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第百七十話 『フィーズ』

第百七十話、フィーズさん……

「ラルク。話がある……今日の特訓が終わったら私のところまで来い。あと、フィリアは連れて来るな」


 『魔王討伐』に向けた特訓を重ねていたある日。僕はフィーズさんに、そう耳打ちされた。きっと、その原因は……



 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



「なぁ、ラルク。私さ……最近まで、勇者アルスの隠し子か何かなんじゃないかって思ってたんだ。違うか?」


 ……開口一番、フィーズさんは僕にそう聞いてきた。どうやらもうすでに、僕と勇者アルスの間に何らかのつながりがあるのは勘づいているようだ。だが、生まれ変わりっていうことには気づかれていない……のか?


 ただ……隠し子って……


『俺ってお前の親だった記憶ねえんだけど?』


(僕にも無いですよ……っと)


 この人と僕の父親を一緒にされるのは……ちょっと嫌だな。


『おい?』


(そりゃあ何回も殺された相手が親なんて嫌ですよ)


『……なんも言えねえなぁ』


 さて、フィーズさんになんて説明しようか……いや、そもそもどこで勘づかれたんだ?


「あの……なんでそう思ったんですか?」


『なんかそれ肯定してるみたいじゃねえか』


 いいんだよ別に、似たようなもんだし。


「ん〜、勘だな。ほら前も言ったみたいに、私は何となく見た相手の『潜在的な強さ』が分かるんだよ。それが何となく勇者アルスに似てた」


 あぁ、そういう感じか……言い逃れするのは難しそうだけど、何とかなるかな……?


「偶然じゃないですか?」


「まあ、その可能性もなくはないな。()()()()()()()()()


「……はい?」


 ……それはつまり……僕に対しては、確信があるってことなのか? そう驚いていると、少しの沈黙の後……フィーズさんは、僕に確信を持った声でこう聞いてきた。


「言ったろ? 最近『まで』は隠し子か何かだと思ってた……って。だが、今は違う。お前……勇者アルスの生まれ変わりだな?」


 ……っ!? どうしてそれが……


「その顔を見るに……図星、ってところか?」


『こいつ……ただの馬鹿じゃなかったのかよ』


 勇者アルスもこれには流石に驚いている。しかし、どうしてバレたのか本当に分からない……何故だ?


「何でバレたんだ、って思ってるだろ? 答えは簡単だよ。先日、お前と戦った時……()()()()()()()()()()()()()()()()


「目、ですか……?」


「あぁ。お前のあの目……勝ちへの執念が強い目さ。それこそ、狂ってるとしか言いようがないくらいにな。似てるとか、そんなんじゃない……それこそ勇者アルス本人と、戦ってるみたいだった」


 なんとも突拍子もない理屈だが、なぜだろう。フィーズさんの放つ言葉には、絶対的な確信が篭っていた。


「どうなんだ、ラルク……答えてくれ」


 きっとここで言い逃れをしても、いつかはバレてしまう。どうすれば……


『おい、ラルク……代われ』


(えっ────)


 果たしてどうしたものか、全く見当がつかずに僕が悩んでいると……その声と共に、勇者アルスに体を取られて僕の意識は途切れた────



 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



 side:フィーズ


 やはり、ラルクの反応を見るにこいつが勇者アルスの生まれ変わりであることはほぼ確実なようだ。もしかしたら、そもそもラルク自身がそれを認知していない可能性も考えたが……少なくとも心当たりはあるみたいだな?


「どうなんだ、ラルク?」


 もし、本当にそうなんだとしたら……私は色々とお前に聞きたいことがある。もっとも、八つ当たりに過ぎないのかもしれないが────


「……答えてくれ」


 私の、ほぼ確認とも呼べるその呼びかけに返ってきたのは……肯定ではなく、全く別の『何か』からの挨拶だった。


「よお、初めまして……じゃないか。久しぶりだな、フィーズ」


「……お前は!!」


 声は変わっていない。変わったのは、雰囲気と口調だけ。だが……間違いない。私はこいつを知っている。こいつは……


「まあ、分かってるとは思うが……お前のお目当ての勇者アルスだよ。話したかったんだろ?」


 間違いなく、()()()()()()()()。どのような手段で、ラルクを通じて私と話しているのかはわからないが……今の私には、そんなことはどうでも良かった。


「勇者、アルス。お前には……色々と言いたいことがあったんだよ」


「なんだよ、言ってみろ」


「相変わらず偉そうだな……一応、私の方が年上なんだぞ?」


「知るかよ、それに……お前も、俺がペコペコしてたら気持ち悪いと思うだろ」


「確かにな」


 ……ああ、昔見た通りだ。生前、私はまだAランクの冒険者だったから本当に少し話したことがあった程度だが……その時から、少しも変わっていない。


「で、言いたいことって何なんだよ。時間が無いから出来るだけ早くして欲しいんだが」


 そうだった。恐らく、勇者アルスが最初から出てこなかったのにはなんらかの理由があるのだろう……例えば、時間とか。ならば……


「……分かった。だったら……すぐに、分からせてやる」


 だから私は────その言葉と共に、勇者アルスを全力で殴った。

次回、『信頼とは』

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