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第五話 いつか、きっと

ブクマをさらに4件頂きました!ありがとうございます!

「ずっとそばにいて君を守る、でしょ? 忘れないよ、すごく怖かったから」


「よかった……忘れてたら切り刻むところだったよ……」


 こらフィリア? 剣聖の加護を悪用しようとしないで?


「でも、守れそうにないけどな……ごめん」


 自分の弱さに腹が立つ。『剣聖の加護』を持つフィリアなら、誰にも守られなくてもきっと生きていける。ましてや、こんな固有スキルしか持たない僕は、守るどころか足手まといにしかならない。

 僕は結局、彼女との約束を守れない、ただの嘘つきになってしまった。


「僕は……ただの弱虫の嘘つきだよ」


 そんな自分を卑下するように呟く。きっと、フィリアも、僕に失望しているだろう。それでも…


「……そんな僕でも、君のそばにいていいのかな?」


 フィリアのそばにいたい。どこにも行って欲しくない。でも、僕にはどうすることもできない……だから、行かないでくれと。そんな思いを込めて、懇願するようにフィリアにそう言った。




side:フィリア


「……そんな僕でも、君のそばにいていいのかな?」

 

 ラルクが今にも消えそうな声で、私に一緒にいてくれとそう言ってくる。私は、なんて返せばいいんだろうか。ここまで彼が追い詰められているのに、それでも最善が何かわからない自分の馬鹿さが憎い。


 きっと、ここでラルクのことを拒絶すれば、彼は……壊れてしまうだろう。


 でも、私の本心を伝えてしまえば……ラルクをここで受け入れてしまえば、彼はこれから、ずっと私に後ろめたい気持ちを持ってしまう。


 なら、私が言うべき言葉は。


「ラルクは、嘘つきじゃないよ」


「えっ?」


「ずっと私のそばにいてくれた。守っていてくれたよ」


「……?」


 彼は、何を言っているのか分からないと言うふうにこちらに目を向ける。


「だから、自分のことをそんなふうに言わないで?」


「……」


 ラルクに私の気持ちは言えた。私は、ラルクを嘘つきだなんて思わない。 

 でも、このままでは彼はきっと納得しない。自分自身を許さない。だから、ここからが本題だ。私は、深く息を吸って言う。


だからこそ(・・・・・)、ラルク、私は王都に行くよ」




side:ラルク


 フィリアはやっぱり、僕を励ましてくれた。しかしその後、彼女は僕に言う。


「だからこそ、ラルク、私は王都に行くよ」


 ……やっぱり、失望されちゃったみたいだ。そうだよな。フィリアは優しいから、僕がなるべく傷つかないようにしてくれているんだろう。


「そう、か。じゃあ、もう……」


「だから」


「……ん?」


 これ以上、何か言うことなんてあるんだろうか?


「私を、王都に迎えに来て」


 ……訳が分からない。フィリアは、僕に失望したのでは…?


「……どうして?」


「ラルクは、私を守ってくれるんでしょ?」


「それは……できないよ」


 フィリアは何を言っているんだ。僕に、そんな力は無いのに。ただの無力で弱虫な嘘つきなのに。


「『今は』無理かもしれないけど……私は、ラルクを信じてるよ」


「え?」


 何を言っているのかわからないと戸惑う僕に、彼女は迷いのない目で、声で、こう告げた。


「きっといつか、私を守れるくらい強くなって、私を迎えにきてよ……ラルク」


 まるで、そうなると微塵も疑っていないように、彼女はそう告げたのだ。

 

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 何故2人だけの構想で両サイドの視点を書くのか? 普通に書いてもそれっぽくなると思うけど態々書く意味は? お互いに距離が有る時は違和感無いけど対面では…
[一言] 今日から読ませていただきます。 フィリアは考えて言ったのでしょうが、とても残酷な呪いの言葉をラルクに言ってしまいましたね。 願わくば、ラルクが、真っ直ぐに育ってくれますように。
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