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第百七十三話 『魔王討伐』開始

第百七十二話、今回もフィーズさんがやらかします。

「ラルク、フィリア、ライア。荷物は持った?」


 光る転移魔法陣を背に、アルトさんが僕たちに問いかけてくる。そう、今日は……『魔王討伐』のクエストを受けにいく日だ。


「「「はいっ!!」」」


 ようやく……ようやくだ。色々あったが、およそ2ヶ月もの最終調整も兼ねた特訓を経てようやく僕たちは『魔王討伐』に向かうことに……って、そんなに時間が過ぎていない気がするのは何故だろうか?


『まあこの一年忙しいなんてもんじゃなかったからな。休みの日以外は特訓ばっかだったし』


 そういえば、ここ最近はそれしかしてなかったな。だから体感的にあんまり時間が過ぎてないように感じるのか……


『多分な。そういうことにしとけ、考えるだけ無駄だろ』


(そうですね)


 さあ、もう王都に行く準備はもちろん、そこから直接魔大陸に行くための用意もアルトさんに預かってもらっている。気持ちを切り替えていざ出発……


「あっ、待ってくれ! 忘れ物思い出した!!」


「フィーズが忘れてちゃ世話ないなぁ〜」


「ダッシュで取ってくる!!」


 うん、なんとなく知ってた。僕らは全速力で荷物を取りに行ったフィーズさんの背中を、少しのため息と共に送り出す。


「お姉ちゃん、頼むよ……」


 ライアも呆れたようにそう呟く。何故かその目が慣れたこと、とでも言っているような感じがするのは、まぁ……そういうことなのどろう。


「じゃあ、今のうちに一応荷物の確認でもしとこう 「取ってきたぞ!」 ……行こうか」


 速すぎるでしょ。ここまで徒歩10分くらいかかったんだけど?


「よーし! みんな準備出来たか!?」


「「「「「あんたが言うな」」」」」


「……ごめんなさい」


 この一年でフィーズさんにつっこむ能力も結構上がった気がする……と言う冗談は置いておいて、今度こそ……


「じゃあ、行こうか」


 そうアルトさんが告げたと同時に、魔法陣の光は一層輝きを増していく。さて、まずは王都に行って、『魔王討伐』の試験をクリアしないと……


「じゃあ、いざ『魔大陸』へ出発!!」


「「えっ?」」


 ……今、『魔大陸』って言った?


「お姉ちゃん、今、なんて────」


 ライアがそれを言い終わる前に、僕たちは転移魔法陣によって瞬間移動させられたのだった……



 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



「……何だ、ここ……」


 転移した先に広がっていた光景は……一言で表せば、地獄だった。大地は弱り、草木は枯れ、空は厚い雲に覆われて、紫色の薄い霧があたり一面に広がっている。魔物の断末魔のようなものも聞こえてくる……


 というか、2人ともこれを見て何も思わないのか……? そう思ってライアとフィリアの方を振り向くと……


「「うっぷ……」」


 どうやらフィリアが転移酔い (転移魔法陣を使うと、その魔力に当てられて酔う人がいるらしい) しているみたいだ……ライアとシェイラさんに背中をさすられながら、今にも吐きそうな顔をしている。


「ここは『魔大陸』……お前たちが来るのは初めてだろうな」


 やっぱり……ここが、『魔大陸』……


「って、おかしいでしょ!!」


「何が?」


「いやいやいや! 試験は!? 『魔王討伐』を受けるのって確か試験が必須だったんじゃ……」


「…………フィーズ、何も伝えてないの?」


「え、何の話ですか?」


 フィーズさん、僕たちに何か伝え忘れてたのか……? それとも、僕たちが聞き逃してた?


「はぁ……3日前くらいに、フィーズがギルマスと面会して試験を免除してもらったんだってさ」


「えっ、そんなこと出来るんですか……!?」


「出来ないよ、普通はね。でも、フィーズのお墨付きっていうのと……()()()が付いてきてくれるって言うから、特例で許可が降りたんだって。直接行った方が負担も少なくて済むから」


 いや……フィーズさんとはいえ、そんな大事なことを言い忘れるものか? やっぱり、僕が聞き逃してただけじゃ……


「言い忘れてた、てへっ☆」


 そうだった、フィーズさんはこういう人だった。


「でもまあ、サプライズってこt」


「ごめんね、ラルク。私たちが直接言うべきだったよ」


「怖っ……」


 いつも通りフィーズさんを閉じ込めたアルトさんが、涼しげな顔で謝ってくる。やっぱり、この人だけは怒らせたらおっかない……


「ん? なんか言った?」


「え、いや……あ、そうそう。地上に転移魔法陣置いてたら、魔大陸から攻めてきそうで怖いなぁ……って」


 よし、何とか自然に誤魔化せた、ナイス僕。


『それ本気で言ってんのか?』


 ははっ、信じるものは救われるんだよ。


「それは大丈夫。この転移魔法陣はシェイドが使ってたのを改造して一方通行にしてあるから、こっちから戻る方法は私の能力を使うしかないよ。あと、全然誤魔化せてないから」


「すみませんでした」


 へぇ……ってちょっと待ってくれ。ってことは……


「え、僕たちってもう魔王と戦うんですか!?」


「いや、ここから魔王城までは結構距離あるからね? 地図の縮尺的に、普通に歩いても大体3日はかかるよ。地図にも書いてるし」


「良かった……って何も良くないですよ! 3日ってもうすぐじゃないですか。まだ心の準備が……」


 いくらなんでも急すぎる……


「言ったでしょ、『普通に歩いたら』って。ここは魔大陸……魔物がうじゃうじゃいるから、魔王と戦うのに備えながらだと1週間はかかるよ、余裕で」


 なんだ、1週間あったら心の準備くらいは出来るかな……あれ? なんかおかしくないか?


「でも、そんなに魔物がいるようには見えないんですが……」


 さっきから魔物の声は聞こえても、襲ってきてはいないような……


「あぁ、それはね……」


「私が倒しているからだ。久しぶりだな、ラルク」


 まさか……!! 聞き覚えのある声がしたので、僕はその声の主の方へと振り向くと……


「……し、しょう……? うっぷ……」


「……フィリアも、久しぶりだな」


 そこには、転移酔いしているフィリアを苦笑いしながら見つめているグレアさんの姿があった。

グレアさん、参戦……あれ、大丈夫なの?

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