストリーにはサイエンス家最大の愚行として記されることになる。

チートコードを意識しすぎて、ジャイアントオーク相当の所まではほぼ全く描写をしてしまいました。

徐々に良い意味でも悪い意味で違いが出てくるので生暖かくお付き合いいただけると幸いです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ