第五十話 閑話:王都への道中にて
第五十話!すみません!投稿が遅れてしまいました!明日も投稿します!
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『それ』は、出発して4日後…馬車に乗っている時に唐突に起きた。
4日ほど共に過ごして、ようやく3人とも打ち解けてきた頃のこと。少しずつ近づき始めた僕たちの関係に、決定的な亀裂を残しかねないハプニング。
ゆったりとした雰囲気に包まれていた馬車の中に走る緊張感。互いを牽制し合うように睨み合う僕たち4人。そして僕たちが囲うように座っている真ん中にある、元凶の『箱』……どうにかして平和的に解決する方法はないものか…
しばしの静寂の後、シュヴァルツさんがそっと口を開き、こう告げる。
「……これは、どう処理するべきなんだ…ッ!!我が力を持ってしても、これは…これのみはどうすることもできない!!」
嘘、だろ。シュヴァルツさんでもお手上げな状況…どうすれば…
「そんなことない!!何かあるはずだよ!解決策が…みんなが幸せになれる選択が!!」
「マールの言う通りだよ!もうちょっと踏ん張って!!誰も見捨てたくない!!」
マールとリールが声を上げる。彼女らのこの姿勢は見習いたいものだ…こんな絶望的な状況下でも、まだ希望を追い求めている。皆を救う道を模索している。
……しかし、この世にはどうしようもないこともあるんだ……!僕は無力感と共に、彼女らに告げる。
「無理だよ…僕たちには、どうすることもできない」
「「なんで!!??」」
縋るように聞いてくるマールとリール。俯いているシュヴァルツさん。そんな3人を見ながら、僕はこの辛すぎる現実を突きつけるように言い放つ。
「だって……このお菓子、3つしか入ってないじゃないか!誰か1人が諦めるしかない!」
その『箱』の中には、前日に泊まった宿屋でお土産としてもらった、『まんじゅう』と呼ばれているらしいお菓子が3個入っている。
そう。『3個』なのだ。4人で分けるには困難を極める数。どれかを半分にすれば物足りない人が出て、ジャンケンで食べない人を決めるには少しばかり危険性の高い数。
そのことはみんな分かっているのだろう、きっと考えは同じだ。ずばり…
(誰かが譲るのを、待つしかないっ……!)
そう。これは高度な心理戦。待ち続ければ終わらず、かといって動くのも不利を招く……そんな緊張的状況下においての、戦なのだ…
そんな中1分ほど硬直状態が続き…ついに、マールとリールが動く!
「これの中身って何って言ってたっけ?」
「『あんこ』って言う甘いものらしいよ」
「「美味しそう〜!!」」
これは…っ!!先に食べる意思をアピールすることで、自分たちの分を確保した!?まさに予想外…2人だからこそできる、問答形式のコンビネーションアタック!やられた…!
僕は咄嗟にシュヴァルツさんの方を見る。すると彼は……っ!?
(笑っている……だと!!!)
それは表すなら、子供が悪戯を成功させたときのような…そんな、不敵な笑み。この状況を、読んでいたとでもいうのか!?この状況を…この2人の策略を、乗り越える術があるというのか!
それに応えるよう、シュヴァルツさんが2人に向けてこう言い放つ。
「じゃあ…とりあえず半分に分けないか?」
これはっ…『とりあえず半分こ』!全ての会話を無に返す禁じ手中の禁じ手!!こんなことをしてなんのメリットが……いや、よく考えろ…シュヴァルツさんのことだ、何か策略が…って、まさか!
(自分が進行する立場を獲得した…だと…!!)
『進行役』。それは、あらゆる議論の場において議論する者たちより優位にある立場。その気になれば、それまでの内容を白紙にすることも容易い……つまり。
(残り一つのまんじゅうを、どうにかして手中に収める気か!!)
一見平等に戻ったように見える状況。しかし彼は、マールとリールの有利を打ち消しただけでなく、ほぼ確実にさらにまんじゅうを食べる権利を得たのだ…!
このままでは、シュヴァルツさんにまんじゅうが持っていかれる!どうにかしてこの状況を打破せねばならない…!ならば、僕が取るべき行動は……
「じゃあ、残り一つはジャンケンして決めましょうか」
「「「えっ!!??」」」
秘技:『乾坤一擲』!!このまま搾取されるくらいなら、運を天に任せる!
「いいですね?じゃあ行きますよ!最初はグー!」
そして、運命の戦いが始まったのだ…!
side:リール
やられたっ…!有利状況を覆された挙句、運勝負に持ち込まれるなんて…こんなことがっ…!
しかし、このジャンケン。一見平等に見えても、私…いや、私たちに有利なのだ。私かマール…どちらかが勝てば、まんじゅうを分け合うことが可能…!つまり。
(この勝負、もらった!!!)
他の人の2倍の確率で、さらにまんじゅうを食べることができる!2人には残念だけど、この勝負、私たちの勝ちだよ!!
そう思い、私は言う。
「じゃーんけーん───!」
side:ラルク
マール、リール。君たちは、自分達が有利だと思っているのかもしれない。しかし…それは間違いだ!君たちは双子…その中でも、思考回路がほぼ一緒というクラスで仲がいい!よってこの勝負に勝つ確率は限りなく三分の一に近い!!!
そう考えながら、僕は運命の一手を出す。
「ポン!!!!」
そこに出されていたのは、3つのグーと1つのパー。パーを出したのは…
「「「シュヴァルツさん……!!」」」
天に選ばれたのは、シュヴァルツさん。しかし、驚くほどに内心は清々しかった。正々堂々と勝負をして、負けた。そこに何の遺恨がある?
あなたの勝ちです、シュヴァルツさん…!
「じゃあ、御者さんにあげてくるよ、これは」
な、何ぃぃぃ!!??自らの利益を捨てた…だって!?御者さんのために!?シュヴァルツさん、あんた、すごい人だよ…そう尊敬の目を向けながら、御者さんに声をかけるシュヴァルツさんを3人で見つめるのだった…。
僕は箱の中のまんじゅうを半分に分けて手に取り、口に運ぶのだった。うん、おいしい。
…… しかし、この時に僕たちは気づくことができなかった。シュヴァルツさんが、またあの笑みを浮かべていたことに…
それに気づくのは、さらに3日後。またお土産をもらったときのことだった…
つづく
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嘘です。続きません…多分。
そして!何と!10万字突破でございます!ということで…10万字突破記念で、3日連続投稿をしたいと思います!もしかしたら1日に複数話投稿することもあるかもしれないので、応援よろしくお願いします!!
【作者からのお願いです!】
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