第五話 いつか、きっと
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「ずっとそばにいて君を守る、でしょ? 忘れないよ、すごく怖かったから」
「よかった……忘れてたら切り刻むところだったよ……」
こらフィリア? 剣聖の加護を悪用しようとしないで?
「でも、守れそうにないけどな……ごめん」
自分の弱さに腹が立つ。『剣聖の加護』を持つフィリアなら、誰にも守られなくてもきっと生きていける。ましてや、こんな固有スキルしか持たない僕は、守るどころか足手まといにしかならない。
僕は結局、彼女との約束を守れない、ただの嘘つきになってしまった。
「僕は……ただの弱虫の嘘つきだよ」
そんな自分を卑下するように呟く。きっと、フィリアも、僕に失望しているだろう。それでも…
「……そんな僕でも、君のそばにいていいのかな?」
フィリアのそばにいたい。どこにも行って欲しくない。でも、僕にはどうすることもできない……だから、行かないでくれと。そんな思いを込めて、懇願するようにフィリアにそう言った。
side:フィリア
「……そんな僕でも、君のそばにいていいのかな?」
ラルクが今にも消えそうな声で、私に一緒にいてくれとそう言ってくる。私は、なんて返せばいいんだろうか。ここまで彼が追い詰められているのに、それでも最善が何かわからない自分の馬鹿さが憎い。
きっと、ここでラルクのことを拒絶すれば、彼は……壊れてしまうだろう。
でも、私の本心を伝えてしまえば……ラルクをここで受け入れてしまえば、彼はこれから、ずっと私に後ろめたい気持ちを持ってしまう。
なら、私が言うべき言葉は。
「ラルクは、嘘つきじゃないよ」
「えっ?」
「ずっと私のそばにいてくれた。守っていてくれたよ」
「……?」
彼は、何を言っているのか分からないと言うふうにこちらに目を向ける。
「だから、自分のことをそんなふうに言わないで?」
「……」
ラルクに私の気持ちは言えた。私は、ラルクを嘘つきだなんて思わない。
でも、このままでは彼はきっと納得しない。自分自身を許さない。だから、ここからが本題だ。私は、深く息を吸って言う。
「だからこそ、ラルク、私は王都に行くよ」
side:ラルク
フィリアはやっぱり、僕を励ましてくれた。しかしその後、彼女は僕に言う。
「だからこそ、ラルク、私は王都に行くよ」
……やっぱり、失望されちゃったみたいだ。そうだよな。フィリアは優しいから、僕がなるべく傷つかないようにしてくれているんだろう。
「そう、か。じゃあ、もう……」
「だから」
「……ん?」
これ以上、何か言うことなんてあるんだろうか?
「私を、王都に迎えに来て」
……訳が分からない。フィリアは、僕に失望したのでは…?
「……どうして?」
「ラルクは、私を守ってくれるんでしょ?」
「それは……できないよ」
フィリアは何を言っているんだ。僕に、そんな力は無いのに。ただの無力で弱虫な嘘つきなのに。
「『今は』無理かもしれないけど……私は、ラルクを信じてるよ」
「え?」
何を言っているのかわからないと戸惑う僕に、彼女は迷いのない目で、声で、こう告げた。
「きっといつか、私を守れるくらい強くなって、私を迎えにきてよ……ラルク」
まるで、そうなると微塵も疑っていないように、彼女はそう告げたのだ。