第五十一話 初めての王都
第五十一話!ついに王都に到着です!!
僕たちが村を出発してから2週間。特にこれといった出来事もなく、山賊に襲われることもなく、ゆったりとした旅の末に…
「「「「王都だぁぁぁぁぁ!!」」」」
僕たちは、王都に到着した!!!……といっても、まだ中には入っていないのだが。
ファイルガリア王国の中心にあり、王様や公爵家などの偉い人が住んでいる王都…その周りは、2階建ての家6,7個分の高さくらいの大きな石造りの城壁に囲まれている。僕たちは今その外側におり、厳密に言えばまだ王都には着いていない…それでも。
(なんて数の人なんだ……!!!)
城壁にあるとても大きな王都への出入り口。その周りに集まる、たくさんの馬車や人。奇抜な服装をしている人や、全身鎧の人、村にはいなかった獣人など……そこには、見たことのない光景が広がっていた。
視界に広がる、凄まじい量の『初めて』。僕はそれを見て、驚きのあまり何も喋ることができなかった。
マールとリールも僕と同じような感じになっており、唯一いつも通りのシュヴァルツさんが僕たちにこう告げた。
「ラルク、マール、リール…驚くのはまだ早い…!王都は中に入ってからが本番だ!」
そう促されるようにして、僕らは城壁の門をくぐった……そして僕は、思わずこんなことを口にする。
「なんだ、これ………!!!」
たしかに、話では聞いていた。本でも読んだ。勉強している時にも学んだ。しかし、しかしそれでも…目の前に広がるその御伽噺が如き光景に、耳が拾うその活気に満ち溢れた声に、肌で感じる数多の人々の迫力に…僕は、思わず息を呑む。
これが、王都。さまざまな形や色をした家が立っていて、道にはたくさんの店が立ち並び、そこから人々の声が飛び交う。もともといた町とは比べ物にならないほどの、熱気。活気。生気。
(すごい……!)
まさにその一言に尽きる。ありきたりな感想だが、どの面においても、そこはまさに『すごい』の連続だった。
僕たち───マールとリールと僕───は、それにあてられて、しばらくの間唖然としていたのだった………。
「じゃあ、まずはギルドに行くか」
数分後。驚きから立ち直った僕たちに、シュヴァルツさんはまずそう言い放った。
「まず王都に着いたらギルドに行ってこの『推薦状』を見せろ…とマスターが言っていたしな…」
そういえばそんな事、王都に向かう日の前日に言っていたっけ。
「道は知っているから、さっさと行って用事を済ませてしまおう…さあ征くぞ!!」
「「「はーい」」」
そうやってシュヴァルツさんに先導されながら、僕たちはギルドに向かい始めた…
歩く事数分。僕たちは王都の広場に来ていた。足元は石畳となっていて、中央には2人の男女の大きな銅像が立っている。
「確か…ここの広場からあっちの道に出ると…」
シュヴァルツさんは、行くのが久しぶりなので道を思い出しているらしい。一方、マールとリールは…
「これ美味しい!クレープ?だっけ?」
「これ美味しい!クレープ!甘い!」
屋台で売っていた王都のお菓子を買って食べている。僕はあいにくあまり持ち合わせがない (念のため多めに持ってきてはいるが) ので、食べるのはやめておいた。
特にすることもないので、中央の銅像を見ながらぼーっとしていると、シュヴァルツさんが声をかけてくる。
「ラルク、あの銅像に興味があるのか?」
「あ、いえ、見てただけですけど…あれって、誰なんですかね?」
そう聞くと、シュヴァルツさんは語り始める。
「あの銅像はな…『最強の剣聖』ホープ様と『希望の勇者』アルス様の像だ。10年前に魔王を相打ちで討ち取った英雄なんだ」
本で読んだことがある。確か、10年前に起こった【人魔大戦】の相手、魔王軍のボスであり、その身一つで国を滅ぼせるとも言われていた魔王…それを2人が力を合わせ、死力を尽くして魔王を討ち取った…と言われている。
実物(といっても銅像だが)で顔を見るのは初めてなので、分からなかったな…ん?よく見ると…
「じゃあ、ひとまわり小さいあの女性の像はなんですか?」
よく見ると、それの近くにひと回り小さな銅像がある。見た目16歳くらいだろうか…?
「あぁ、あれは『賢者』エフィロス様の銅像だ。ホープ様とアルス様のサポートを主に行い、たびたび共に戦っていたらしい。なんでも、5属性の魔法はもちろん、固有スキルで手に入る属性の魔法も大体使えたらしい…。現在は消息不明だが」
『賢者』エフィロス様、か…どこかで見たことあるような?…………まあ、気のせいか。
「「ラルクー!シュヴァルツー!クレープ食べないのー!?美味しいよー!」」
シュヴァルツさんと喋っていると、マールとリールにそう声をかけられた…ダメだ、初めて来る王都で何が起こるか分からないのにこんな所で余計なお金を使っては……
「久しぶりに食べるとするか」
くっ…シュヴァルツさんまで…でも、でも……
「僕も食べようかな…」
僕は、その魅惑的なクレープという名のお菓子の前に陥落した……。
そしてさらに歩くこと数分……活気に満ち溢れた大通りを、村にはなかった大きな建物、食べ物や店、服を見て驚きつつ歩き続けて…
「着いたぞ、ここがギルドだ」
僕たちは王都のギルドに着いた。着いたのだが……いや、何というか……思ってたより……
「「「大きくない!!??」」」
そこに建っていたのは、村にあったギルドよりも遥かに大きい石造りの建物だった。
ラルク達一行は、どうやら結構田舎者だったみたいです…え?作者は…HAHAHA。自然っていいですよね。




