第七十七話 フィリアのドキドキお料理教室
第七十七話! ほのぼのギャグ回です! フィリアの実力やいかに……!?
「……よし、もう体は大丈夫だろう。どうする? 泊まっていくか?」
「いえ、大丈夫です。お気遣いありがとうございます……」
僕はフィリアとグレアさんの屋敷に帰った後、グレアさんに体の具合を診てもらった。結果、もう一人で活動しても問題ないくらいには回復していることが判明した。
グレアさんは大事をとってもう一日屋敷に滞在するように言ってきたが、あまり迷惑をかけるのも悪いので断った。
そしてもう帰る旨をフィリアに伝えると……
「そっか……。って、そうだ! 私が借りてる家に遊びに来ない!?」
フィリアが借りてる家……? 少し……というかかなり興味がある。
「行っても大丈夫? もうお昼過ぎてるけど」
「全然大丈夫! なんなら私がお昼久しぶりに作ってあげるよ!」
フィリアの手料理か……家族ぐるみで仲がよかったため、たまにお弁当を持ってきてくれる時はあったが、あれは確かフィリアのお母さんが作ってたものだし……フィリアって料理できたっけ……?
「じゃあお言葉に甘えて」
まあいいか。フィリアが作る料理は食べてみたいし。
「じゃあ、今から行こう! すぐ行こう! 明後日までは私もお休みだから!」
そう楽しそうに言って僕の体を抱えるフィリア……って! これ多分、また僕を持って跳んで行く気じゃ……!!
「わかった! 行くからさっきのはもうやめて!!」
「えー。あっちの方が速いのに」
「僕の心臓が持たないよ!?」
いつからこんなに脳筋になってしまったんだ、フィリアは。どこかの半裸筋肉が脳裏に一瞬映ってしまったくらいだ。
「じゃあ歩いていこっか……」
「うんそうしよう、それがいいよ」
なんで落ち込んでいるんだ、フィリア……頼むからこれ以上あの変態筋肉に近づいていかないで……そんな少しの不安と共に、僕はフィリアの家へと向かっていった。
壊れた街を歩くこと数分。僕たちがファフニールやドーヴァと戦ったところの反対側に進んで行くにつれて壊れている家はだんだん少なくなって、ほぼ真反対とも言える位置にあったフィリアの家に着く頃にはほとんどの家が無傷と言っても過言ではない状態だった。
「ここだよ」
そして着いたフィリアの家は、案外普通の一軒家───といっても僕の家やフィリアが住んでいた家よりかは大きい───だった。
外見は普通の木造で、白い外壁のしっかりとした作りの家だった。
「ここに1人で住んでるの?」
「同い年のお手伝いさんが来るけど、基本は私1人だよ。仲良くしてもらってるんだ」
どうやら僕の幼馴染は齢10歳ちょっとにして一人暮らしを始めているようだ……。
「入って入って! 家にラルクが来るのは久しぶりだなぁ」
少しフィリアの発言に驚いていると、フィリアに入るように促されたので、それに従ってフィリアの家に入っていった。
「いらっしゃい! ここが私の家だよー!」
「へぇ……ここがフィリアの家か」
フィリアの家の中はきれいに掃除されており、家族との写真や人形などが置いてある至って普通の女の子の家……といった感じの内装だった。なんだかフィリアの部屋を思い出すな……そう思って中を見渡していると。
(僕との写真……)
家族との写真の横に飾ってある一枚の写真。そこには僕との2ショットがあった。あれは確か、フィリアのお父さんが街の魔道具屋さんでカメラを買った日に撮ってもらったものだ。飾ってくれてるのか、嬉しい……
「ラルク、何食べたい……って、あぁぁぁぁあ!! 見なかったことにして!!」
あ、見てるのがバレた。フィリアは急いでそれをどこかへやろうとするが……
「きゃあっ!!」
焦っているせいか、写真入れを落として割ってしまった! ガラスの割れる音が響き、写真は窓から入ってきた風にあおられて……
「「あぁーーーっ!」」
家の外へ飛んでいってしまった。唖然とする僕。今にも泣きそうなフィリア。僕はそっとフィリアに近寄って、背中をさすりながら言う。
「また撮ればいいから……」
「ぁ、うぇ……うん……また撮ってくれるの?」
だからその上目遣いはもう反則だろ。断れないよ。断るつもりなんてないけど。
「うん。僕もしばらく王都にいるだろうし、いっぱい撮れるよ」
「やったぁ……じゃ、じゃあご飯にしようか! 何がいい?」
「え、えーっと……」
これは難しい質問だ……難しいやつを答えたらフィリアに負担がかかるし、簡単過ぎると逆に気まずい……どうしようかな……いや、ここはやはりビシッと言おう。
「じゃあ、フィリアの好きなものが食べたいな」
はい。僕は弱気なやつです。好きなだけ罵って下さい。
「そう? じゃあ野菜炒めで! すぐ作るね!」
そう言ってキッチン(カウンターキッチンになっている)に入っていったフィリア。さて、どんな風に料理を作っているかな……っ!?
(唐辛子……!?)
野菜炒めに唐辛子!? しかも結構量が多い……大丈夫かな……そう思って見ていると。
(砂糖……っ!!)
野菜炒めに砂糖!? フィリア、いや、フィリア!? ちょっとだけならわかるけど、多くない? ねえ、量が多くない!? 正気に戻って!? もうこれ以上は……
(マキシ○ム1瓶……だと……)
あれは……うちの村の名産のマ○シマムじゃないか! 野菜炒めに入れたら美味しいけど、1瓶まるごといくのはおかしいよね!? 僕は不安になってきて、フィリアにある質問をする。
「フィ、フィリア? 料理ってどのくらいしたことある?」
「えーっと……小さい頃に一回、王都に来てからはお手伝いさんがやってくれてるよ」
なるほど、ほぼ初めて……と。お父さん、お母さん、先立つ不幸をお許しください。
「ラルク……初めてだけど、食べてくれる?」
言い方ぁ! 僕はそれにNOとは言えないよ!!
「うん……トテモタノシミデス」
「よかった! じゃあ盛り付けるね!」
そして二つのお皿に盛り付けられて運ばれてきた野菜炒め。それが僕の眼前へと据えられ、僕は覚悟を決める。
(……行くぞ)
恐る恐るその物質にフォークを伸ばし、口に入れる。その瞬間、信じられないほどの甘ったるさと火を吐くほどの辛さが口の中を支配し、頭の中に声が響く。
『スキル【気絶耐性】が発動しました……あ、倒れ……』
ルキアさんの声が聞こえ、その瞬間に僕の意識は途絶えた。
side:???
雇い主の部屋に飾られている、男の子(恐らく彼氏だろうにゃ〜〜)との2ショット写真を拾ったから、お仕事ついでに届けてあげようとお家に行ったんだけど……
「お邪魔しまーす。フィリア〜! 写真届けに来たよ〜! って、うにゃあ!?」
そこには、フィリアと写真の子が倒れていた────!?
主人公とヒロインが共に死亡したので……
『ノーマルスキルで世界最強!』完結です────!
(まだ続きます)




