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第三十六話 分身側の事情

第三十六話です!ウォードVSミファレス戦の、分身君の事情となります!

side:ラルク(分身)


 スキル『分身』。それで生み出された分身たちにも、一応自我はあるんだ。いや、LV5になって自我が生まれた、というべきか…まあ、そこはどうでもいい。ただし、僕たちに反抗しようという意思はない。

 本体が持っている知識はそのまま受け継ぐので、反抗という概念を知識では知っているが、ただ命令に従順に従うことが優先され、それ以外は優先すべきでない…つまり、考えなくてもいい事、となっているのだ。

 そして、僕たちは指令されたタスクをこなして、それが終わればまた命令を仰ぐ。ただ、それだけの存在だ……。

 ──いや、だった(・・・)というべきだろうか。


 僕は、本体からの命令で救援を求めに来ただけのはずなのだが…


「グォォォォォ…」


 目の前に立っているのは、漆黒の巨躯を持つ鋭く赤い眼光のオーガ。恐らく、ブラックミノタウロスなんか比にならないほど強いだろう…そんな敵と、僕は自分の意思で(・・・・・・)対峙している…どうしてこうなった?



〜遡ること10分〜


 僕はシルクさんの店で上級火魔法を教わった後、冒険者ギルドに向かおうと…


「あ、待って!」


 シルクさんに呼び止められた。何かあるのだろうか…?不思議に思ったので僕は振り返る。


「はい?」


「本体には伝わらないかもしれないけど…頑張れ!ラルクくん!」


 …!?頑張れ?僕は、ただの分身なのに?なんで、僕にそんなことを伝える?訳がわからない。でも…


「……!はい!」


 訳がわからないが、少し…嬉しかったな。




 その後、今度こそ僕は冒険者ギルドに向かった。ギルド内は人々の避難状況の通達やダンジョン以外からも発生している原因不明のモンスターたちの対応に駆られ、慌ただしい空気となっていた。

 しかしこちらも急いでいる。僕はなんとか冒険者登録をしてくれたいつぞやの受付嬢さんをつかまえて…


「すみません!ギルドマスターはいますか!救援の要請をしたいんですが!」


「え!?ラルクくん!?もう帰ってきたの!?」


「違います僕は分身です!それよりギルドマスターは…」


「あぁ…分身ね。今、ギルドマスターはいないの!……って、救援ってどういうこと!?」


 予想外の事態に驚く受付嬢さんを見ながら、僕は別のことに疑問を抱いていた。それは…


(ギルドマスターが、いない…!?)

 

 こんな緊急事態に?まさか逃げた…というわけではないだろう。僕の記憶にあるウォードさんは、こんな時に逃げ出すような人じゃない…と、いうことは、何があったのか!?


「とりあえず迷宮氾濫(モンスタースタンピード)に救援を!数がいつもの倍以上出てきています!お願いしますね!」


「嘘!?倍ですって!?というかちょっとどこ行くのラルクくん!?」


 そう言う受付嬢さんを差しおいて、僕はウォードさんを探すため急いで冒険者ギルドを飛び出したのだった。



(スキル……『索敵』!!)


 僕はギルドをとびだした後、避難を始めている町の人々を尻目に『索敵』を駆使してウォードさんを探していた。

 今、僕は命令を受けていない状態。本来なら指示を仰ぎに戻るべきなのだろう。だが…今は本体さえ予想していない『何か』が起こっている。ここは僕が頑張らねば…


(見つけた……!?って、なんだこれは!)


 『索敵』に引っかかったのは、2つの(・・・)

とても強い反応。片方は記憶にある反応だ…恐らくウォードさんだろう。だが、もう片方は…!?

 ウォードさんに勝るとも劣らないほどの強い反応を出しているのを見て、僕は戦慄した。あんな化け物みたいな強さを持っている敵…!ウォードさんと互角ということは、彼が負ける可能性もある。

 

(急いで応援に行かないと…!)


 僕は『縮地』と『跳躍』を駆使し、ウォードさんの元へ向かう。いくら僕が『分身』とはいえ、今回の迷宮氾濫(モンスタースタンピード)により本体のレベルが上がっているのでアークトゥルス攻略時よりも戦闘能力は高い。少しくらいなら力になれ……

!!??


(ウォードさんの反応が…薄れている!?)


 少しずつではあるが、ウォードさんが押されている!早く応援に行かなければ…そう思い、僕は焦る。このままでは、僕が着く前にやられてしまうかもしれない…!


 もし、僕が本体と同じくらい速いなら、もっと早く着けるのに。


『本体には伝わらないかもしれないけど…頑張れ!ラルクくん!』


 もし、僕が本体と同じくらい強ければ、もっと活躍できるかもしれないのに。


『あぁ…分身ね。』


 もし、僕が本体と同じくらい強ければ、もっとみんなを安心させられるのに。


 本体より弱い僕では、誰も救えない…そう諦めかけた、その時だった。


(反応が、強くなってる?)


 ウォードさんの反応が力を増している。消えゆく火が燃え尽きる寸前のように、急激に勢いを増しているのだ。


(まだ、諦めていないのか)


 ウォードさんは、まだ諦めていない。最後まで戦わんと、力を増している。それなのに…


(僕は、何を考えてるんだ)


 分身だから。弱いから。そんなもの、今考えることじゃない。


(僕にはやることがあるじゃないか)


 ウォードさんの救援。そして救助。町の人々を救うこと。それが今の、僕の役目。本体じゃないからなんて、なんの理由にもならない。


(ただ、分身ってことを理由に、諦めただけじゃないか)


 今諦めたら、僕は本当に、ただの傀儡(ぐくつ)でしかなくなる。それに…


(自分のお世話になった町さえ救えない奴が、世界最強になれる訳ないだろ!!)


 僕は会ったことがないが、記憶が、心が、気持ちが覚えている、幼馴染への気持ち。何よりも強くなって、彼女を守る決意。それらが、僕を突き動かしている。


(僕が、ウォードさんを…町を、救うんだ!)


 その決意とともに、僕は自身の出せる最高の速さでウォードさんの元へ向かうのだった。








『スキル『────』を獲得しました』

最後のはまた後話で出てくるかも…?

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