表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

66/204

第六十六話 守る約束と戦う覚悟

第六十六話! フィリアが大ピンチ……!?

 ファフニール……あいつは、フィリアを殺そうとした。当たり前だ。これは殺し合いなのだから。命を賭している戦いなのだから。


 それは分かっている。しかし、僕にはどうしてもそれが許せなかった。


『貴様に絶望を与えてやろう……来い』


 ああ、言われなくてもそうするさ。僕は『無詠唱』で【フレイムメテオ】を10連続で発動する。


「食らえ」


 上空から降り注ぐ、およそ100個の火の玉。ファフニールはそれを見上げ、鼻を鳴らしながら蔑むように嗤う。


『この程度か? 随分とまぁ……少ないな』


 その言葉とともに、奴の周りにも100個ほどの魔法陣が生み出される。そこから氷塊が形成され、降り注ぐ火の玉を全て相殺する。だが、それは()()()。本当の狙いは、こっちだ……!


「ああ、この程度で十分だ。お前の気を引くならな」


 そう言って、僕は『電光石火』を発動し、一瞬で奴の横を通り抜ける。さっきから見ていて分かったことだが、奴は魔法の発動前に()()()()()()()()()


 魔法において魔法陣を使うメリットは、魔力の消費を抑えられる点だ。奴は何らかの理由で、()()()()()()()()()()()


 対してそのデメリットは、魔法の行使が二度手間になってしまうということだ。普通なら詠唱→発動で済むところを、詠唱→魔法陣展開→発動という手間が加わる。つまり……


「お前は、『電光石火』に()()()()()()()……違うか?」


 この隙に、なんとかフィリアを安全な所まで連れて行く! これならなんとか間に合う……


『小賢しい! 【龍鱗・追躡(ついじょう)】!!』


 くそっ! また鱗を飛ばして攻撃してきた! 迫り来る鱗に向けて『隕石砲(メテオショット)』を使い、なんとか吹き飛ばそうとするが……


「避けたっ!?」


 まるで意思を持っているかのように、その鱗はとてつもない速さで飛んでくる大岩を()()()


 そしてそのまま僕に突っ込んできて……


「ラルク! 危ない!!」


『死ね!!』


(『衝撃』!!)


 人間の反応速度では間に合わないほどの間。予想外の動きをした鱗が飛んでくる刹那。僕はまた()()()()、『衝撃』を発動していた。


『反応した……だと!?』


「あっっぶない! でも、これなら……」


 危なかった……もし『武芸百般』LV3の効果がなければ、今頃無惨に全身を切り刻まれて死んでいた……でも、ちょうどファフニールの意表をついた動きをした今なら!


「『空中歩行』からの『縮地』!! ここだっ!!」


 僕はそのままフィリアに向けて、()()()()()()()。そして……


「『跳躍』っ!」


『なんだその動きは!?』


 奴の予想外の位置から、フィリアに向かって一気に吹き飛ぶ! そしてその勢いのままフィリアを抱きかかえ……


「スキル複合発動『跳弾』!」


 『受け流し』『受け身』『縮地』『反撃』を複合発動し、その場から一瞬で離れる。なんとかフィリアを救出できたみたいだ。


「ラルク……私は、大丈夫だから……」


 そう言って強がるフィリア。しかしその全身には無数の切り傷を負っており、所々から結構な量の血が出てきてしまっている。このまま放っておけば、すぐとは言わずともいずれ失血死してしまいかねない。


「喋らないで。ここで休んでおくんだ。ここは僕が何とかする」


「危ない、よ……」


 そんなの百も承知だ。それでも……


「大丈夫。()()()()()()()()()


 あの日の約束を、僕はここで守り抜く。フィリアを地面に降ろして寝かせ、ゆっくりとその不安気な瞳に背を向ける。


 そして、まだ僕を追ってきていた金色の鱗を……


「【ブレイズウォール】」


 一瞬で焼き焦がす。もう退けない。僕の後ろには、フィリアがいる。


『斯様な荷物(ハンデ)を背負ったまま……我に勝つつもりか?』


 今までの戦いは、王都のために……顔も知らない、王都に住む人たちのために戦っていた。でも、今は違う。


「ハンデ? 何を言ってるんだ、ファフニール」


 今は、たった1人の幼馴染のために戦おう。心から護りたい人のために、戦おう。


「ここからが本番だ。やっと戦う覚悟ができた」


 そう言って、僕は一歩前に出る。ファフニールは蔑むような冷笑を浮かべながら僕を見下ろし、こう言ってくる。


『覚悟……? 笑わせてくれるな。そんなもの、戦いにおいてなんの役にも立たんわ! それとも、実力でこの我に敵うとでも?』


 確かに、何の意味もないかもしれない。正直、まだ勝ち筋も見えていない。でも僕はもう、覚悟を決めた。彼女を守るためなら、奇跡だって起こして見せる。


「勝ってみせる。お前はここで僕に負けるんだ」


 その龍の顔を真っ直ぐに見上げて、僕はそう宣言する。それが、僕と奴が再戦の前に交わす最後の言葉となった。


『……消えろ。【龍鱗・千牙】』


「【ファイアボール】……50連!!」


 無数の弾幕はそれぞれ衝突し、あたりに衝撃と爆発音が響く。


 開幕の合図には余りにも大きすぎるその轟音と共に、戦いは最終局面に突入した。

果たしてラルクに勝機はあるのか……次回、ラルクVSファフニール最終局面です。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
https://ncode.syosetu.com/n6670gw/
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ