第五十七話 『集う旋風』
シュヴァルツ過去編:中編です。
「僕らの名前は『集う旋風』……今日から王都で活動することにした、Bランクパーティーさ」
そう僕に名乗った、彼ら『集う旋風』との出会ってから僕の生活は大きく変わった。
まず、CランクやDランクの冒険者達から暴力を振るわれなくなり、カツアゲされたりすることが無くなった。
時々陰口を叩かれるくらいで、その程度今までに比べれば全然マシだった。
そしてもう一つは……
「ヴァイス! 援護お願い!」
「はいっ! 【黒炎】!」
「よし! 『吸収付与』!」
「「グギャァァァ!?」」
「やっぱりヴァイスの暗黒魔法は強いね! やっぱりパーティーに入ってもらって正解だったよ」
「ありがとうございます、セイルさん」
僕は、『集う旋風』の一員となったのだ。
リーダーはAランク冒険者のセイルさん。固有スキル『魔術付与』で剣に魔法を付与して戦う魔導剣士だ。
色白で金髪の爽やかイケメンだ。
「ヴァイスくん、お疲れ様〜。【魔力共有】」
「ありがとうございます、これでまだ戦えます」
「ヴァイスくんだけに負担かけちゃいけないからね〜」
この少しホワホワした感じの栗毛の美人な女性は、シーラさん。珍しい職業の治癒士であり、固有スキル『治癒の力』で体力を回復させたり、魔力を譲渡したりとサポートにおいて万能だ。
「……鼻の下、伸びてる……ヴァイスは変態」
「フィーアさん!? 違いますよ!?」
そして、今絶賛あらぬ誤解をされている背の低いエルフの女性、フィーアさんは射手という弓を武器とする遠距離攻撃が得意な職業だ。固有スキル『魔弓』でトリッキーな戦い方ができる。
……と、このメンバーの中に僕が入る余地があるのか……と思ったが、セイルさん曰く『魔弓』も『魔術付与』も他の魔法を吸収して武器を強化することができること、そしてパーティーメンバーに殲滅戦ができる人がいなかったため魔法使いを探していたらしい。
彼らはとても優しく、元のメンバーと変わらないように僕に接してくれた。それが僕にとっては新鮮で、とても嬉しかった。
『集う旋風』に入ってから、毎日が楽しいものに変わった。いつもいじめられていて、ギルドに行くのが憂鬱だったのに、気づいたら早くギルドに行って彼らと依頼をこなしたいと思うようになった。
一緒に冒険する毎日が楽しくて、こんな日々がずっと続けばいいのにと思っていた。……そう、思っていたのに。
………それは、『集う旋風』に入ってから半年ほど経った頃。僕の冒険者ランクはもうすぐAランクになるかというくらいで、だんだんパーティーにも馴染んできた……そんな時のことだった。いつも通りに依頼を受けた日のことだった。
その日に受けた依頼は、王都近くのダンジョン『カノープス』での討伐依頼。僕たちは、そこの第47層に潜っていた。
「あれは……キラースケルトンの群れだ! ヴァイス! よろしく!」
「【喰ラウ獄炎】!」
「『吸収付与』! フィーアにもよろしく!」
「【襲ウ獄炎】!」
「『魔装弓』……消えて」
「【癒の光】! 【守護の光】! バフ終わったよ!」
いつも通りの連携で先制攻撃を仕掛け、カタカタ言いながらキラースケルトンは燃えて消えていった。
「ふう……結構多かったな」
「【簡易鑑定】……うん、みんな怪我はないみたい!」
「……ほんとそれ便利」
「たまたまドロップしたレアなスキルスクロールからね〜!」
と、こんな風に勝利の余韻に浸っていた時だった。『索敵』にその反応がしたのは。
(……っ!? 何だ、これ…………!!)
そこにあったのは、1人の冒険者と尋常じゃない数のモンスターの反応。これは……
「モンスタートレインが来ています!! 今すぐここから離れましょう!!」
モンスタートレイン。大量のモンスターを引き連れて、他の冒険者に擦りつける行為だ。
冒険者を追いかけるモンスターがモンスターを呼び、その数はねずみ算式に増えていく。その様はまさに、魔物の行軍だ。
「ダメだ……もう見つかった! 逃げきれない……あれを相手するぞ!」
「セイルさん……分かりました! 【地獄ノ黒炎】!! 」
「『魔装弓』……! 厄介……」
「『魔術付与』! でもやるしかない!」
「【奮い立つ行軍】【守護の光】【癒の光】【回復付与】!!」
「「「「グルァァァァ!!!」」」」
迷宮氾濫と違って狭い範囲でしか戦えないため、真正面から迎え撃つしかない!
目の前にはロックリザードやシャドースケルトン、ゴブリンソーサラーたちの大群。逃げてきた冒険者はちょうど飲み込まれてしまった。やるしかない、か……
僕たちはその大群を、真っ向から迎え撃つのだった。
次回、過去編完結です。




