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第三話 結界武器


 結界で作った刀、結界刀を片手に持ち、鋒を魔物の群れへと向ける。


「ガルルルルルルル」


 石畳の通路の先で低く唸る狼の魔物は牙を向き出しにして駆け出した。

 次々に床の石材を蹴って押し寄せるの見て、こちらも攻撃を仕掛ける。

 結界刀を構えて、群れの中へと突っ込んだ。


「ギャンッ!」

「キャウンッ!」


 刀の間合いに踏み込んだ順から切り捨て、更に前進する。

 鋭い刃は容易く牙を折り、肉を裂き、骨を断つ。

 まるで豆腐でも斬っているかのような滑らかな感触のまま魔物の命を絶つ。

 あっという間に最後の一体を斬り裂き、散った飛沫の一粒を刃が断った。


「ふぃー……凄い切れ味だ」


 手に握った刀の鋭さに畏怖すら憶える。

 間違って自分を斬ったらと思うとぞっとした。


「ん? あれ、もうこんなところまで」


 結界刀から目を離すと、自分の現在位置を把握する。

 すでにダンジョンの奥にまで到達していて、目の前にはダンジョンの主が待つ大扉がある。

 あれを潜って中のヌシを倒せば、足下に転移魔法陣が出て外へと転送される仕組みだ。

 まぁ倒せなくても来た道を引き返せば脱出は可能だけど。


「気合い入れるか。っと、その前に」


 結界刀を鞘に仕舞うと先ほど討伐した魔物たちの魔石化が始まった。

 魔石は石油に代わる重要資源で、冒険者の基本的な資金源。

 それは魔物の死体からなり、流れ出た血液すらも巻き込んで圧縮されて結晶化する。

 死体の数だけそれが起これば、魔石化は完了。

 周囲に幾つもの魔石が転がった。


「よっと」


 一つ足下の魔石を拾い上げて、雑嚢鞄ざつのうかばんへと突っ込む。

 その過程で、ふと思いついてスキルを発動した。

 結界で形作るのは一体の無骨な人形、またの名をゴーレム。


「ぐごごごご!」


 形作られた結界ゴーレムは起動すると音を立てて動き出す。

 とことこと歩き、魔石を一つ拾い上げてこちらに戻ってくる。

 イメージ通りの動きだ。


「よし、大成功。よくやったぞ」

「ぐごごごご!」


 軽く頭を撫でて、転送の魔法陣を結界で作る。

 そこに魔石を投げ入れさせれば、全自動魔石回収の完成だ。


「あと何体か作っとくか」


 数体ほど増やし、作業を効率化させておくと共に結界のソファーを作って腰掛ける。


「はぁー、楽ー」


 うんと体を伸ばして脱力する。

 その間にもゴーレムたちはせっせと魔石を運んでいた。


「……そう言えば」


 背もたれから身を離す。


「ここのボスって火の属性が弱点だっけ」


 事前調査はしておくもので直前になって思い出せた。


「こいつに刻んでおくか」


 鞘を持ち上げ、刀身を引き抜く。

 これに火の魔法陣を刻めば属性を付与できるはず。


「……鍔でいいか」


 柄と刀身を隔てる鍔に魔法陣を刻む。

 すると、勢いよく燃え上がり刀身が火炎を纏った。


「いい感じ」


 立ち上がって軽く構え、ボス部屋の大扉に向かって軽く振るう。

 そして準備運動のつもりで何気なく振るったそれが大惨事を起こす。


「いっ!?」


 虚空を斬った刀から火炎の刃が飛び、床と天井を削りながら直進。

 ボス部屋の扉を焼き切って過ぎ、待ち受けているはずのボスまで届く。


「グォオォオオオォオオオオォオオオッ!?」


 そして、特大の断末魔の叫びが轟いたかと思うと静寂が周囲を包み込んだ。


「……マジ?」


 足下に広がる転移魔法陣。

 ダンジョンにおいて行かれる結界獣たち。

 気がつけば青空の下にいて、俺はダンジョンの外に転送されていた。


「えぇ……」


 困惑しつつも自分の得物に目を落とす。


「とんでもない物を作ってしまったのかも知れん」


 魔法陣の効力が切れた抜き身の刀身は、太陽光を反射して鈍色に輝いていた。

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