第百七十五話 嵐の前
第百七十四話! 投稿遅れてすみません!
魔王城へと向かう道中は、魔物の相手をほとんどしなくて良かったのでとても平和だった。というのも……
(『不可視の奇襲』とシェイラさんのコンボが強すぎる……)
『フォーマルハウト』攻略の時と同様、アルトさんが魔物を見つけて、僕が『不可視の奇襲』で魔物をある程度弱らせ、シェイラさんの出した魔物がトドメを刺す。
そして、仮にそれで倒せない魔物がいた時はフィーズさんとグレアさん、そしてフィリアが直々に倒しに行く……というのを続けていたため、そもそも戦闘と呼べる戦闘が起きなかったのだ。
強いて言うなら、
「ボク、必要かな?」
と言って少し拗ねたライアの機嫌を戻すのに苦労した程度だろう。
とまあ、僕たちの魔大陸の旅は順調だった……しかしそれは、嵐の前の静けさのようなものだったのだ
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「……フィーズさん、また逃しました! すみません!」
「いや、大丈夫だ! だが……なんか魔物が強くなってきてないか……?」
それは、僕たちが旅を始めて5日ほど経った後。予定よりも旅は順調に進んでおり、紫色の靄の向こうに魔王城が見えてきたところだったのだが……
『魔王城が近いからな。魔力で出来た瘴気が濃くなって、魔物の量も質も上がってきてるんだ……あ、ちなみにお前の『索敵』もそろそろ使えなくなるから気をつけろよ』
ってことは、ここからは……
『もし少しでも綻びが生まれようもんなら……一気に攻めたてられてお前ら全員、魔物とやり合うことになるな』
そう勇者アルスが言った直後。
「ラルク! そっちに3匹行ったぞ……って、なんかめちゃくちゃ来てないか!?」
好機とばかりに数えきれないほどの魔物たちが一気に襲いかかってきて……僕たちの総力戦は始まった。
side:フィーズ
何だよ、何なんだよこれ!? 強さ的にはB……いや、下手したらAランクの魔物どもがうじゃうじゃ湧いてくるぞ!?
「流石に認識が甘かったな……」
いや、違う。これが普通なんだ。案外、旅が順調に進んでいたから私たちは錯覚していたが……これが、『魔大陸』。魔王が住む魔王城があり、そこから放たれる瘴気から生まれた魔物たちが跋扈する大陸。
もうこうなったら集団行動する方がかえって危険かもしれないな……無理に連携を取るより、2、3人の少人数で固まって動いた方がいいだろう。
そう考えた私は……
「聞こえてるか、みんな! 今から前に言ってた3グループに分かれろ!! 個別で魔王城を目指せ!」
頼む、無事でいてくれよ……
side:グレア
「『剣聖技・月輪』……フィリア、行くぞ!!」
眼前に迫る魔物たちを一撃で斬り伏せながら、もう全員が同じペースで行くのは無理だと判断したのだろう、フィーズさんからの指示により私たちは、私とフィリア、フィーズさんとライア、そしてラルクとシェイラさんとアルトさんの3人に分かれることになった。
「はいっ!!」
恐らく、1番敵の中を素早く駆け抜けることができるのは、進軍と戦闘を同時に出来る私たちだろう。道を切り開くのは私たちの役割だ。そう判断した私は……
「一気に行くぞ、フィリア! 付いてこい!!」
「分かりました!」
ペースを上げてどんどん魔王城へと進んでいった。
side:ライア
「『イリュージョンマント』! お姉ちゃん、大丈夫!?」
「ああ、怪我はしてない。でも、こんなに多くなるとは思ってなかったぞ……」
呼びかけに答えて、ボクは急いでお姉ちゃんの元に駆けつけた。とは言え、ボクに出来ることといえば……お姉ちゃんと一緒にやろうとしていた、あれくらいかな?
「ライア、今できるか!?」
「あっ、うん! 準備出来てるよ!」
そう思ってたら、早速呼ばれたのでボクは準備を整える。
(『魔具工房』……行くよっ!!)
「行くぞ、ライア!!」
お姉ちゃんはその掛け声と共に、地面を思いっきり叩き割る!!
「『イリュージョンマント』!!」
そして、吹き飛ばした瓦礫とお姉ちゃんをボクと一緒に『イリュージョンマント』で上空まで転移させて、ラルクやフィリアが近くにいないことを確認する……よし、大丈夫!
(『重量化』『切断』『硬化』『鋭利化』『対魔力強化』『反魔力』……からの、『射出』!!)
重くて、硬くて、鋭くて、そして広範囲で速い。固まっている時には使えない、ボクとお姉ちゃんの殲滅技。
「『メテオフォール』!!』
その瓦礫は大量の質量爆弾と化し、地面にいる魔物たちを貫く雨となったのだった……
「ライア、私に捕まれ! このまま飛んでくぞ!!」
「えっ……ちょ、うわぁぁぁぁぁあ!!」
そしてそのまま、ボクはお姉ちゃんに捕まって魔王城の方へと向かって行ったのだった……
次回、ラルク&シェイラ&アルト視点+α!




