第二十四話 話を聞こうよギルドマスター
第二十四話!久しぶりの「まともな」バトル回です
「ということで…俺がこのギルドマスターのウォードだ。よろしく」
そう言って、目の前の背丈がオークほどもある筋骨隆々のギルドマスターが手をさし出してくる。見た目こそ変な人だが、中身はいい人そうだ。
「ラルクです。よろしくお願いします」
僕はその手をとり、握手を交わす。そして席に座るのを促されたので、僕はギルドマスターの向かいに座る。
「っと、ということで急に本題に入らせてもらうが…お前の持ってきた魔石、あれは自分で倒したモンスターの魔石か?」
急にトーンを落とし真剣な声になったギルドマスターがそう聞いて来る。やっぱり疑われているようだ。僕は少し緊張しながら答える。
「はい。全部僕が倒したものです」
そう言うと、少しの間場を静寂が支配する…そしてギルドマスターがおもむろに立ち上がり、手を上げて…
(まずいっ!攻撃か!?)
咄嗟に防御をしようとする。が、しかし僕が対応する間も無くその手は振り下ろされて…僕の肩に乗せられた。
「がっはっは!嘘はついてなさそうだ!てことはお前、本当に半日であの『アークトゥルス』を攻略しちまったのか!」
あ、褒めてくれるだけだったのね。よかった…攻撃されなくて。正直結構怖かった…そんなことを考えていると、ギルドマスターから衝撃の言葉が飛んでくる。
「ということは、お前、強いんだなぁ!…なあ、今すぐにCランク冒険者になる気はないか?」
「…はい?」
この人はなにを言っているんだ?僕は理解が追いつかない。
「だから!Cランクになりたくないのかって聞いてんだ!」
「いや、なりたいですけど…」
「じゃあ今からCランク冒険者名乗っt」
「ちょっと待て変態筋肉馬鹿野郎!ロクな試験もせずにランク上げたら本部から叱られるぞ!」
受付嬢さんがギルドマスターに怒鳴る。怖い。というかなんで僕Cランクにされそうになってんの?
そんな状況を理解できていない僕を置いてけぼりにして、二人で何かを話し合っている。そして、話し合いが終わったのか、ギルドマスターは僕に向き直りこう言った。
「じゃあ、試験すればいいんだな…ラルク、ちょっと付いてこい」
「もう…私は叱られても知りませんよ、筋肉馬鹿」
え?僕今どういう状況?何が起きてんの?…訳がわからないが、とりあえず、ギルドマスター付いていくことにした。
歩くこと20分。冒険者ギルドを出て、町も出て、ギルドマスターに連れられてついたのは、広い草原に備え付けられた試験場だった。え?なんで?
「よし…お前、ここで俺と対決しろ」
「はい?どういうことですか…?」
もうさっきからなにが起こっているのかよく分からない。とりあえず状況を説明してくれよギルドマスター。
「これで俺が認めたらお前は晴れてCランク冒険者だ!言っておくが手加減はしないぞ」
「いや、だからどういうこと…」
待って戦闘態勢に入らないで!せめてなんで闘うかだけでも教えて!
「それじゃ、行くぞぉぉ!」
「話聞けよぉぉぉ!」
そんな僕の叫びは聞こえていないとでも言うように(いや、きっと聞いていないんだろう)ギルドマスター…ウォードさんは僕との距離を詰めて攻撃を仕掛けて来る。
(速いっ!?『身体強化』!)
咄嗟に『思考加速』と全力の『身体強化』を発動し、ウォードさんの攻撃を回避する。
「これは避けるかァ!なら…『衝撃』ッ!」
そう言ってウォードさんが虚空を殴る。すると…何と、衝撃波がこちらに飛んできた!!
(避けられない!?くそ…『受け流し』!)
危ないな!結構威力あるぞこれ!何とか衝撃を受け流したが…ウォードさんの攻撃は止まらない!もの凄い勢いで、彼の拳は既に僕の手前に迫ってきている!
「喰らえやぁぁぁっ!」
物凄い気迫だ!これは多分『受け流し』では受け切れない!ならば…
(正面から受け止める!『覚醒』『渾身の一撃』っ!)
「受け止めたァ!?いや、これはっ…!」
僕は全身を使ってウォードさんの拳に対抗する。
「吹き飛べぇぇぇ!」
ウォードさんの力に打ち勝ち、思い切り吹き飛ばした!やった!これで何とかなっただろうか…と淡い期待を抱く。
しかし、ウォードさんはまだピンピンしている。それに驚いたのも束の間、彼はさらに驚くべきことをつぶやく。
「クソっ…使う気はなかったんだがな…」
何だっ!?まだこれ以上強くなるっていうのか!?
「お前…いや、ラルクっ!死ぬなよ!これが、俺の固有スキル…『筋肉は裏切らない』だッ!」
すると、ウォードさんの動きがさらに速くなる!そのスピードはまさに驚異的とも言うべきもので、僕はそれを見て身震いしてしまう。
(目で追えないっ…『見切り』『分身』『影分身』!」
ダメだ!まともにやり合ってはいけない!そう判断した僕は動きを目で追うことに集中するため、大量の『分身』とさらにその幻影である『影分身』を展開する。しかし…
「甘いッ!俺の固有スキルに小細工は効かん…『衝撃』っ!!」
そんな言葉と共に、彼の前に出した分身と影分身のほぼ全員が消しとばされる!何だこの力は!デタラメだろ!
しかし、今なら動きが止まっている。これは好機だと思い、僕は拳を叩き込もうとする。
「捉えたっ!喰らえ…『渾身の一撃』!」
僕の拳がウォードさんに当たる!が…
「効かねぇ!俺の『筋肉は裏切らない』の前ではどんな攻撃も無力だ!痛みも何にも感じねぇぜ!」
硬い!まるで鉄を殴っているみたいだ!ブラックミノタウロスなんか比にならない硬さをしている!本当に人間か!?正面からやりあうのは分が悪すぎる…!だったら…
「ならば…少し逃げさせてもらいます!」
僕は『縮地』と『神速』を使って距離を置こうとする。
「土魔法【アースウォール】…からの『跳躍』!」
ウォードさんは一度も「試験中に外に出るな」なんて言ってない!急に戦いが始まったんだからこれくらいいいよね!僕は外へと飛び出し、固有スキルが切れるまで身を隠そうと…
「待ぁぁぁてぇぇぇっ!」
「速すぎんでしょ!」
同じ…いや、それ以上の、軽く恐怖を覚えるくらいのスピードでどんどん距離を詰めて来る!
「これで…終わりだァ!」
その言葉と共に、僕に向かってウォードさんの不可避の拳が向かってきたのだった。
『筋肉は裏切らない』・・・発動時、自身の力のステータスを大幅に上昇させ、さらに自身の力のステータスに応じて現象を捻じ曲げる。




