第二話 もう、どうだって…
評価ポイントを16pt、ブックマーク3件頂けました!一話目を読んで頂いた方々、有難うございます!これからも頑張ります!
後今日はもう一話投稿するのでちょっと短いです
僕が得たスキル、『武芸百般』は、実質的に固有スキルの劣化でしかないノーマルスキルを習得しやすくなる、というものだった。
この世界では、人の生き方は固有スキルによって決まる。つまり、僕は他人の劣化でしかない────何者にもなれない人生を送ることが、決まったのだ。
あまりのショックに、僕は呆然とする。
「これは……」
司教様が、気まずそうに呟く。
「……安心してください、女神様はあなたのこともお救いくださるはずです」
そして、見放された……言葉上では優しく聞こえるが、つまるところ手の打ちようがないってことだ。そうだよな、こんなわけの分からないスキル……
「ラルク……大丈夫?」
心配そうにフィリアが聞いてくる。
「……うん。先に、帰っとくね……」
そうフィリアに言うと、僕は走って教会を飛び出した。慰めなんていらない。僕は、信じたくない……こんなことが現実だなんて……そんな思いを抱えながら、現実から目を逸らすためにただ走る。
「待っ────!」
彼女の声なんて聞こえないフリをしながら、ただただ走った。
『鑑定の儀』から、一週間が過ぎた。
僕は一週間の間、自室に籠り続けた。親が運んできてくれるご飯にもあまり手をつけず、起きては窓から外を見つめると言うことを繰り返していた。何も考えたくなかった。現実を受け入れたくなかった。
毎日フィリアが昼頃に来ては、部屋の前で僕に話しかけてきた。
『ラルク、顔見せて……?』
『ラルク、入っていい?』
『ラルク……』
それに対して僕は、何も返すことなく聞こえないフリをしていた。それに関して両親から叱られたが、もう何もかもがどうでもよかった。
何も聞きたくない。何も考えたくない。もう、どうだっていい。そう考えながら、僕はただただ現実から逃げ続けた。
そんな一週間を過ごしていたある日、昼頃に聞こえてきたのは、フィリアの声ではなく、母親の声だった。
「ラルク……フィリアちゃん、王都へ行くんだって」
ああ……やっぱりか。強い固有スキルを得たんだ、きっと勧誘が来たんだろう。でも、今の僕にとってはそんなこと、もうどうでも……
(……いいのか?)
「もう、会えないかもしれないんだって」
王都は遠い。僕たちみたいな普通の平民は、一生縁がないところだろう。そうか、フィリアと会えなくなるのか……
(本当に、それでいいのか……?)
「そろそろ、出発するんだって」
そうか、もう出発するのか……僕にとっては……
(どうでも、いいのか?)
僕にとって、フィリアは……何なんだ?本当に、どうでもいいのか?
(僕にとって……フィリアは……っ!)
今更だとしても。
(フィリアは……っ!)
たとえ、これが僕の自己満足だとしても。
(僕にとってフィリアは……何よりも大切な人なんだっ!)
「ちょっと……外へ行ってくる!」
僕は走って家を飛び出した────あの時聞こえないフリをした、彼女の声を再び聞くために。