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第百九十七話 だって俺は

第百九十七話。全てをかけて戦え、ラルク!!

「戻ったか」


 ふと気づくと俺は、元の荒れ果てた荒野に戻っていた。どうやら現実世界に戻ってきたようだ。かなり遠くに魔王の影が見えている……どうやら、───はかなり離れた距離から『イリュージョンマント』を発動したようだ。


「……っと、とりあえずこいつは地面に置いとかないとな」


 俺を庇ってこんな怪我しやがって……もう、安心して眠っとけ。さて……『武芸百般』の能力が切れる前に、カタを付けるか。気絶しているコイツから少し離れ、俺はスキルを発動する。


「スキル複合発動、『修羅』『渾身の一撃』『鋼の肉体』『縮地』『粉砕』……」


 一瞬、『スキルバースト』を使おうかと思ったが……()()()。今のこの力なら、『スキルバースト』を使わなくても魔王とやりあえる……!!


「『一撃必殺(ザ・ワンショット)』」


 そう呟いた瞬間、俺の立っていた地面は弾けるように砕け散り、その音さえもおいていくほどの速度で自分の体が魔王に向かっていくのを感じる。これが……最強(アイツ)の見ていた世界なのか。


「────っ!? 『スキルバースト:30』……」


 魔王もすぐその存在に気づくが、その時にはもう既に俺は目の前にいた。


「遅い!!」


 今更気付いた所で防御出来るはずもなく、ガラ空きになっていた魔王の腹に『一撃必殺』を叩き込む。その攻撃で魔王は一瞬で吹き飛ばされ、遥か彼方へと飛んでいく。


 『レベルバースト』を使う隙を与えなかったとはいえ、それでも魔王相手にこれだけのダメージ……これなら魔王を倒せる。


「次、行くぞ! 『一撃必殺(ザ・ワンショット)』!!」


 このまま一気にトドメまで決める……!!


「させねぇよ!! 『レベルバースト:50』!!」


 レベルバースト:50!? さっきまで30が最大だったのに……コイツもギアを上げてきやがった!! だとしても……


「「絶対にお前を……倒す!!」」


 さあ、ここからが本当の最終決戦だ。



 side:魔王アルス


 偽善者(アイツ)の気配が消えたと同時に、急に力を増している。俺が少し目を離しているうちに何があったんだ? まさか……


(アイツ……『スキルバースト』で!!)


 イカれてる。イカれてやがる……まさか、自分自身を壊しやがったのか。どおりで力がここまで増幅してる訳だ……!!


(……どうしてだよ)


 どうして、そこまで誰かのために動ける。どうして、誰かのために命を賭けられる。お前はそんな、強い奴じゃ無かったはずだ。仮に……もしそうだとしたら、どうしてお前は俺を────



 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



 『俺』は、始まりはたった1人の弱い子供によって作られた一つの人格だった。小さい頃に親を殺され、逃げた先では虐められ、勇者に選ばれて戦いを強要された……そんな不運な子供が自分を守るために作った人格、それが俺だ。


 いわゆる二重人格ってやつだな……と言ってもまあ、基本的な二重人格とは違って俺はただ辛いことがあればそれを受けるために防衛として出るだけだが。


 その子供が育つまでの間、俺はずっとその子供を守り続けてきた。その子供が健やかに育つように。苦しい思いをせず、幸せに生きられるように。それが、俺の存在意義だった。


 俺の存在をその子供が認識していたかどうかは定かではないが……そんなことは俺にとってどうでも良い話だ。どうせ記憶には残るから『辛い体験をした』とはあれど、それで心を壊さないようにするのが俺の役目だからな。


 だが、その子供が成長するにつれて少しずつ『俺』の出る機会はいった。それは、その子供が成長した証であり……そして、俺が役目を終える予兆でもあった。


 だけど、俺は自分自身が消えることより、ずっと一緒にいた弟のような存在が成長したっていう事実が嬉しかった。


 だってお前は、俺の────



 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



 空気が揺れ、辺りに爆発するような音が何度も何度も響きわたる。互いの攻撃が打ち合うたび、拳が、足が、骨の内側から砕け散ってしまうほどの痛みが襲いかかってくる。


(……っ、どんどん力が強くなっていってやがる)


 しかし、目の前のソイツの攻撃の威力は衰えることを知らない。むしろ、1発打ち合うたびにその力は増していく。このまま行ったら、マジで……いや。


(それでもまだ、負けるわけにはいかない)


 負けない……負けられない。だって、俺は……


(アイツの、願いを────!!)


 ()()()()()()()()の……アイツの絶望を、悲しみを、不安を、怒りを……『復讐』という目的を、受け取ることが俺の役目だから。

魔王の命より大切なものとは、『剣聖』だろうか。それとも……

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