第八十二話 ドキドキお泊まり会・後編
第八十二話! 念のため言っておきますが、フォンセはヒロイン枠ではございません!!
「……もう朝か」
その言葉と共に、僕は目を覚ました。既に寒気や体の怠さは消え、自分自身のおでこを触ってみても熱が出ている気配はない。どうやら熱は収まったみたいだ。
横にいるフィリアもフォンセもまだ眠っている……それものそのはず、冒険者の朝は早いのだ。その方が活動できる時間はながくなるし、いい依頼を取られる前にギルドに行く必要がある。
そんな習慣は熱が出た翌日もお泊り会の後の日でも変わらないようで、僕の意識はすぐに覚醒していった。
(……起こさないでおこうか)
僕は横ですやすやと寝息をたてながら幸せそうな顔で寝ている2人を見て、そっと思う。
「ありがとう」
そう、隣の2人に聞こえないほどの小さな声でつぶやいて僕はそっとベッドから出た。
……さて、何をしようか。あの2人はまだ起きる気配がないし、かと言って1人でやることも体力づくりの筋トレくらいしかない。
(……朝ご飯でも作ろうかな)
昨日はフィリアが作ってくれたし、フォンセは僕の看病で疲れているだろうし。そう思って、僕は王都の街に買い出しに向かった。
王都の朝は賑やかだ。まだ午前6時だというのに既に商店街の店はほとんど空いており、人の行き交いも僕の村なんか比にならないほど多い。
しかしそんな王都の中でも一際人が集まる店がある……それは。
(カトーナノカ堂……!)
いわゆるスーパーマーケットと呼ばれている、村にはなかった店。3階建ての石造りという大きな店構えをしていて、店頭で物を売る露店形式ではなく店の中に入って商品を選ぶ、いうなれば武器屋や服屋のようなお店。
それだけでも十分すぎるほど異常なのだが……この店のすごいところは、なんでも売っているのだ! 食料品はもちろん、防具、ポーション、魔石、魔道具、そのほかにも服や武器など……その全てが安価で売られている。
その品質も専門店に比べれば少し劣る……と言った程度で、値段や手間を考えればこちらの方が秀でているとさえ言えるほど。万引き対策も冒険者を雇っているから万全だ。恐るべし、カトーナノカ堂……!
「お願いします」
そこで僕は卵やオーク肉のベーコン、野菜を購入したのだった。
僕はそのあとフィリアの家に帰り、目玉焼きとコールスローサラダを作っていると……
「ラルク、まだ寝てるにゃ……私がやるにゃ」
「……ラルク……? 寝てないとダメだよ……」
まだ眠そうな目を擦りながら、フォンセとフィリアが起きてきた。心配してくれているのか、2人とも優しいな……
「もう大丈夫! 熱は収まったから!」
心配をかけないよう、元気な声でそう返す。
「本当にゃ……? でも確かに顔色はマシになってるにゃ」
「大丈夫ならいいけど……無理しないでね?」
「わかってるよ……できた! ほら、食べよう」
そんなことを話しているうちに、朝ごはんが完成した……といっても、目玉焼きとサラダだが。3人分の朝食をそれぞれ皿に盛り付けて出す。美味しくできてるといいけど……
「「いただきます」」
そうやってフォークで目玉焼きを食べるフィリアとフォンセ。その反応は……
「「…………!?」」
あれ、何も言わない……? もしかして、微妙だったのかな。失敗した覚えはないけど……
「どう……かな?」
僕は恐る恐る2人に感想を求める。すると……
「美味しい……」
「これ、私より上手にゃ……!?」
驚いたように2人が言う。あれ、でも僕そんなに料理は得意じゃなかったはずだけど……そう思って、僕も目玉焼きを食べてみる。すると……
(……完璧じゃん!)
トロトロ半熟の黄身に、調味料で味付けした白身がいい具合に合わさって美味しい。まさに模範的な目玉焼きって感じだ。でも一体、どうしてこんなに……
(これも『器用』のステータスの影響か……!)
多分、器用のステータスが高くなっているから、そのおかげで焼き加減や調味料の量などを無意識のうちに調整していたんだろう。ステータスって凄いな、やっぱり……
僕らはそれを黙々と食べて朝食を終え、お泊まり会は終了したのだった……そのあと、フィリアと2人で買い物に出かけたのだが、その時の話はまた機会があったらすることにしよう。
(ふぅ……今日も疲れたな)
お泊まり会から2週間後。僕はこの2週間、有り余る時間を使って、ギルドの訓練場やファイルガリア平原で毎日ノーマルスキルの特訓や、スキル複合発動の練習をしていた。
そして今日も特訓を終えて、ギルドの訓練場から帰っている途中……急に視界が何者かによって塞がれた!!
(何だ!?)
唐突に視界が暗転し、思わず動揺する。そして後ろから、僕の視界を塞ぐものはこう囁いてくる。
「だーれだ?」
その声はまるで小さい子供のような声だった。……というか、その声でもう誰か分かってしまった。
「……なんで王都にいるんですか、シルクさん」
「やあ! 久しぶりだね、ラルク君! 来ちゃった……ってやつさ!」
「そんな軽いノリで王都に来ないでくださいよ……」
呆れたようにそう呟きながら僕は後ろを振りかえり、その声の主を見る。そこにいたのは、見た目年齢8歳のエルフ……『鑑定屋シルク』の店主、シルク・エフィーがいた。
まさかの王都編でもシルク参戦────!?
【作者からのお願いです!】
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