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第四話 小さな頃の約束

第四話。過去話です。

 僕は家を飛び出したあと、村の広場に向かった。今日、そこでフィリアの出発式が行われるらしいのだ。


(間に合ってくれ……!)


 僕は全力でただ全力で走る。間に合わなかったなんて、絶対にあってはならない。そして、息を切らしながら、ついに広場の前に着いた……だがその時、広場の方から声が聞こえた。


「次代の剣聖を……逃げ出したフィリアを探し出せ!」


 フィリアは、広場から脱走していた。まさか、僕のために……? そう思うと、自分の甲斐性のなさにつくづく嫌気がさす。ここまでフィリアにしてもらって、まだ僕は何も返せていない……むしろ、彼女を傷つけてばっかりだ。


(フィリアはどこに……もしかして……)

 

 そう思って居ても立っても居られなくなった僕は、疲れなんて忘れたようにある場所へ駆け出した。きっとフィリアもいるであろう、その場所に。




side:フィリア


 私は広場から抜け出したあと、真っ先にラルクの家へと向かった。『剣聖の加護』の力により身体能力が上がっていたため、騎士団にバレないように人の家の屋根の上を飛び越して、最短ルートを通った。早く彼に会いたい。会って、何もしてあげられなかったことを謝りたい。


 そうやって、ラルクの家について彼の部屋の中を屋根の上から覗き込むと……そこに、ラルクはいなかった。ラルクは、もしかしたら、広場に向かって行ったのかもしれない。しかし、今戻っても捕まって馬車に乗せられて終わりだろう。だったら……


(ラルクならきっと、『あそこ』に向かうはず……!)


 私はある場所へと駆け出した。彼がきっと向かうであろう、あの場所に。




side:ラルク


 僕たちの村の外れには、小さな森がある。僕は、その森の中のある場所────小さい頃、僕とフィリアがある「約束」を交わした場所────へと、僕は向かった。


 周りには木が鬱蒼と生い茂り、その葉の隙間から少しずつ木漏れ日が差している。そんな森の中で唯一ひらけていて、柔らかな太陽の光が直接降り注ぐ所。僕とフィリアが、ある「約束」を交わした場所。

 その真ん中で、彼女は僕を待っていた。


「やっぱり、ここにいたんだ……フィリア」


「やっと来たね……ラルク」


 そう言う彼女の後ろには、小さな小屋が立っている。


「ここでした約束、覚えてる?」


「そりゃあもちろん。忘れるわけないよ」


 その「約束」は、僕たちがまだ6歳だった頃に交わしたものだった。




 6歳の頃。僕と、その幼馴染のフィリアは、森の中で迷子になっていた。


「らるくぅ……こわいよぉ……」


「だいじょうぶだよ……フィリア」


 10歳になるまで来てはいけないと言われていた森に、少しなら大丈夫だろう……と思って勝手に2人で入ってしまったのだ。その結果道が分からなくなり、迷子になっているうちに日が沈んでしまった。


 不気味で暗い森の中で僕たちは恐怖に身を寄せ合いながら出口を探している時に、この小屋を見つけたのだ。


「フィリア、ここにはいろう」


「うん……」


 恐る恐るその小屋の扉を開けると……中から、スライムが飛び出してきた。


「「うわぁぁ!」」


 スライムは、この世で最弱の魔物。10歳になったばかりの子供でも軽く倒せる程に弱い。


 しかしそれは6歳の子供である僕たちにとって、充分な脅威であった。


 スライムが体を震わせて、僕たちを威嚇する。


「フィリア……はなれてて……ぜったいまもるから」


「ラルク? あぶないよ……にげよう!」


「だめだよ、おいつかれる」


 そうやってフィリアと話していると、スライムが僕に突っ込んできた。僕はそれをもろに受ける。


「ラルク!!」


 僕は思いっきり転倒した。体に衝撃が走り、思わず呻き声をあげる。確かに痛いし怖い…でも、ここで逃げたらフィリアが危ない。僕は戦う覚悟を決め、すくむ手足を動かす。


「ぐっ……でも……つかまえた!」


 地面に転んだまま、僕はスライムを抱きかかえる。そして……


「おまえなんか…こうだっ!」

 

 中にある核を抜き取った。すると、スライムは溶けて液状になり、地面に染み込んでなくなり、魔石だけが残った。

 安心した僕は立ち直り、フィリアに向かって言う。


「フィリア、おわっ……」


「ラルクっ!!」


 すると、フィリアが泣きながら、僕に抱きついてきた。その身はひどく震えていて、目からは涙があふれていた。


「フィリア?」


「うわぁぁん! ラルク、怖かったよぉぉ! ラルクが、ラルクが……いなくなっちゃうって、思ってぇ…!」


「フィリア……大丈夫だよ、いなくなったりしないから」.


 僕はフィリアを宥める。すると、彼女のみの震えが少し収まった。


「うぇ……ぐすん……ほんと?」


 顔を上げて、フィリアが僕に不安げにそう聞いてくる。


「うん。ずっといっしょにいるよ」


「……やくそく……してくれる?」


「うん、やくそくするよ。ぼくが、ずっと……」


 ────ずっと、一緒にいて君を守るから。


 それが、その一言が……月下のもと、幼い頃に僕とフィリアが交わした『約束』だった。




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