第十八話 私と結婚してくれないか
平日で日間PV…1000…!?
読んでくださった方々、本当にありがとうございます!これからも精進して行きますので、よろしくお願いします!
「私と、結婚してくれないか」
ただ今僕に抱きついている見た目8歳のエルフの女性…シルクさんは、僕に確かにそう言った。
…うん、何が起きたかは理解している。求婚された。その事実は理解している。
でも、脳の処理が追いつかない!なんで!?なんで結婚!?急にどうしたのシルクさん!
そんな状態になった僕はつい、
「………は?」
と返してしまった。失礼だけど仕方ないよね!うん。
すると、ようやく自分が何を言ったか気づいたシルクさんは慌てて弁解し始める。
「…ぁぁぁあ!違う違う違うんだ!ただ、君のスキルとかジョブが異質すぎてもう興味が湧いてしかたなくて決して君に対してそういう感情を抱いているとかではないんだ、ただ研究たいs…鑑定の精度とかそういうのを上げるための『お手伝い』をして欲しいなーなんて!君の生まれてからここにくるまでの人生の隅々からこのスキルとジョブの組み合わせが生まれた理由を探し出したいという欲望が自分の未知なことにもっと触れたいという切望がただそれが抑えられなくてずっとずっと朝も昼も夜もきみが寝ていようと起きていようと厠もお風呂も寝室も冒険中も観察してどのような経緯でこんなスキルが目覚めたのかをただ知りたいだけなんだ!だから決して変な意味はないよ!」
「いや、まだ変な意味であって欲しかったよ!!!」
何度も聞き捨てならない…というか恐怖と狂気を感じるワードを含んだ長文を言い放つシルクさんに向かって、僕は思わずタメ口でそう叫んだのだった…
「いやぁ取り乱してすまなかったね…」
「本当ですよ」
数分ほど経ってやっと落ち着いた彼女は、入店した時とはまるで別人のようで、落ち着いた口調になっていた。きっと、これが彼女の素なんだろう。
「君ももう気付いていると思うが、君のスキルとジョブは前例がなく、しかもとてつもない可能性を秘めている。それは大丈夫だよね?」
今僕とシルクさんがしているのは、僕のスキルとジョブの異常性…そして、その理由の話だ。
シルクさん曰く、適正ジョブが『冒険者』である人は、前例がないらしい。勿論『武芸百般』もだ。
スキル『武芸百般』と、ジョブ『冒険者』にも共通する特徴として、「特徴がない」ということがあげられる。言葉として訳がわからんが、まあ言いたいことは察してくれ。
ここで言う「特徴」とは、スキルやジョブ自体の性能の偏りのようなことを言うそうだ。
そして、そもそも固有スキルというものは、自身の才能によって与えられるものと言われている。しかし、『武芸百般』はそのルールに適していない。何故なら、全てに長けているというのは、つまり偏りがないと言うこと。ここで言う「特徴」にはなり得ないからだ。
才能がないならこんな強い固有スキルになるわけないし、逆にあるなら僕は「勇者」になっているはずだ。
勇者と同系統から派生したような力なのに、全く違う効果を持っているのが、彼女は不思議でたまらないらしい。
つまり、勇者のような能力だが、全く別のスキルとして生まれた異常。それが僕の『武芸百般』じゃないか、とシルクさんは仮説を立てたそうだ。
だから、その異常がどうして起こったのかを知るためにあんなこと…結婚してくれなんてことを言ったのだ。僕のことを出来る限り近くで監視し続けるために。うん、理由を聞いても怖いね。
と、要約するとこんな感じのことを聞かされた後の僕の返答は。
「まあ、無理ですね」
「だよねー…同棲は?」
「論外ですね」
「せめて寝食だけでも共に…」
「せめて、の意味をご存じでない?」
「いやでも…」
こんな感じの問答を20分ほど繰り返し、やっと僕は店から解放された。一安心だ。
ただシルクさんはが最後に、
「私は諦めないよ…!どんな手を使ってでも、必ず君の謎を解き明かして見せる!」
と言っていたのが怖かったが。というかギルドの前って結構人が集まってるんだからそんなこと言うと変な人に見られそうで怖い。
シルクさんの対応やら冒険者の能力やらで、とりあえずその日は疲れすぎたので直行で家に帰り、いつもより早く寝たのだった。
そして、翌日。いつも通り賑わう町の道を通り、依頼を受けようと冒険者ギルドに入った時、その中には…
「やー、ラルクくん!待っていたよ!」
そう、満面の笑みで言い放つシルクさんがいた。
………なんで?




