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第七十五話 フィリアと王都散策……? 【第二章エピローグ】

第七十五話! 第二章エピローグです!!

 メイドさんに案内され、グレアさんの家……と言うか屋敷の門から外に出た僕とフィリアは王都を見て回ることにした。


 魔物の襲撃によって、元は沢山あったはずの建物の大半が崩れており、酷いところでは瓦礫の山としか形容のしようがないようなところもあった。


 家を失い、店を失い、酷い人は大切な人も失った多くの人々も意気消沈といった感じで、悲しみと不安が入り混じった空気が街には広がっていた……。


 そんな街の中を歩き、僕たちは冒険者ギルドに到着した。その前にいたのは……


「「あっ、ラルク! 生きてたんだね!」」


「マール! リール! 勝手に死んだことにしないで!?」


 体の数箇所に包帯を巻いた、マールとリールが立っていた。よかった、2人とも重傷は負ってないみたいだ……


「ラルク、あの2人は……?」


 あれ? フィリアの声のトーンが少し低い? どうして……まぁいいか。


「あの2人はマールとリール。一緒に王都に来たんだよ」


「私はマール! よろしくね!」

「私はリール! よろしくー!」


「よ、よろしく……息ピッタリだね」


 うん、フィリア。とりあえずなんで剣に手をかけているのかな? 一旦落ち着こうか。


「あー、マール、リール? 僕たちこれから行く所があるから……」


「「そうなんだ! じゃあ、また後でねー!」」


「よしフィリア、行くよ!」


「え? えっ?」


 僕は戸惑うフィリアを連れて、そそくさと冒険者ギルドの前から立ち去ったのだった……




「フィリア、どうかしたの?」


「……知らない」


 あの後適当に王都をぶらぶらしていたが、なかなかフィリアの機嫌は直らなかった。何を聞いても『知らない』としか言わないし、ずっとそっぽを向いている……本当になんでなんだ?


 そんなことを考えて歩いていると、ついに前に来た広場まで着いてしまった。どうやらいつも通り露店はやっているようだ。お、あれは……


「……あ、フィリア! ほらあそこ! クレープ売ってるよ!」


「えっ!? クレープ!? ……あっ。別にいらない……」


 あ、手応えあるなこれ。そう思った僕は、店の前まで近寄って……


「じゃあ僕だけ食べるけど? すみません、クレープ1つ!」


「あいよ! 銅貨2枚ね!」


 僕はお金を払い、クレープを購入する。普通に美味しそうだな……


「あぁ……」


 フィリアから惜しむような声が漏れ出る。そんな声を出すくらいなら意地を張らなきゃいいのに……でも僕にとっては好都合なんだけど。


「それじゃ、いただきまーす」


「あ、あぁ……」


 ものすごく悲しそうな顔をしているフィリアを横目に、僕はクレープを食べる。


 ……これこれ!! モチモチの皮にふわふわしたクリームが合わさって、しかもその中の果物の甘みが広がってものすごく美味しい! というかすごく甘い! それがいい! 口の中が幸せだ……!


「フィリア」


 僕はフィリアの名前を呼び、自分の食べたクレープをそっと差し出す。するとフィリアは一瞬躊躇ったが、クレープの誘惑に耐えきれず……


「うぅぅ……いただきます!」


 一口でいっぱい食べるね!? 結構な量を食べられてしまったが、フィリアが満足気な顔をしているからまあいいか。って、あ……


「フィリア、クリームついてる」


 ほっぺにクリームが付いていた。このまま歩くと笑われてしまう……危なかったな。そう思いながら拭き取ったクリームを舐める。そしてフィリアの方をみると……


「……っ!! あ、ありがと……!」


 フィリアが顔を真っ赤にして、そっぽを向いている。なんだこの可愛い生き物は。僕の顔も赤くなっているのを感じる……


「2人ともお熱いねぇ……」


「「はわっ!?」」


 店の人に見られている!? 恥ずかしい……!! で、で、でもまあとりあえずフィリアの機嫌が直ったからよしとしよう……そんなことを思っていると。


「……っ! ラルク! ついてきて!!」


「え、ちょ、フィリア!?」


 唐突にフィリアが僕の手を握って……ん? そのまま担いで走り出した!? 何をする気だ!?


「行くよーー!!」


 思いっきり地面を踏み込んで、跳んだあぁぁぁあ!!


「えっ!! うわあぁぁぁぁぁぁあ!!」


 その日、王都の広場に僕の叫び声が響き渡った。





 どうも、ラルクです。ただ今幼馴染の美少女に担がれながら、瓦礫となった王都を飛び回っています。絵面がものすごいことになっていますが、僕は大丈夫なので安心して下さい……


「……ねえ、フィリア、これどこに向かってるの?」


「私の好きな所!」


 はい。行き先は結局分かりませんでした。僕は全身の力を抜き、フィリアに身を委ねた……そんな状況になっておよそ3分。王都の城壁さえ剣を突き刺して乗り越え、僕らが入った方向とは反対の方に出て行って……


「着いたよ!」


「うっぷ……ここは?」


 少しの吐き気を覚えながら僕は周りを見る。するとそこには……


「何も、ない?」


 何もなかった。あるのはただ広い草原だけ。フィリアはなんでここが好きなんだ?


「えへへ……王都の近くは、建物が多すぎて。でも、ここなら村のこと思い出せるから……」


 うん、それは失礼じゃないかな。でも確かに……フィリアは急に王都に連れて行かれたんだ、そりゃあさびしくも、懐かしくなるよな……


「フィリア……」


「お父さんにもお母さんにも会えてないし、村のみんなやラルクとも離れ離れになっちゃうし……会いたかったから」


 そう言いながら少しだけ涙を浮かべるフィリアを見て、僕はずっと前の森の記憶を思い出す。あの小さい頃のフィリアと、今のフィリアがつい重なってしまい……気づいたら、抱きしめていた。


「ふぇ!! ら、ら、ラルク!?」


 驚いたように声を上げるフィリア。僕はそれを宥めるように告げる。


「大丈夫だよ、もう居なくなったりしないから」


 今度こそ、絶対に離すもんか。そう決意をいだき、フィリアの頭を撫でる。フィリアも安心したのか、体を委ねてきて……


「「「グォォォォォン!!」」」


 その瞬間、遠くの空から3体のドラゴンの鳴き声が聞こえて来る。まさか……敵襲!? そう思った僕はフィリアを庇う形で立ち塞がるが……


「フィリア、これは!?」


「…………もう! タイミングが悪いなぁ! 本当に()()()は……」


 ……あれ? フィリアの様子がおかしい。ドラゴンが空にいるというのに、何故か少し怒ったような、そして呆れたような顔をしながらそれを見上げている。


 しかもそのドラゴン達はどんどんこちらに近づいてきて、そこから……人が落ちてきた!?


「フィリア!? あの人大丈夫!?」


「うん。ほっといていいと思う。というか怪我しててもほっといて」


 フィリアの反応冷めすぎでしょ! 本当にあの人大丈夫!?


「…………ぁぁぁあああ!!」


 待って何か叫んでる! 絶対無事じゃ済まないでしょあの人!! その人はそのまま地面へと落ちてきて……まるで隕石が落ちたような衝撃音と共に地面が割れ、土煙が舞う! いやもうこれ死んだんじゃないの……


「……ふぅぅぅう!! お熱いな! 私にも彼氏が欲しいよ!」


 えっ、生きてるの!? 何事も無かったように立ち上がり、喋りかけてくる勇ましげな女の人を見て、思わず驚きを隠せない。


「……フィーズ、この子達の邪魔をするためだけに寄ったんじゃないよね!?」


 底冷えするような声が背後からする……ん? ()()!? 音もなく後ろを取られただって!?


「あ、え、えぇーと、その……違うんだ、アルト!」


 そう言い訳をしているものの、背後から伝わってくる底冷えする空気は収まらない。


「これは後からきちんと話さないとね……じっくりと」


 怖っ! そう驚いていると、空からドラゴンが降りてきている。それに向かって空から落ちてきた方の女の人が叫ぶ。


「助けてくれ!! シェイラ!」


 その上から声が聞こえてくる……って、この人だけで3体のドラゴンを使役してるのか!?


「分かった。アルト〜、お仕置き3倍で」


「了解」


「嘘だぁぁぁぁあ!」


 なんだこの人たちは……? そう思って眺めていると、僕の背後に立っている女の人がフィリアに話しかける。


「久しぶりだね、フィリア。2ヶ月ぶりかな?」


「お久しぶりです、アルトさん。学園長にはしっっっかりお仕置きしておいて下さい」


「これは相当ご立腹だね〜。ドンマイ、フィーズ!」


「フィリアまで!? 許してくれぇぇぇ!」


 この人たち、フィリアの知り合いなのか!? 困惑する僕に、フィリアが衝撃の事実を告げる。


「ラルク、この人たちは『神龍の翼』……ファイルガリアの中では1番強い、冒険者の序列1〜3位で組まれた最強のSランクパーティーだよ」


 ……ぇぇぇぇえ!? どうやら僕は、とんでもない人たちと出会ってしまったみたいだ……!

またまたキャラが濃い人が参戦し、第三章突入です!!




【作者からのお願いです!】


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