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第五十二話 冒険者ギルドin王都

第五十二話です!ギルドに着いたラルク達ですが…?

「「凄く…大きくて…硬そう」」


「その言い方やめて?なんか危なそうだから」


 そんなやりとりをしながら、僕たちは大きくて頑丈そうな石造りのギルドの前に立っていた。目の前には大きな木製の扉があり、つい入るのを躊躇ってしまうほどしっかりとした作りだ…


「ここでつっ立っていると邪魔だろう?入ろう」


「「「あ、すみません」」」


 そうシュヴァルツさんに促され、僕たちはギルドの中に入っていくのだった。




 冒険者ギルドの中。そこは外観通りきれいな石造りの床と壁となっており、村のギルドよりも清潔感がある。

 飲食ができる酒場のようなスペースやとても数の多い受付、沢山いる強そうな人たち……これが王都の冒険者ギルドか……!村のギルドとはまるで違う。僕は思わず目を見張る。


「マール、マール!これほんとにギルド!?きれい!」

「リール、リール!全然汚れてないよ!すごい!」


 マールとリールも驚いている。というか2人とも、別に村のギルドが汚かったわけじゃないからね?ここがきれいなだけだから。


 僕はつい珍しくてじっくりと周りを見てしまい……って、おっと。驚いている場合じゃない。さっきからシュヴァルツさんに色々と任せきりだ。僕はシュヴァルツさんの後を追い、受付に向かう。しかし…


「それでは、本日からこちらのギルドに備え付けられた寮に宿泊していただきます。鍵はこちらになりますので、今すぐ荷物を置いていただいても大丈夫です」


「ありがとうございました。これからお世話になります」


「はい。よろしくお願いします。試験、頑張って下さいね!」


 既に話は終わってしまったようだ。僕はシュヴァルツさんに声をかけようとする…しかし、それは叶わなかった。横から割り込んできた声により、阻まれたのだ。


「おい、お前もしかして…『【臆病者(カワード)】ヴァイス』じゃねぇか?……やっぱりな!久しぶりだなぁ?元気にしてたかぁ?」


 そうニヤニヤしながらシュヴァルツさんに話しかけたのは、スキンヘッドのいかにも強そうなムキムキの男だった。

 しかし、シュヴァルツさんに向かってなんて言った?『【臆病者】ヴァイス』?人違いじゃないか?しかし、シュヴァルツさんは黙ったまま反論しない。


「よく王都に戻ってきたなぁ?お前の大事な仲間を()()()()()()()()()()()…おい、だんまりかよ。なんか言ってみろよ?え?」


 なんだこの人。急につっかかってきて、シュヴァルツさんに挑発気味に話しかけて…シュヴァルツさんは厄介事にならないようにしているのか、何も言わない。


「あいつが()()ヴァイスか…?」「随分変わったな」

「グロウハート家の恥晒しだ」「よく帰ってこれたもんだ」


 周りにも人が集まってきている。だから、その人とシュヴァルツさんは別人だって…名前違うし。そんな空気の中、男は痺れを切らしたのか遂に……


「お前なぁ……こういう時にはちゃんと返事しろ……よっ!!」


 そう言って、そいつはは拳を振り上げ、いきなりシュヴァルツさんを殴りつけようとする!!


(危ない!!)


 僕は咄嗟に2人の間に割り込み、その拳を掴んで捻る。男の顔が苦痛に歪み、強引に腕を振りほどれる。


「いっってえ!なんだこのガキ!」


「……!ラルク!?聞いていたのか……!?」


 シュヴァルツさん…?聞いたらまずい事だったのか…?そう思い、シュヴァルツさんの方を見る……が。


「よそ見してんじゃねえぞ!!」


 また男が殴りかかってくる。ギルドの建物の中ではスキル使用禁止だ。つまり、素のステータス勝負になるわけだが…


「いい加減に……して下さい!!」


 僕の方が、速い。僕はその腕を掴み、思い切り地面に向かって投げる!!


「がはぁぁ!!」


 男の体は地面に叩きつけられ、反動で少し宙を舞う。そして地面についた時には…男は白目を剥いて気絶していた。僕はため息をつき、介抱してもらうために受付までその人を持っていこうとするが……


「……なんの騒ぎだ、これは」


 そんな声と共に、周りの人混みの中からひとりの女性──全身甲冑に剣を装備した、肩まで伸ばした真紅の髪を靡かせた綺麗な顔立ちの人だ──が出て来る。その瞬間、みんなが急に話すことをやめ辺りが静寂に包まれる。


「これはなんの騒ぎだ、と聞いている…何があった?」


 その人の声は女性にしては低いが、よく通る重い声をしていて…なんというか、迫力がある。しかし、僕はあえて堂々と目の前の女性に対して告げる。


「この人が仲間にちょっかいをかけた挙句殴りかかってきたので、反撃しただけです…悪いことはしてません」


 そういうと、目の前の女性から放たれる迫力が一気に増す!!なんだ、これは───!!その気迫を纏ったまま、さっきよりも低いトーンで僕に再度こう聞いて来る。


「────それは、本当か?」


 その言葉に込められた迫力、嘘をつくことを許さないほどの威圧感が僕に向けられる!!それに負けないよう、僕はさっきよりも大きな声で、はっきりと言い返す。


「嘘は……ついてません!本当です!!」


 すると、彼女から放たれる気迫はすっと収まり…


「そうか……脅すように質問してすまなかった。魔石を売りにきたのだが中が少し騒がしかったため、何があったのか知りたくてな。よかったら聞かせてくれないか?」


 少し表情を柔らかくして、僕にそう謝った。悪い人じゃなさそうだ。


「あぁ、すみません…。僕も実は、何があったのかよくわかっていなくて…」


「いや、いいんだ。概ねそちらの男が君のお仲間につっかかったのだろう?『彼』は自分から喧嘩を売るような人じゃない…なあ、ヴァイス?」


 ん?この女性…まるで、シュヴァルツさんを知っているような言い方だな…それに、さっきからシュヴァルツさんが言われている名前…『ヴァイス』。

 もしかして、シュヴァルツさんは…ある考えに至り、僕はシュヴァルツさんのほうを見る。すると、彼の口から驚きの言葉が発せられた。


「今の僕は…もう、『シュヴァルツ』と名乗っています。なので、そちらの名前で呼んでいただきたい…()()()()


 やっぱり、偽名なのか…って、『グレア様』?その名前は…


「そんな他人行儀にしないでもいいだろう。私にとっては今も大切な()だ…()()()()


 ……『弟』!? 2人の間で交わされたやりとりに、僕は思考が追いつかない。グレア様?弟?この2人、何者なんだ?そう困惑したように2人を見つめる。すると、女性の方がこちらに気づき、さらに驚くべきことを告げた。


「ああ、何が何だかわからない、という顔をしているな…ならば、少し遅れたがまずは自己紹介をするとしよう。私の名前は、グレア・グロウハート…」


 ────『剣聖』と呼ばれている者だ、と。

『剣聖』の称号───それは、その時代に生きる者の中で最も強い剣士に与えられる。


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