第六話 ノーマルスキルだけだとしても、僕は
第六話です。
「きっといつか、私を守れるくらい、強くなって私を迎えにきてよ……ラルク」
フィリアは、まるでそれが出来ると信じて疑わないような風にそう言った。そしてそれを見て僕は、やっと自分の馬鹿さに気がついた。
(最初からフィリアは、僕を励まそうなんて思ってなかったんだ)
僕は、僕が何もできないと、自分自身で決めつけていた。
(フィリアは、僕をずっと、信じていてくれたんだ)
ずっと逃げていただけの、こんな弱虫を。フィリアは信じていてくれた。
(何が『固有スキル』だよ。ただ、それを理由に逃げていただけじゃないか)
僕は馬鹿だ。大馬鹿だ。僕はただ、困難から逃げていただけだったんだ。もらったスキルを理由にして、ただ現実から目を逸らして、逃げていただけだったんだ。そして、何よりも……
(他でもない、フィリアがここまで言ってくれた。こんな僕を、ここまで信じてくれてるんだ…….だったら、僕は)
「……分かった。約束するよ。僕は、君を守れるくらい強くなって、君を迎えに行くから。だから……少しだけ、待っててくれ」
この地で、降り注ぐ日の光の下、僕たちは新たな約束を交わす。次の約束は、絶対に守って見せる。
「……うん! 私、絶対に、ラルクのこと待ってるから!」
そう言うと彼女は微笑んで、少し涙を浮かべながら僕に近づいてきて…
────僕の頬にキスをした。
「……ふぇ?」
あまりに唐突な出来事に、僕は一瞬反応が遅れた。
「じ、じゃあね! ラルク! 私、もう行くから!」
そして、顔を赤くしてとてつもない速度で森から出ていった。
「…….なんだったんだ、最後」
最後のは何なのか聞けなかったな……まあいい。とりあえず、また一つ王都にフィリアを迎えに行く理由ができたと思っておこうか……
そんなことを呟きながら、ふと思う。
(世界最強なんて言われてる剣聖を守るなんて……どれだけ強くならないといけないんだろうか、僕。)
世界最強を守れるのは、世界最強だけだ。つまり僕は、世界最強にならなくちゃいけない。僕の、『武芸百般』と共に。
(なんて、無理難題なんだ)
そう、心の中で愚痴をこぼす。なんて現実味のない理想。まさに子供の絵空事。それでも…
「それでも……使えるのがノーマルスキルだけだとしても、僕は強くなって君を迎えに行くよ、フィリア」
僕は、心の中でそう誓った。
『ノーマルスキルだけでも、最強になれますか?』
この世界に住む全ての人は、これにノーと答えるだろう。
そして、最強を目指し始めた1人の少年に与えられたのは、外れスキル『武芸百般』。効果は、ノーマルスキルが得やすくなるだけ。到底無理だと、きっと多くの人々が言うことだろう。
それでも彼は、最強を目指す。
たった1人の幼馴染との、約束を果たすために。
はいっ!一応、プロローグは完結です!ここから主人公がガンガン成長していきますので、乞うご期待ください!文字数も増やしていきます!
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