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第百六十五話 許せない言葉

第百六十五話! タイトル不吉やなぁ……。

「……で、急に呼び出して何の用だ、ラルク? そろそろ休みたいか? 確かに休養は大切だからな!」


 勇者アルスに呼び出され、『魔王討伐』のクエストを受けるために『神龍の翼』の協力が必要なことが分かった日の翌々日。僕はなるべく早く相談したほうがいいと思い、特訓の後にフィーズさんを見つけてその話をしようとした。


「いえ、それは大丈夫です」


「じゃあもしかして……Sクラスを辞めるのか!? それはかなり寂し 「あの……」 ……いや、すまん、少しふざけすぎた。真面目な話か?」


「はい」


 ……そう言うと、普段通りの飄々とした……いや、飄々としたっていうのは違うな。言うなれば……そう、何も考えていなさそうな雰囲気を纏っていたフィーズさんは、急に真面目に話を聞き始めた。多分だけど、この人の本性って()()()()だよな……


「聞こうか」


 僕とフィーズさんの間にほんの少しの静寂が走った後、フィーズさんは僕にそう言ってきた。既に日は傾き始めており、辺りは静かだ。


 ……さて、何と切り出そうか。真実を何も考えずにいうのはまず論外。といっても、回りくどい言い方はフィーズさんが嫌うだろうし……ここは……


「……単刀直入に言います。『魔王討伐』のクエストを……僕と一緒に受けてくれませんか」


 うだうだ迷っていても仕方ない。はっきりと要件を伝えよう。


「……はぁ? ラルク……自分で何を言ってるのか分かってるのか?」


「はい」


 ……まあ、そうなるよなぁ……


「いや、だって……魔王だぞ? 勇者アルスと剣聖ホープが相討ちになって倒した、あの……もしも先代と同じレベルの強さだとしたら私たちでも勝てるか分からないんだ。それでも……か?」


「それでも、です」


 ……フィーズさんから放たれる気迫が少しずつ強くなってきている。語気も表情も変わっていないが……それがまた恐ろしい。


「はぁ……お前な……なんで急にそんなことを言い出した? ……もし、勝てると思って相談してきてるならやめとけよ」


「……勝てると思っているから、相談してるんです」


 確実に勝てる……とは毛頭思ってなどいない。むしろ、1000回やったら999回負けるだろう。10000回やったら、9999回負けるだろう。だが……その一回を引くしかない。引かなければ、世界が終わる。


 ……だが、無論……何も言われていないフィーズさんが、そんなことを知る由はない。きっと、フィーズさんから見た今の僕は……


「……自惚れるなよ、ラルク」


 自分の実力に自惚れているだけの、馬鹿な子供だ。その声には、確実に怒りが篭っていた。そして、その直後……フィーズさんの姿が、()()()



 side:フィーズ


 アルトと、シェイラと、そして私。出身地も、年も、そして性格も違う私たちが『神龍の翼』を結成したのは完全な偶然ではなかった。


 いや、出会うことがなければパーティを組むことも無かっただろうから偶然といえば偶然なんだが……とにかく、私たちがパーティを組んだのには、とある共通の目標があったからだ。


 それは、『魔王討伐』。私たちは皆、魔王を倒すために冒険者になった。


 アルトは元々、このエルフの森に住んでいた。しかし200年前の魔王軍の侵攻によって森の一部と家を焼かれ、親を失った。


 そして、戦いを好まなかったアルトは、『空間支配』を使って大量の魔物を倒して一気にSランクまで上り詰め、『魔王討伐』を受けるための仲間を探していた。


 シェイラは十数年前に、村を魔物によって焼かれ……そして、家族を……父と、母と、2人の妹を失った。特に妹は仲の良い双子で、可愛くて仕方なかったらしい。


 なんとか逃げ延びた後、焼けた村の中を必死で探したにも関わらず亡骸さえ見つからなかった……その雰囲気からは想像もつかないが、今も魔物に……そして、その王である魔王には尽きることのない憎しみを抱いている。


 シェイラの固有スキル『魔物使い』は、本来それほど強いスキルではない……魔物に対する思いの強さで、その能力の出力は変化する。そして、シェイラの笑顔に隠した『憎しみ』という感情は、とてつもなく強い出力を生み出した。


 まあ、その中でもドラゴンのリュートとはまた別で固い絆で結ばれているのだが……それはまた別の話だ。


 そして、最後に私。Aランク冒険者だった私の両親は、ライアが生まれた直後に事故で亡くなっている……というのが、ライアに教えている話。


 実際のところは、私の両親はドーヴァという魔族に殺されて……そして、奴が死ぬまでその魂を強制的に使われていた。私には、そんな魔族が……そして、それを率いている魔王が許せなかった。


 もちろん、こんな被害にあった人もほかに沢山いる。だからこそ、私たちは魔王を倒さなければならない……それは、分かっている。


 分かっているが……私たちでも、勝てるかどうか分からない。きっと、勝てない。それは……勇者と剣聖の力を『視た』ことがある私がよく知っている。それなのに……


「勝てると思っているから、相談してるんです」


 こいつは何を言っているんだ? 私は基本、怒ることはないが……この言葉だけは、捨て置けない。だから……


「自惚れるなよ、ラルク」


 少し、分からせる必要がありそうだ。私は、そう言った直後……私は、ラルクを落としにかかった。

次回、本気フィーズvs本気ラルク!!


※ちなみにややこしいですが、マール&リールとシェイラさんは血縁的に無関係です。誤解を招いて申し訳ございません。

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