第百九十一話 それでも、届かない
第百九十一話! 増援到着!!
劣勢に駆けつけてくれたのは、頼もしい3人の増援……ここで一気に攻めの体勢に入る!!
「【カオスティックレイン】!!」
魔王も全員を一気に潰すため、空中から広範囲に漆黒の魔力弾を放ってくるが……
「『イリュージョンマント』、『名も無き者たちの宴』!」
「『剣聖技・一刀百閃』!!」
「今です、詰めましょう!!」
「おうっ!!」
───が魔力を込めたトランプを飛ばし、さらに────も『剣聖技・一刀百閃』を使い魔力弾を相殺する。その間を縫うように僕が走って魔王に近づき、────さんもそれに続くように駆けてくる。
(『スキルバースト:索敵・身体強化』……っ!)
まだ『魔力操作』の効果が続いているうちに増えた魔力で一気に畳みかけるため、『索敵』と『身体強化』を破壊する。そして……
「『不可視の奇襲』!!」
「『レベルバースト』……っ!?」
『スキルバースト』で強化された『索敵』で『不可視の奇襲』を発動し、魔王を地面に叩きつける。不意打ちだったから魔王は対応できずに体勢を崩す。
(『スキルバースト:渾身の一撃』っ!!)
その上でさらに『渾身の一撃』を破壊し、確実に決めにかかる!!
「『天穿つ一撃』!!」
『一撃必殺』の強化版、『天穿つ一撃』を放つ!! 『スキルバースト』を使ったため近づくスピードが上がり────さんはまだ到着してないが、この一撃が決まれば勝ちだ。しかも魔王は今、宙に浮いた状態で体勢を崩している……
『喰らえっ!!!!』
「喰らえぇぇぇぇっ!!」
「────っ、【カオスブラスター】!!」
たしかに拳が当たった感覚はあった……だがそれと同時に、空中で魔法を放った反動で地面に自分から落ちていきやがった!! 避けるんじゃなく、受けることを前提にそのダメージを減らすために……しかも……
『「避けられねぇ……っ!!」』
放たれた魔法は、僕に向かって飛んできている。『レベルバースト』で強化された魔法、まともに受けたらやべえ……!!
「ラルク、歯ぁ食いしばれ!!」
その瞬間、後から到着した人が俺のことを横から殴ってきて、なんとか僕は魔王の放った【カオスブラスター】を回避できた。だが……
「アンタ、足が……」
完全に右足が焼け焦げている。俺を庇ったせいだ。このままここにいたら死んじまう……何故か分からないが、こいつを見殺しにしてはいけない気がする。
『お前まさか、もう……』
とにかく今はこいつを逃がすのが先決だ。そう判断した俺は急いで着地し、怪我をして動けなくなっている所にかけ寄るが……
「【カオスティックレイン】!!」
それも、魔王の思惑通りだったようだ。いつのまにか体勢を立て直し魔法を詠唱してやがった。怪我をしているアイツを狙い打つように大量の魔力弾が俺に向かって放たれる。回避するか……?
いや、避けたらアイツが死ぬ。それはダメだと、俺の中の何かが叫んでいる。避けきれないかもしれないが、『魔力操作』で……
「……なんて、甘いこと言ってくれねぇよな……!!」
しかし、魔王は迷わずに俺に向かって突っ込んで来ている……躱そうとしていないが完全にバレているのだ。
「今度は俺の番だ……『レベルバースト:30』!」
「『魔法崩壊』!!」
なんとか魔力弾は『魔法破壊』を使ってある程度打ち消し、残ったものは『魔力操作』で軌道を逸らした。だが……
「……っ、時間切れか!!」
もう、溢れ出すほどの魔力を体内から感じられない……『魔力操作』の効果時間が切れたみたいだ。今から『スキルバースト』を使っても間に合わない!! このまま殴られれば腹を貫通されて終わりだ……!!
「『剣聖技・流転』!! ラルクに……触れるなっ!!」
だが、その攻撃が俺に届くことはなく……────が俺の前に滑り込んで来て、『剣聖技・流転』でなんとか受け流そうとする。しかし……
「弱えっ!!」
「ぐぁっ!!」
魔王の攻撃を受けきれるわけもなく、なんとか致命傷にならないレベルまで威力は下がったものの、着用していた鉄の鎧が凹むほどの威力で殴られた俺と────は地面に叩きつけられる。
その衝撃で頭を強く打ち……目の前の景色がぼやけてブレる。
(これは……ヤバいな……)
俺はなんとか意識を保つので精一杯……もろに攻撃を喰らった────は気絶してるし、後ろの奴も足を負傷していて動けない。このままじゃ……
(……あと、1人……逃げた、かな)
あと1人増援がいたはずだが、そいつはもう逃げたのだろうか? もうこうなったら、俺たちに勝ち目はないだろう……せめて、なんとか逃げ切ってくれればいいのだろうが。
「『レベルバースト:20』……確実に殺させてもらうぞ」
ははっ……どんなオーバーキルだよ。ここまで来たのに……最後は、こんな呆気ないものなのか。俺は、俺は……
(────俺、なんのために戦ってたんだっけ)
……もうそんなことも思い出せねぇのか……それをあまり悲しく感じないのも、力の代償ってことか。
「じゃあな」
そして、俺たちを殺す拳は静かに振り下ろされて────
「『イリュージョンマント』」
次回、第百九十二話『ずっと守りたかったもの』




