第百七十一話 信頼とは
第百七十一話! テスト期間なのでちょっと短いですごめんなさい。
あとがき必見
「…………避けんのかよ」
「いや、これ俺の体じゃねえし」
もしラルクが勇者アルスの生まれ変わりだったとしたら、絶対にやると決めていたこと。それは……1発、全力で殴ることだった。だがまぁ、避けられるよな。
「ってか、急に殴るって何だよ……俺がお前に何かしたか?」
やっぱり、殴られた理由なんて分かってないのか。本当に、つくづく……
「馬鹿だよ、お前……」
「……は?」
何でだよ。何で……
「何で生まれ変わって来ちまったんだよ、お前……」
どうして……どうして、お前は……
「いや、そりゃ……俺がやらないと魔王は……」
「倒せない、って?」
「……ああ」
確かに今の私じゃ、私たちじゃ勝ち目は薄いかもしれない。勇者アルスと剣聖ホープでさえ敵わなかった相手だ、そんなことはよく分かってる。でもさ……
「お前は……もう、十分だろが……!!」
もう、何も考えずに楽になってよかったんだよ。私に……私たちに、任せてくれれば良かったんだよ。
「そんなに……そんなに、私たちが頼りなかったか!?」
ずっと……ずっと、これが聞きたかった。誰もが認める最強、勇者アルス……こいつを最強にしていたのは、私たちのせいだったのか? 私が、私たちが弱いから……たったの18歳で、魔王を倒しに行かなきゃならなかったのか?
もし、私がもっと強かったら……もし、私が勇者アルスや剣聖ホープくらい強かったら、こんな負担をかけなくても良かったのかもしれない。そうさせたのは私だ。私たちだ。それでも……
「…………ああ。頼りなかったさ」
……そう言われるくらい、か……。
「そうかよ……」
そう告げる勇者アルスの目は、どこか虚ろな目をしていた。それを見ても私には……私には、まだ勇者アルスが何を考えているのか分からなかった。ただ、どうしても……どうしても、私の目にはそれが焼き付いて忘れられなかった。
「話は終わりか?」
「あぁ、もういい。悪かったな、時間取らせて」
私の言いたいことは、もう終わった。多分、何らかの理由で今まで出てきていなかったんだろうし……長い時間拘束するわけにもいかないか。
「そうか。だったら……」
「……いや、やっぱり待ってくれ」
最後に、もう一つ聞くのを忘れていた。
「なぁ、やっぱり……剣聖ホープも、生まれ変わってんのか?」
「どうしてそう思った?」
「お前なら知ってると思うが……グレアは『剣聖』じゃないんだ。だったらフィリアが『剣聖の加護』を得るまで、その力はどこにあった?」
「……さあな?」
「否定はしないんだな」
ということは、やっぱりフィリアにも……
「……だが」
フィリアにも聞いておかないといけない。そう思った瞬間……勇者アルスが、釘を刺すようにこう告げた。
「あいつは、何も知らなくていい。これからのことも、今のことも……な。だから、余計なことすんなよ」
そう言って、私の話をそれ以上聞くことなく勇者アルスは去っていった。結局、勇者アルスの真意も、私のもどかしさも解決しないまま……
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side:ラルク
「なんで、また急に……」
気づいたら、自分の部屋に戻ってベッドに腰掛けていた。……あの後、勇者アルスに僕の体を乗っ取ったまま帰ったみたいだな、これは。
『悪い、久しぶりに誰かと喋ってみたくなってな。最近、お前と女神様としか喋ってなかったからな』
気づいたら勇者アルスに体を取られて……というか、勇者アルスが僕の体を使っている間は僕の意識って途切れるのか、知らなかった。
「フィーズさんと何を話してたんですか?」
『いや、お前が俺のこと話していいのかどうか困ってたからな。答えていいことだけ全部答えといたぞ』
「そうですか……」
だったらいいんだけど……だとしたら、どうして代わる必要があったんだろう? 何で答えればいいか教えてくれるだけでも良かったはずだし、むしろわざわざ自分で教える方が不審に思われる気がするのだが……
『……良いだろうが、別に』
その声からは、もうこれ以上聞くなと言う感じが伝わってきたのでこの話はもうやめておいた……
『…………頼りないわけ、ないだろ?』
ラルクが寝静まった後、俺は1人で呟く。俺はフィーズのことを頼りないなんて思っちゃいない。でも……理由は、言えないんだよ。知っているのは、俺だけで良い。それに……
『それに、もう……俺だって、よく覚えてねえよ……!!』
なあ、ラルク。お前には謝らないとな……確かに、『これ』は怖いな……
『……でも、まだ……まだ、頑張らないとな』
まだ、この気持ちが残っているうちは……




