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第五十話 閑話:王都への道中にて

第五十話!すみません!投稿が遅れてしまいました!明日も投稿します!

 ◆◆◆◆◆◆


 『それ』は、出発して4日後…馬車に乗っている時に唐突に起きた。

 4日ほど共に過ごして、ようやく3人とも打ち解けてきた頃のこと。少しずつ近づき始めた僕たちの関係に、決定的な亀裂を残しかねないハプニング。


 ゆったりとした雰囲気に包まれていた馬車の中に走る緊張感。互いを牽制し合うように睨み合う僕たち4人。そして僕たちが囲うように座っている真ん中にある、元凶の『箱』……どうにかして平和的に解決する方法はないものか…


 しばしの静寂の後、シュヴァルツさんがそっと口を開き、こう告げる。


「……これは、どう処理するべきなんだ…ッ!!我が力を持ってしても、これは…これのみはどうすることもできない!!」


 嘘、だろ。シュヴァルツさんでもお手上げな状況…どうすれば…


「そんなことない!!何かあるはずだよ!解決策が…みんなが幸せになれる選択が!!」

「マールの言う通りだよ!もうちょっと踏ん張って!!誰も見捨てたくない!!」


 マールとリールが声を上げる。彼女らのこの姿勢は見習いたいものだ…こんな絶望的な状況下でも、まだ希望を追い求めている。皆を救う道を模索している。

 ……しかし、この世にはどうしようもないこともあるんだ……!僕は無力感と共に、彼女らに告げる。


「無理だよ…僕たちには、どうすることもできない」


「「なんで!!??」」


 縋るように聞いてくるマールとリール。俯いているシュヴァルツさん。そんな3人を見ながら、僕はこの辛すぎる現実を突きつけるように言い放つ。


「だって……このお菓子、3つしか入ってないじゃないか!誰か1人が諦めるしかない!」


 その『箱』の中には、前日に泊まった宿屋でお土産としてもらった、『まんじゅう』と呼ばれているらしいお菓子が3()()入っている。


 そう。『3個』なのだ。4人で分けるには困難を極める数。どれかを半分にすれば物足りない人が出て、ジャンケンで食べない人を決めるには少しばかり危険性の高い数。


 そのことはみんな分かっているのだろう、きっと考えは同じだ。ずばり…


(誰かが譲るのを、待つしかないっ……!)


 そう。これは高度な心理戦。待ち続ければ終わらず、かといって動くのも不利を招く……そんな緊張的状況下においての、戦なのだ…


 そんな中1分ほど硬直状態が続き…ついに、マールとリールが動く!


「これの中身って何って言ってたっけ?」

「『あんこ』って言う甘いものらしいよ」

「「美味しそう〜!!」」


 これは…っ!!先に食べる意思をアピールすることで、自分たちの分を確保した!?まさに予想外…2人だからこそできる、問答形式のコンビネーションアタック!やられた…!


 僕は咄嗟にシュヴァルツさんの方を見る。すると彼は……っ!?


(笑っている……だと!!!)


 それは表すなら、子供が悪戯を成功させたときのような…そんな、不敵な笑み。この状況を、読んでいたとでもいうのか!?この状況を…この2人の策略を、乗り越える術があるというのか!


 それに応えるよう、シュヴァルツさんが2人に向けてこう言い放つ。


「じゃあ…とりあえず半分に分けないか?」


 これはっ…『とりあえず半分こ(スプリットディレイ)』!全ての会話を無に返す禁じ手中の禁じ手!!こんなことをしてなんのメリットが……いや、よく考えろ…シュヴァルツさんのことだ、何か策略が…って、まさか!


(自分が進行する立場を獲得した…だと…!!)


 『進行役』。それは、あらゆる議論の場において議論する者たちより優位にある立場。その気になれば、それまでの内容を白紙にすることも容易い……つまり。


(残り一つのまんじゅうを、どうにかして手中に収める気か!!)


 一見平等に戻ったように見える状況。しかし彼は、マールとリールの有利を打ち消しただけでなく、ほぼ確実にさらにまんじゅうを食べる権利を得たのだ…!


 このままでは、シュヴァルツさんにまんじゅうが持っていかれる!どうにかしてこの状況を打破せねばならない…!ならば、僕が取るべき行動は……


「じゃあ、残り一つはジャンケンして決めましょうか」


「「「えっ!!??」」」


 秘技:『乾坤一擲(ジャンケン)』!!このまま搾取されるくらいなら、運を天に任せる!


「いいですね?じゃあ行きますよ!最初はグー!」


 そして、運命の戦い(ジャンケン)が始まったのだ…!


 side:リール


 やられたっ…!有利状況を覆された挙句、運勝負に持ち込まれるなんて…こんなことがっ…!

 しかし、このジャンケン。一見平等に見えても、私…いや、()()()に有利なのだ。私かマール…どちらかが勝てば、まんじゅうを分け合うことが可能…!つまり。


(この勝負、もらった!!!)


 他の人の2倍の確率で、さらにまんじゅうを食べることができる!2人には残念だけど、この勝負、私たちの勝ちだよ!!


 そう思い、私は言う。


「じゃーんけーん───!」


 side:ラルク


 マール、リール。君たちは、自分達が有利だと思っているのかもしれない。しかし…それは間違いだ!君たちは双子…その中でも、思考回路がほぼ一緒というクラスで仲がいい!よってこの勝負に勝つ確率は限りなく三分の一に近い!!!


 そう考えながら、僕は運命の一手を出す。


 「ポン!!!!」


 そこに出されていたのは、3つのグーと1つのパー。パーを出したのは…


「「「シュヴァルツさん……!!」」」


 天に選ばれたのは、シュヴァルツさん。しかし、驚くほどに内心は清々しかった。正々堂々と勝負をして、負けた。そこに何の遺恨がある?

 あなたの勝ちです、シュヴァルツさん…!


「じゃあ、御者さんにあげてくるよ、これは」


 な、何ぃぃぃ!!??自らの利益を捨てた…だって!?御者さんのために!?シュヴァルツさん、あんた、すごい人だよ…そう尊敬の目を向けながら、御者さんに声をかけるシュヴァルツさんを3人で見つめるのだった…。


 僕は箱の中のまんじゅうを半分に分けて手に取り、口に運ぶのだった。うん、おいしい。


 …… しかし、この時に僕たちは気づくことができなかった。シュヴァルツさんが、また()()()()を浮かべていたことに…


 それに気づくのは、さらに3日後。またお土産をもらったときのことだった…



                 つづく


 ◆◆◆◆◆◆

 嘘です。続きません…多分。

 そして!何と!10万字突破でございます!ということで…10万字突破記念で、3日連続投稿をしたいと思います!もしかしたら1日に複数話投稿することもあるかもしれないので、応援よろしくお願いします!!




【作者からのお願いです!】


もしよろしければ、下の星からの評価、そしてブックマークの程をよろしくお願いします!励みになります!



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