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第九十四話 黒騎士との邂逅

第九十四話! このまま順調にクリアできるのか……? いや、そんなはずはない(反語)

「ライア! 前から6体!」


「了解! 『奇術師の画策トリックウィズトリック』」


「ナイス拘束……【ビッグロック】、『投擲』」


「「「キュォォォォン!?」」」


 『ダンジョンアタック』開始から14時間。僕らはあの後苦戦することも特になく、ただ近づいてくるモンスター達を殲滅しながら進み、なんと49階層まで来ていた。


 特に苦戦はしなかった……と言ったが、流石に1階層のように簡単に行き続けるはずも無く20階層くらいからは僕がモンスターを索敵しながらライアがそれを罠にかけ、そこを一方的に叩く……という戦法をとっていた。


「階層ボスもあんまり苦労しなかったしなぁ……」


「ほとんどラルク1人で倒してたからね、うん」


 階層ボスも同様、あまり苦戦することなく突破できてしまった……というか、今までの階層の中ではおそらく1番強いと思われる40階層のボスでさえ、ブラックオーガよりも弱かったのだ。


「でも確かこういうダンジョンは、50階層からレベルが跳ね上がるんだよね……」


「そうだよ、そうなんだよラルク! ようやくボクの出番ってことだね!」


 これもギルドの講習でちょこっと言われていたことだが、『フォーマルハウト』などのように階層が100階層以上あるダンジョンの場合、半分より前と後では攻略難易度が一気に跳ね上がり、出てくるモンスターのランクも一段階くらい上がるらしい。


 そういう意味でも2人とも体力をほとんど温存した状態でほぼ半分まで攻略できたのはいいことなのだが……流石にほとんどサポートしか任せていなかったライアは不満だったらしい。正直、思い返してみれば申し訳なかった。


「そうだね。その時はよろしく……あ、扉だ」


「じゃあ、さっさと階層ボス倒しちゃおっか」


 そんな軽いノリで49階層も痛手を負うことなく攻略し、僕らはついに50階層……ダンジョンの100階層のモンスターを最終ボスとするなら、いわゆる中ボスがいる階層まで来た。


 このダンジョンも『アークトゥルス』と同じくどんどん下へ下へと階段を降りていくタイプのダンジョンで、普通はある程度移動を行わないと下層へと続く階段のあるボス部屋のフロアにはつかないのだが……50階層は構造が特殊だった。


「あれ……? 降りてきたばっかりなのにもう扉?」


「あぁ、ラルクはこういうの見るのは初めてなんだね。『フォーマルハウト』とかの階層が多いダンジョンだと、50階層とか100階層みたいなキリのいい階層はこういう造りになってるんだよ」


 へえ、知らなかった……不思議だなぁ。ダンジョンは漂う魔力が偶然溜まった所に自然発生する……って言われてるのに、まるで誰かに作られたものみたいだ……なんてね。そんなこと出来るのは神様くらいのものだろう。


「じゃあ……開けるよ」


 今から挑むのは、中級ダンジョン『フォーマルハウト』の中ボス。どんな敵が出て来てもいいように警戒しながら、僕は恐る恐るボス部屋の扉を開く。すると、その中には……


「「人?」」


 円形の闘技場のような空間に、黒い甲冑を着た騎士が座り込んでいた。まるで誰かを待っているように、何かに腰掛けながら……ん?


「あれはっ……!?」


 その瞬間、僕の目にその騎士が腰掛けている()()がうつる。その黒い甲冑の下に敷かれていたのは……人の、生首だった。


(嘘…………だろっ!?)


 虚な目をしたそれを見て、全身に鳥肌が立つ。ライアも気づいたのか、思わず声にならない声を漏らしている。


 その間に僕たちを襲うことができたであろう黒い甲冑の騎士は、ただこちらを見つめて座り込んでいた。


 そして少しの沈黙の後、その空間に残ったのは生首に腰掛けてこちらを見ている黒い騎士と、戦慄する僕らと、張り詰めた空気だけだった。僕らはゆっくりと闘技場型のボス部屋の中に入っていく。


「……ラルク。本気で行かないと……まずい」


「うん。このモンスター、相当強いよ」


 そうやって話しながら、僕は一気に戦闘態勢に移る。『身体強化』はもちろん、『思考加速』『覚醒』『索敵』もフルで発動している。後ろを見ると、ライアの準備も完了しているようだ。


 そして、僕が攻撃を仕掛けようとしたその時のこと……!


「喰ら……」


『………………!!』


 その黒い騎士の眼光が紅く光り、僕らのことを凝視する。そしてそれと同時に、僕とライアは濃密なおぞましい感覚……『死』の気配を感じた。


「「ぁ……」」


 意識が飛ぶんじゃないかというほどの恐怖が、計り知れない程の重圧が目の前のその騎士から放たれて、僕らはその場に座り込んでしまう。それを見て、ついに目の前の騎士は立ち上がり……僕らにこう告げた。


『……脆弱な。この程度か……? 私を呼び出したのがこの程度の者共とは……立て、既に戦いの賽は投げられた』


 目の前に立ちはだかる圧倒的な強者。()()は、腰に携えた漆黒の剣を振り上げ、僕に振り下ろされて────


 side:アルト


「ラルクとライア……随分とまたすごいのを引いたね。運がいいのやら悪いのやら……」


 ダンジョン『フォーマルハウト』の外。既に100階層まで攻略し切っているため、ダンジョンの全てが固有スキルの()()()()となっている私は、ラルクとライアの試験を空間越しに見ていた。


「しかし、まさかあのモンスターが出るなんて……君たち、私が思っていたより強いんだね」


 2人が戦っているモンスター……名前は、『沈黙の黒騎士(アイヴァンス)』。50階層のボスよりも強い挑戦者が来た時のみ、稀に呼び出される……90〜100階層のボスクラスの強さを持つ、SSランクの魔物だ。


 さて、2人とも……君たちはこの試練、どう突破するかな?

ついに登場、SSランクモンスター! 2人はこの難関を乗り越えることはできるのか────!?

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