表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

166/204

第百六十六話 自惚れ

第百六十六話、フィーズさんが怖いです!

 side:ラルク


 やっぱり、フィーズさんを怒らせてしまったみたいだ。だが、まさかこんなに一瞬で攻撃に転じてくるなんて……とりあえず、ここにいるのはまずい!! 僕は『修羅』と『電光石火』を使い、急いでその場を跳び退く。


「避けるか、やっぱり! 言うだけのことはあるなぁ!?」


「あっっっぶない!!」


 ちょっと待て!! 僕がさっきまで立っていた地面の周りが……()()()()()()。家一つ入るんじゃないかと言うほどの大きな穴。まともに食らってたら……


「殺しに来てるだろ、これ!!」


「知らん、耐えろ!!」


 ……どうやら、僕はフィーズさんを……最強の冒険者を、完全に怒らせてしまったみたいだ。かと言って僕もここで諦めるわけにはいかない。つまり……


(ここで、この人を倒すしかない!)


 本気のフィーズさんを倒して、認めてもらうしかない。


「なにぼーっとしてんだ!?」


「速す────」


 攻撃のインターバルが短い!! 『思考加速』を使っていたから、思考量に反してまだ攻撃してから1秒もたっていないはずなのに……地面が陥没するほどの攻撃をしたはずのフィーズさんは、既に目の前まで近づいてきていた。


(1発でも喰らうのはまずい!!)


 僕は知っている。フィーズさんの真に恐ろしいところは、その機動力と攻撃力から放たれる連撃……そう、フォーミュラに打ち込んだあの『ラッシュ』であることを。


 一度でも地面から足を離した状態であれを受けたら……フィーズさんのことだから、殺されないとは思うが致命傷は覚悟した方がいいだろう。


「『分身』、『陽炎』っ!!」


 僕は分身を地面に作り出し、『陽炎』で位置を入れ替えて地面に足をつけ……って、何やってるんだ僕!?


 つい焦って、いま僕が使える最強の回避能力『陽炎』を使ってしまった……しかも、しっかりとフィーズさんに見られている!!


「今、使ったな……『陽炎』を!! だったらこっちも一気に詰めるぞ!」


 フィーズさんはこれ幸いと攻めるスピードを上げてくる。もう僕に攻撃を完全に回避する術はない。


(どうする……!?)


 ここで逃げるのは悪手だ。この人に背中を見せたら、気づかないうちに寸勁で落とされる。かといって、『分身』を使って撒くのは不可能だろう。ウォードさんの時みたいに全部吹き飛ばされる。なら……


「『受け流し』!!」


「殴り合うってか!?」


 いや、そんなことは無理だ。だから、1発だけ受けて……


「『鋼の肉体』『ダブルアップ・カウンター』!!」


 僕はフィーズさんの次の攻撃が飛んできているのを無視して、『ダブルアップ・カウンター』を発動する。多分、フィーズさんの拳がこのまま僕の腹にクリーンヒットしたら『鋼の肉体』があっても肋骨が折れるだろう。


 だか、しかし、致命傷さえ負わなければ、今の僕なら動き続けられる。だって……


「おまっ……それ、正気か!?」


「正気だったら……っ」


 ぐっ……フィーズさんの攻撃が鳩尾(みぞおち)に入っている……でも……


「こんなこと、言ってないですよ……」


 こんなの、死ぬ痛みに比べれば100倍マシだ!! 恐らく……いや、確実に骨が2、3本持っていかれている。でも……僕はまだ死んでないぞ!!


 僕はフィーズさんの攻撃2発分の衝撃をさらに増して乗せたカウンターを……攻撃後にガラ空きになった、フィーズさんの腹に打ち込む!!


「吹っ飛べ!!」


「────っらぁぁぁぁぁあ!!」


 って、空中で強引に体を曲げてキックで相殺してきた!? でも、ここを逃してはいけない……このまま突っ切るしかない!


(踏ん張ってないはずなのにこの膂力……化け物すぎる!)


 押し切れない……! このままだとジリ貧になってしまう……打つ手がない、のか!?


(……いや待て。僕が今、フィーズさんを押し切ろうとして動けないのは確かだけど……それは、あっちも同じ……だったら……)


「フィーズさん、ごめんなさい!!!!」


「お前、何を────っっっっ!!」


「【アクアバブル】!!」


 僕はフィーズさんの顔の周りを囲うように【アクアバブル】で大きな水球を出現させる。さすがのこの人も、息が出来なければ……


「────ぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!」


 嘘だろ……水球を大声で爆散させた!? この人本当に人間なのか!?


「てめぇ……そろそろ加減できなくなるぞ!」


 ……は? それって……


「まさか、今まで────」


 いや……まさか。今でもこんなに苦戦してるってのに……それなのに、まだ……


「おらぁ!!!!」


 フィーズさんがそう叫んだ瞬間、気づいたら僕の体は天高くまで吹き飛ばされて……


「────がぁっ!?」


 それに気づいた直後に、僕の右腕にとてつもない痛みが走ったのを感じる。恐る恐る、その腕を見てみると……肩の関節が、()()()()()()()()()()()()()()


(嘘だ……気づかれないうちに、僕は……()()()()()()()()!!)


 痛い……痛い! だが、それより……恐ろしい。僕は、どうやら本当に自惚れていたらしい。一瞬でも、あの人と……冒険者最強と、渡り合えただなんて……でも、違った。本当は……


「────ここからは手加減なしだ。死ぬなよ、ラルク」


 気づいたら目の前に現れていたその人から放たれた声と共に、僕の意識は現実から遠ざかって……

投稿遅れてすみませんでした…………

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
https://ncode.syosetu.com/n6670gw/
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ