第四十一話 王立ファイルガリア学園
第四十一話です!こういう話を書くのは初めてで、少し読みづらいかも知れませんのでご了承下さい…
後書きに「結局何があったの?」というのを載せておりますので、分かりづらかったらそちらをご覧下さい。
そして!なんとブックマーク数が100件突破いたしました!!!!これでやっとスタートラインに立てたのかな…と、とても嬉しい限りです!ありがとうございます!これからもよろしくお願いします!!
「お前たち、王都に興味はないか?」
ギルドマスターの部屋に集められた僕たちに、ウォードさんは唐突にそう聞いてきた。僕は唐突な問いに対し、どう考えれば考える。
確か王都といえば、ここから馬で10日はかかるほど遠くにある…と聞いたことがある。
この町とは比べ物にならないほどの人が住んでいて、さまざまな種類の店や国の各地の食べ物、冒険者ギルドの総本部に、王族が住んでいる大きな城など…まるで御伽噺に出てくるような都だそうだ。
しかも…
(王都には、フィリアがいるんだよな)
フィリア。僕の幼馴染で、今こうやって僕が強さを追い求める理由を…腐っていた僕を、救ってくれた人。また、戦闘において最強格の固有スキル『剣聖の加護』を持っている。
正直に言って、興味があるかないかと言われると…とてもある。いけるなら行ってみたい。
「はい。話でしか聞いたことはありませんが、行ってみたいとは思います」
他の4人も口々に答える。
「王都?行ったことないけど、楽しそう!」
「王都!行ってみたいなぁ、楽しそう!」
「王都……か。懐かしい。また行ってみたいものだ」
「おおお、王都!?行ってみたいですけど…怖い人多そう…」
やはり、みんなも行ってみたいようだ。というかシュヴァルツさん、王都に行ったことあるんだ…。珍しいな。少し驚いてシュヴァルツさんの方を見ると、何故か俯いている。王都で何かあったのかな?
そんな僕の思考を断ち切るように、ウォードさんが僕たちに言う。
「そうかそうか!じゃあ、お前たちには来月、王都の『王立ファイルガリア学園』の入学試験を受けてほしいんだが…行けるか?」
ん?今、王立ファイルガリア学園って言った?あのファイルガリア全土からエリートの集まる王立ファイルガリア学園に…って、
「「「「「えぇぇぇぇぇぇえ!!!」」」」」
僕たちは驚きのあまり、声を揃えてそう叫んだのであった。
その後ウォードさんにされた話を要約すると、僕たちはどうやら『新星冒険者選抜コース』…通称、『冒険者コース』に推薦される条件を満たしているらしい。その条件とは、
『冒険者登録を1年以内におこなった15歳未満の者で、推薦に値する活躍を成し遂げた者7名まで』
というものだ。そして、それに推薦されて定員20名の入学試験を通過すると…なんと、授業料全額免除で学園に通えるらしいのだ!
これは昔からある制度で、より強い人材を育てるために国が援助するためのものらしく、受験のための交通費なども国が払ってくれるそうだ。よっ!太っ腹!
まぁ急な迷宮氾濫だったからね。元々CランクだったクレイくんやシュヴァルツさんもBランクに上がったらしい。そのくらいの活躍はしたということだ。
「つまりまぁ…折角の強くなるチャンスだから、受けるだけ受けとけってことだな」
そうウォードさんは締めくくり、3日後に返事を聞くということになって解散した。話を聞いた他の人たちはどうするか迷っているのだろう、一言挨拶だけを交わして特に何もなくそのまま帰っていった。
しかし、僕の答えはもう決まっている。それは…
(絶対、行く)
これ一択だ。理由は簡単。これは話の途中でウォードさんが言っていたことだが、学園にはさまざまなトレーニングができる施設や、スキルや魔法、戦闘に関する文献があるらしい。
まさに、戦闘能力を身につけるのに最適な環境といえるだろう。だから、僕はとりあえず…
「お願いします!!王都にいかせてください!!」
「…ラルク、とりあえず何があったか教えてくれる?」
家に帰り、両親の説得を行うことにした。
その日の夜。僕と母さんは居間のテーブルで、ふたり向き合って話していた。
「王都、ねぇ…それって、一人暮らしってこと?」
「違うよ、全寮制らしいんだ…それに、食堂とかも格安で使えるらしいし」
僕は今、1人で王都にいかせるのは心配だという母さんに対して、説得を試みている所だ。
え?父さんはって?あの人なら、
「王都か!ラルク、お前そんなところに呼ばれるくらい強くなったんだなぁ…よし!お父さんは全応援するぞ!お前の好きなように生きるんだ!でも、自分の命は大切にするんだぞ。父さんも若い頃は…………」
と、すぐ納得してくれた。1時間くらい話を聞かされたが…
しかし、母さんはやはりそう簡単に納得してくれない。僕の母さんは、僕のことをとてもよく考えてくれる。父さんも僕のことをよく考えてくれるのだが、母さんはそれ以上だ。
今こうして僕の王都行きに反対しているのも、僕のことを思ってだということはよく分かっている。
「それでもやっぱり心配ねぇ…もし何か問題が起きたら、どうするつもりなの?」
「その時は…分からないけど、ちゃんと自分の力でなんとかするよ」
「なんとかって…不安だわ…」
中々説得できないな…どうしようか。そうやって悩んでいると…
「ラルク、なんで学園に行きたいの?」
そう、母さんが急に聞いてきた。僕はそれに対して、正直な気持ちを話す。
「強くなりたいからだよ。誰にも…もちろん、フィリアにも負けないくらい強くなりたい。そのくらい強くなって、フィリアを守るためだよ。」
そうきっぱりと言い放つ。すると、母さんは少し驚いたように目を開き…
「…はぁ。全く、誰に似たのかしら…わかったわよ。行きなさい、ラルク…絶対、合格するのよ?」
ついに、母さんは僕が王都に行くのを認めてくれたのだった。
side:ラルクのお母さん
「お願いします!王都に行かせてください!!!」
ラルクが帰ってくるならそう言った時は驚いたが…今日なにがあったのかを聞いてやっと理解が追いついた。
しかし、この子がまさかあのファイルガリア学園に呼ばれるなんて…2ヶ月前には考えられなかった事ね。私も手放しで応援して、送り出してあげたいが…
(本当に、1人で大丈夫なのかしら?)
そんな思いが頭をよぎる。いくら強くても、まだラルクは10歳の子供。もしかしたら、王都で何かあるかもしれない。それが心配で、ラルクはまだ王都に行かせることはできない…そう、ラルクを説得するつもりだった。
きっとラルクは、王都という響きに当てられ、興奮してしまっているのだろう。そう思った私は、なんで学園に行きたいのかを聞くことにした。ここで少しでも曖昧な答えが返ってきたら、ラルクが王都へ行くのは認めない…そのつもりだった。
しかし、ラルクは…少しの迷いもなく、私の質問にこう答えた。
「強くなりたいからだよ。誰にも…もちろん、フィリアにも負けないくらい強くなりたい。そのくらい強くなって、フィリアを守るためだよ。」
と。それを見た私は、若い頃の夫を思い出した。
あの人も…私に向かって、ラルクと同じようなことを、同じようなまっすぐな目をして、同じような迷いのない口調で言っていた。
本当に、親子揃ってそういうところは一人前なんだから。でも、ラルクにもちゃんと覚悟があるみたいね…そう思った私は、ラルクにこう言った。
「…はぁ。全く、誰に似たのかしら…わかったわよ。行きなさい、ラルク…絶対、合格するのよ?」
そう言うとラルクは嬉しいと言わんばかりの声で、
「……うん!!」
と答えた。ラルクの成長を感じて、感動して少し泣いてしまったのは、ここだけの話だ。
「結局何があったの?」
ラルクたち5人が王都にある王立ファイルガリア学園に格安で入学するための推薦条件を満たしていたので、それの説明に呼ばれた。
そしてラルクはさらに強くなるため、それを受けようとするが母親がそれに反対、しかしラルクのまっすぐな姿勢に若い頃の父親の姿を重ね、ラルクの王都行きを認めるのだった…




