第八十八話 とんでもない置き土産
第八十八話! ラルクはまさかの大ピンチ!?
「「宝玉は俺のもんだぁぁあ!」」
「倒しても倒しても減らないな……なんでこんなに多いんだ!?」
ライアさんからのプレゼントのせいで宝玉に魔力が大量に注ぎ込まれ、その時に出た光で多くの人に僕……もとい宝玉の場所がバレてしまった。だとしたら当然、まだ持っていない人はこれを奪いにくるわけで……
「表裏!」
「一体!」
「同時攻撃かよ! ああもう処理が追いつかない!」
案の定、僕は沢山の受験者たち……数にしておよそ30名に狙われていた。……ん? 30名? 何かおかしい気もするが……今はそんなこと考えてる場合じゃない!
「こっちの相手でもしてろ! 『分身』!!」
「「「「多すぎだろ!!」」」」
僕はこのままではキリがないことを察し、『分身』を発動し30体の分身を出す。そしてそいつらに全員の相手をしてもらっているうちに……
(……よし、逃げよう)
僕は誰にもバレないように『隠密』を使いながらこっそりと逃げた。
side:アルト
「へえ。なかなかやるんだね、あの子」
自分の作り出した空間……学園と全く同じ広さと内装の試験会場を見ながら私はそう呟いた。
フィーズ曰く、
『あいつの近くに強い奴らを固めてくれ……あと、試験中盤でまだ宝玉を持っていない奴らもあいつの近くに送ってくれ』
と言われた時はまた私怨かと思ったが……フィーズの思惑が分かった気がする。しかし……
「34人目……結構な有能株もいたのにねぇ」
今年の推薦主席候補……フィーズの妹であるAランク冒険者・ライアを除けば、彼は既に34人もの受験者を気絶させ……あ、35人になった。
あのライアでさえ手を焼く……むしろ勝てないとさえ思わせるほどの強さ。彼ならSクラスに入れるかもしれないな……
「……そろそろ出口を出そうかな」
そう呟いて、私は試験会場から出るための出口……もとい、こちらの世界に帰るためのゲートを開いた。さあ、ラストスパートの始まりだ。頑張ってね、受験生たち……
side:ラルク
「……見つかったのか!」
大量の受験者たちに襲われ、なんとか彼らを撒いた後。僕は出口探しに行かせていた『分身』から、出口を見つけたという通達(腕を切り飛ばす)が来た。
「『陽炎』!!」
目の前がぼやけたと思ったら、一瞬で移り変わる景色。『陽炎』で移動した場所の前には……
「これが…….出口?」
目の前にある両開きの大きな扉。向こう側から眩いほどの光が差し込んできており、その先は見えないが……ここで本当に合っているんだろうか……?
(間違えてたらまずいけど……ここ以外に出口もなさそうだしな)
そう決心し、僕はその光の中へと足を踏み入れた。踏み入れたのだが……
(足場がない……!?)
その足を踏み切る前に、なんとか光の先に足場がないことに気づいた。危ない、やっぱり罠だったのか……僕は少しほっとしながら、踏み入れた足をこちら側に戻そうとする。しかし。
「……抜けない、だって!?」
足をこちら側に引き戻すことが出来なくなっている!? このままじゃどうしようも……
「見つけたぞ! 出口だ!」
このタイミングで他の受験者まで! 動けないことがバレたら、まだ宝玉を持っていない人に奪われてしまう可能性もある……前門の罠、後門の受験者……くそっ! この中に入るしかないのか!
「もうどうにでもなれぇぇぇえ!!」
僕は勢いよくもう片方の足で地面を踏み切り、眩いまでの光を放つその空間に飛び込んだ……と思ったら。
「……浮いてる……!?」
気づくと僕は、その光の先にあった空間……何もない真っ暗な空間の中を、佇んでいた。周りを見渡しても何もみえない……しかし、そんなところのはずなのに自分の姿はしっかりと認識できている。不思議な場所だな……
「なんなんだ、ここは……?」
どこまでも真っ暗な空間の中、虚空に向かって僕は問いかける。もちろん返答なんて返ってくるはずもなく……
「ここは私が作り出した空間だよ……ちょっと話したいことがあってね」
「え、誰かいるんですか!?」
背後から聞こえてくる返答に対して、僕は思わず驚いて声をあげてしまう。てっきり僕以外には誰もいないと思ってたのに。僕は振り向いて、その声の主に向き直る。するとそこには……
「久しぶり……2週間ぶりかな。あの時はフィーズが迷惑かけてごめんね」
この空間とは似つかわしくない真っ白な髪を靡かせた、青い目をした16歳くらいの見た目の女性……
「アルトさん……?」
「正解。忘れてたら泣いてたよ」
『神竜の翼』のパーティーメンバーにして、Sランク冒険者であり『神出鬼没』の二つ名をもつアルトさんがいた。確か、聞いた話だと空間を操作するとかそんな固有スキルだった気がする……
なるほど、固有スキルの能力でこの空間を生み出しているのか……ならお互いの姿が見えるのも納得だ。ある程度操れるのだろう。
「どうしてこんな所に呼んだんですか? それに、ほかの受験者たちは……」
「まず一つ目。ほかの受験者たちは、合格した人……つまり、宝玉を持っていた人はフィーズの所へ、不合格の人はシェイラの所へ送ってるよ。君は例外でここに呼んだんだ」
「例外、ですか……?」
つまり、僕は本来フィーズさんのところ……つまり、合格者たちの集う所に転送されるはずが、この空間に呼ばれたってことか。でも一体、どうして……?
「そう、例外。その話はもう1人が来てからやるから……あと少し待ってて」
「もう一人……? 一体それはどういう……」
だめだ、何を言ってるのか分からない。何で僕は呼ばれたんだ? もう1人って一体誰なんだ……? そう僕が少し混乱気味に考えていると。
「そんな話をしてる間に、もう片方の子が来たみたいだよ……君ももう会ったはずの子さ」
アルトさんがそう言うと同時に、暗闇の中から急に見覚えのある奇抜な格好の少女が出てきた。って、この人は……!
「ライアさん!? どうしてここに?」
「あの時の子だ! ここは一体……?」
そこには、困惑した顔を浮かべているライアさんがいた。
「2人とも揃ったね……さて、話を始めようか」
まだ状況の把握ができていない僕らを置いてけぼりにしたまま、アルトさんは僕らにそう言って話を始めた……一体、何を言われるんだ……!?
アルトさん再登場! なんの話が始まるのか……!




