第五十四話 マイナースキルとはこれいかに
第五十四話!王都でも特訓するラルク───!
王都の図書館。そこには数十万冊もの本が所蔵されており、入館料の銀貨1枚さえ払えばいくらでも本を読むことができる。
しかし数十万冊もある本の中からどうやって目当ての本を見つけ出せばいいのか……そう思っていた時期が、僕にもありました。
なんとこの図書館、本を色々な方法で分類しており、その情報から読みたい本を探してくれる特殊な魔道具によって本を探せるようになっているのだ!王都の魔道具技術はすごいな!
それのおかげで、僕はお目当ての本をすぐに何冊も見つけることができた。そして、それらの本には聞いたこともないようなスキル……マイナーな職業が適正となっていたり、いつ使えばいいのか分からないようなノーマルスキルが沢山載っていた。
例えば、スキル『峰打ち』。これは攻撃の威力を下げ、尚且つ相手のHPをその攻撃で0にならないようにするスキルだ。あとは周りの人の注目を集めるスキル『釘付け』だったり、マジックが上手くなるスキル『マジック』だったりと…まあ、要するにネタ枠のスキルだ。
そんな変なスキル達の中にも、結構使えそうなものがあった。しかし、マイナー職業の適正スキルなだけあって入手方法が特殊だったり、効果のクセが強かったり……まあ要するに、『使えるけどなるべくしてマイナーになったスキル達』ということだ。
でも、入手条件が難しくても大丈夫。そう、『武芸百般』ならね。
とりあえずある程度の調べ物が終わったので、窓から外を見る。まだまだ日は高いところに上っている。だったら……
(今日調べたスキル、何個か取りに行くか)
ということで、僕は王都のギルドに備え付けられている訓練場に向かった。
王都などの大きな町のギルドには、冒険者達がスキルの練習や模擬試合などを行える広い訓練場が備え付けられている。ちなみに、冒険者以外の人達でも使用可能だ。
剣の素振りをする人や、魔法の詠唱スピードを上げようとしている人、固有スキルらしき力の訓練をしている人がいるそんな所で、僕は……
「どすこい!どすこい!」
聞いたことのない単語をひたすらに繰り返しながら壁に向かって、手を広げて指を下に向けた形で下から突く動作を連続で続けていた。
……周りから見たら謎の儀式をしている近寄らない方がいい人だが、僕がやっているのはスキル『突っ張り』の取得だ。
このスキルは、本───《案外奥が深い!?ノーマルスキル大百科》に書いてあったスキルで、『力士』という東方の国で比較的適正ジョブになる固有スキルが出やすい職業……といっても結構レアらしいが……の適正スキルだ。
そんなマイナーなスキルだからか、取得条件も結構特殊で……『どすこい』と言いながらそれと同時に力を込めて壁を型通りに速く連続で突くというものだ。
だから決して僕は壁に向かって叫びながら突きを繰り返している変な人ではない。変な人ではないのだ!!大事な事だから2回言ったからね!
そんな心の叫びは誰にも届くことはなく、周りの人達からの奇異の視線を浴びながらひたすらにこの動作をやり続けた……。
すると、ふと体の中にいつもの感覚……何かが染み込んでくる感覚がした。これはやっぱり……そう思い、僕は壁から離れて土魔法【ビッグロック】を使用し、大きな岩を作り出す。
そしてそれに向かって、発動条件を満たすように……
「どすこい!!」
声を張り上げながら、『突っ張り』の動作を行う!すると、『剣術』スキルを使った時と同じ感覚……体がその動きを知っているように、僕の体は自然にその動作を行った。
そして目の前の岩は一度押されただけで、大股五歩分もの距離を後ろに下がっていった。
僕のステータスなら、本来こんなことをすればすぐに岩は削れていき、ヒビが入り砕けてしまうだろう。しかしこのスキルの能力を使えば、それを防ぐことができるのだ!
その能力とは、『物体にダメージを与える代わりに、そのダメージに応じて相手をさらに押し出す』能力だ。一見何に使えるかわからないが、ここで僕のスキル『武芸百般』と職業『冒険者』が活きてくる。
つまり、ダメージから押し出しへの変換効率が4倍になる、とということだ。
相手を強制的に自分から引き剥がせるから、ウォードさんみたいな近接戦闘の強い相手には結構使えるだろう。
とまあ、夕方になるまで僕は特訓を続け、その日中に5つのスキル……
演技が上手になるスキル『演技』
近づいてきた相手を怯ませるスキル『ねこだまし』
近くの物と自分の持ち物を入れ替えるスキル『トリック』
呼吸で受けるダメージを減らすスキル『システマ』
を獲得した。ちなみに分身は今日は3体くらいしか出していない。みんなの邪魔になるしね。
そろそろお腹も減ってきたし、陽も傾いてきただろうから帰ろうかな……と思って出口に向かったその時。僕は、彼女の姿を見つけた。
同年代の子供よりも少し低い背丈。そこに金属製の鎧をつけ、一人で剣の素振りをしている女の子。本来の年齢よりも幼く見える顔立ちに、肩くらいまで伸ばした濃いピンク色の髪をなびかせたその少女の名は────
「フィリア……!」
僕の幼馴染にして、『勇者』と同レベルと言われる最強の固有スキル『剣聖の加護』を持つ者だった。
フィリアとの再会なるか……!?
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