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第七話 両断結界


 大扉を開いてボス部屋へと進む。

 足を踏み入れるとすぐに明かりが付き、見上げるほど大きな騎士が目に入った。

 巨大な椅子に腰掛けた体勢でも何メートルあるのか目測でははっきりしない。


「まさか、これが?」


 呟きに反応するように巨大騎士が駆動する。

 立ち上がると更に大きくなり、山を相手にしているような威圧感を覚えた。

 壁に掛けてあった特大剣を掴み、ゆっくりとした動作で構えを取る。


「やるしかないか」


 ディスクを浮かべ、結界刀を構える。

 そうして巨大騎士が本格的に動き出した。


「ゴゴゴゴゴゴゴゴ」


 特大剣は振り上げられ、そのまま叩き付けられる。

 動きは緩慢で読みやすいため直撃は避けられたが、特大剣による一撃は床を大きく破壊した。

 まともに食らえば一溜まりもない。

 蠅叩きにに狙われる蠅になった気分だ。


「こっちも喰らえ」


 五枚のディスクを投げ、特大剣を振り下ろした右手を狙う。

 当然のように四枚は魔法障壁に阻まれたが、火車のディスクが突破する。

 そのまま火花を散らして巨大な腕を焼き切り、片腕を落としてみせた。


「よし!」


 これで剣は振れない。


「ゴゴゴゴゴゴゴゴ」


 腕を落とされると巨大騎士は片足を大きく上げる。

 繰り出すのは床を踏み砕くほどの震脚。

 その余波は衝撃波となって襲いかかり、俺はすかさず周囲を結界で囲む。

 すると視界がゼロになるほどの無数の砂埃と瓦礫に晒され、それが音を立てて弾かれていく。


「俺の結界じゃなきゃ今ので死んでたな」


 ただの震脚でこの威力だ。


「あーっと」


 衝撃波が過ぎ、視界も開けたころ。

 結界から見た光景は左腕で特大剣を振り上げた巨大騎士の姿だった。

 容赦なく振り下ろされ、結界に叩き付けられる。


「うぉおおッ」


 流石にこれほどの衝撃を受けたことはない。

 ないが、この結界はこの特大の一撃すらもなんとか耐えきってくれた。

 見上げた結界の天井にはひび一つない。


「流石ッ!」


 結界を解除。

 特大剣を落とし、跳んでその峰の上に降り立つ。

 そして勢いよく駆け上った。


「このまま!」


 峰を踏破し柄を超えて巨大騎士の手甲に足を駆ける。

 魔法障壁に阻まれたが、その上を行けば問題ない。

 足の裏で魔法障壁が反応するのを感じつつ、五枚のディスクを手元まで引き寄せた。


「行け!」


 飛ばすのは胴体の鎧。

 五枚のディスクが魔法障壁に触れ、水車が障壁を突破する。

 やっぱり部位ごとに魔法障壁の相性が違った。

 しかし、鎧に対してディスクはあまりにも小さい。

 水車が回り、幾ら傷つけても倒しきるには時間が掛かりすぎる。

 だから、肘の辺りまで駆け上った所で大きく跳び上がった。

 空中で鍔に水の魔法陣を刻み、結界刀の密度を上げる。


八重やえ


 刀身に結界を八枚折り込み、飛沫を上げる一撃を見舞う。

 繰り出した水の刃は視界を分かつように飛び、魔法障壁を突破する。

 それは兜こそ割れなかったものの、胴体の鎧を真っ二つにして過ぎた。

 頭や手足がまだ残っていても、それを動かすための動力源がなければ意味がない。

 縦に割れた胴体の鎧から特大のコアがこぼれ落ち、巨大騎士は機能を停止する。

 膝から崩れ落ちるように倒れ、大きな衝撃いと共に地に伏した。


「よっと」


 その様子を落下しながら見届け、自分は結界のクッションの上に落ちる。

 深く沈んで跳ね返り、見事に着地を決めてみせた。

 審査員が居たら十点満点の評価をくれていたに違いない。


「ははーは! 倒したぞ、こんなデカいのを! 一人で! ははー!」


 こみ上げる達成感とその余韻に浸りつつ、落ちた特大のコアの前にいく。

 これだけでも俺の身の丈を超えるほどの大きさだ。


「持って帰れないのが残念だな」


 転送自体は出来るだろうが、これの送り先がない。


「来た来た」


 そうこうしているうちに転移の魔法陣が足下に出現し、ダンジョンの外へと飛ばされる。

 青空の下に帰還を果たし、地に足を付けると風を受けてと清々しい気分になれた。

 スキルの新しい使い方も身につけられたし、得るものが多い一日だった。


「んー……ふぅ……コアを納品して帰るとするか」


 伸びをして脚を動かす。


「明日の朝食なんにしよう」


 いろんな料理を思い浮かべながら帰路についた。


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