第百九十六話 彼のいない世界
第百九十六話。ラルク視点からスタートです。
『武芸百般』の一部分を……勇者アルスを、『スキルバースト』で壊した後。俺を襲ってきたのは、想像を絶する痛みでも苦しみでもなく……
「……さよなら」
涙が堪えきれなくなるほどの、寂寥感だった。今までたしかにあったものが消えてしまったことが、ずっと一緒にあったはずのそれが無くなってしまったことが……俺にはひどく、寂しく感じたのだった。
「でも、泣いてる暇は無いみたいだな」
しかしその涙を何とかして止め、主人がいなくなり既に崩壊を始めている空間の中でそう呟く。さっきまでずっと近くにいたアイツは、もうこの世界のどこにもいない。俺は、託されたんだ。だとしたら、やるべきことは……
「『武芸百般』レベル4」
とりあえず、自分の能力を確認しないとな。幸い、『武芸百般』の力がなくなったようには感じない。俺は『武芸百般』レベル4の能力で、自身のステータスを確認する。すると、そこには……
ラルク LV. ◆◆◆
職業:冒険者
HP 3529000
魔力 3529000
力 4886400
器用 7128000
敏捷 7438000
運 67
固有スキル 『險励&繧後@閠』
ノーマルスキル
基礎スキル
『剛力』LV15『頑丈』LV15『精密動作』LV15
『神速』LV15『魔力操作』LV15
通常スキル
LV3
『大嘘吐き』『夜目』『リトライ』
LV5
『粉砕』『影分身』『跳躍』『縮地』『分身』『当身』『ステータス鑑定耐性』『剣術』『見切り』『フェイント』『火炎耐性』『突進』『突撃』『空中歩行』『擬態』『アスレチック』『演技』『ねこだまし』『トリック』『システマ』『突っ張り』『バランス』『聴き耳』『明鏡止水』『トランス』『看破』
LV7
『投擲』『気絶耐性』『渾身の一撃』『カウントアップ』『思考加速』『身体強化』『衝撃』『索敵』『危機回避』『魔法強化』『魔力回復』『冷静沈着』
派生スキル
『陽炎』『第六感』『応用』『刺突』『反撃』『防御の型』『無重力』『水上歩行』『一本投げ』『足払い』『袈裟固め』『意思を継ぐ者』『ワンモアチャンス』『詐欺師』『託された思い』
称号系スキル
『チャージゴートの覇気』『ホーンラビットの覇気』
『タックルウールの覇気』『リザードマンの覇気』
『レッサーフレアリザードの覇気』『マグマスライムの覇気』
『レッサーフレアリッチの覇気』『ゴブリンの覇気』
『ウィンドウルフの覇気』『バトルコングの覇気』
『ボクサーカンガルーの覇気』『オーガの覇気』
『ワイルドウルフの覇気』『レッサーアースリザードの覇気』
『レッサーアースリッチの覇気』『ブロックロックの覇気』
『アスレチックモンキーの覇気』『エアモモンガの覇気』
『レインボーバードの覇気』『コンシールカメレオンの覇気』『アーマービートルの覇気』
『キラースタグビートルの覇気』『ジャンプスクオロルの覇気』『センスバタフライの覇気』
『レッサートレントの覇気』『インテリエイプの覇気』『ミノタウロスの覇気』
『ビックオークの覇気』『ロックリザードの覇気』『託されし者』
統合スキル
『初級魔法・全属性』LV-
『中級魔法・全属性』LV-
『上級魔法・全属性』LV-
『無詠唱・初級魔法』LV-
『無詠唱・中級魔法』LV-
『無詠唱・上級魔法』LV-
『修羅』LV-
…………ステータス上限が消えて、しかもスキルが最大レベルで全部回復してやがる!? これが、あいつの力か……ここまで来て、負ける訳にはいかねえよな……
「……じゃあ、俺はもう行くよ」
今度こそ行こう。消えていった奴らの思いを継いで、願いを果たしに────世界を、救いに。
side:ルキア
『反応が、消えた……』
……今まではラルクの中から確かに感じていた、『世界樹の巫女』と『勇者』の力の気配。それが今、完全に消え去った……と、いうことは。
『アルス、あなたはもう……』
ラルクの中にいたアルスは使命を全うした、ということでしょう。
『よく頑張りましたよ、あなたは……ゆっくり休んで下さい。出来れば、幸せに』
神にとって彼は、幾億といる人間の1人に過ぎない。だから決して寂しいとか、悲しいとかそういう感情を抱くはずはないのですが、不思議ですね。
『少し、寂しく感じてしまいますよ』
ほんの30年、私にとっては一瞬とも言って良い時間だけしか一緒にいなかったのに……愛着が湧いてしまったのでしょうか。まだまだ私も未熟ですね。
『────さよなら、アルス。貴方に、神のご加護があらんことを』
貴方の想いは、しっかりと受け継がれています。だから、安らかに……
side:シルク
「エフィー、またここにいたのですか?」
「姉様……なんか、落ち着かなくって」
私が世界樹の頂上でぼーっと空を眺めていると、姉様がそう聞いて来た。
「まあそうでしょうね……恐らく彼らはもう、魔大陸に着いていてもおかしくありませんから」
「無事に帰って来てくれるといいんですけどね」
私たちにはただ、彼らの無事を祈ることしか────
「っ、痛い……」
「エフィー? どうかしましたか?」
なんだろう、話してたら胸のあたりが小さなナイフで突き刺されたみたいに痛くなって……って、あれ?
「……何で、こんなに悲しいの?」
何故か分からない。分からないけど……妙に寂しい。もしかして、ラルクくん達に何かあったんじゃ……
「お願い、どうか無事で……」
内心、もうそれが叶わないことを薄々気づきながら私はそう祈るのだった。




